2014年2月17日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。
冒頭特記事項
◆激しい爆発で建屋が大きく破壊された3号機につながる3号機タービン建屋1階で、水漏れ検知器が動作。約20m×約30m×高さ約3㎝の水溜まりが発見された件(2月16日午後10時51分頃)
※2月16日午後10時51分頃、3号機タービン建屋1階にあるタービン建屋補機冷却系ポンプエリアの漏えい検知器が動作したことを示す警報が発生。現場を確認したところ、当該エリア漏えい検知器周辺に約20m×約30m×高さ約3cmの水溜まりがあることを確認。当該エリア周辺にある機器・配管等から水の流れ込みがないこと、3号機の関連パラメータに異常がないことを確認している。
タービン建屋内にできた水溜りの水がどこから漏れ出たものなのか。それが問題です。冷却系からの漏えいであれば重大な事態なので、まずはポンプや配管から水の流れ込みがないこと、3号機関連のデータ(おそらく温度や空間線量など)を確認し、異常な変化がなかったことが記載されています。
続いて、「ではなぜ水溜りができたのか」についての推定が示されます。
過去の現場状況を確認した結果、2月12日に実施したパトロール(2週間に1回実施)にて、当該エリア近傍の東側壁上部にあるルーフドレン(雨水排水用)配管に裂け目があり、その裂け目部より雨水が流入していることを確認しており、また、当該エリアでは、震災以降、これまでにも雨水等が床面に溜まっている状況が確認されている。なお、漏えい検知器動作後の現場確認においては、ルーフドレン配管の裂け目部からの雨水の流入は確認されていない。
以上のことから、漏えい検知器が動作した原因は、先日の降雨・降雪等の影響により3号機タービン建屋の屋上に溜まった雨水(雪解け水)が、建屋内ルーフドレン配管を通って裂け目部より流入し、当該エリア床面に溜まったものと推定している。
タービン建屋の屋上の水を排水するための配管の裂け目から、雨水(雪解け水)が流入して水溜りになったのではないかとの推定です。原発事故直後の空撮写真を見ると3号機のタービン建屋は屋上に何カ所か穴が開くほどの大きな被害を受けています。(参考ページ:http://photos.oregonlive.com/photo-essay/2011/03/fukushima_dai-ichi_aerials.html)
建屋内の配管にも、原発事故時のダメージが残されているのかもしれません。
続いて水溜り周辺の線量について報告されています。
なお、水溜まり箇所の線量当量率測定および分析結果については以下のとおり。
水溜まり箇所の雰囲気線量率(水面より約1.2mの高さ)
・1cm線量当量率(ガンマ線):0.040 mSv/h
・70μm線量当量率(ベータ線):0.000 mSv/h
水溜まり箇所の表面線量率
・1cm線量当量率(ガンマ線):0.035 mSv/h
・70μm線量当量率(ベータ線):0.000 mSv/h
水溜まりのない箇所の雰囲気線量率(当該エリア近傍で床面より約1.2mの高さ)
・1cm線量当量率(ガンマ線):0.060 mSv/h
・70μm線量当量率(ベータ線):0.000 mSv/h
水溜りがある場所の方がない場所よりも低い線量率になっています。タービン建屋内の壁床天井、設置された設備や機器など、四周に放射性物質が存在すると仮定すると、床面の水によって床部分からの放射能がブロックされることで、水溜りの線量率が低く測定されたと推量することもできるかもしれません。
「1㎝線量当量率」「70μm線量当量率」は、体の表面が被曝した時に、人体組織の深さ1㎝、あるいは70μmにある組織の被曝線量のことです。
高度情報科学技術研究機構(RIST)の原子力百科事典「ATOMICA」のより詳しい解説です。
ちなみに単位はmSv/hなので、マイクロシーベルトに換算すると、水溜まり箇所の雰囲気線量率(水面より約1.2mの高さ)1㎝線量当量率(ガンマ線)は、「40 μSv/h」ということになります。
そして最後に、考えられる原因について再度記載した上で今後止水処理を行う旨の対応が記載されています。
溜まり水の分析結果において放射性物質が検出された理由としては、タービン建屋屋上の雨水が汚染を含みながらルーフドレン配管を通って裂け目部から流入したこと、流入した雨水が当該エリア床面等の汚染を含みながら水溜まりになったこと等が原因であると推定している。
ルーフドレン配管の裂け目部については、今後止水処理を実施する。
◆昨日分の日報で記載された「H5タンクエリア堰内に溜まった水の堰外への漏えいを発見(2月16日午前9時15分頃)」の件の続報
水漏れが起きていた堰内の水位が水の移送によって低下し、漏えいが停止されたことが報告されました。文中で「同日」とあるのは2月16日のことです。
同日午後3時30分頃、H5タンクエリア堰内水の移送により堰内水位が漏えい箇所より低下したことから、漏えいが停止したことを確認。漏えい量は最大で約19.2m3と推定。
なお、H5タンクエリア堰内水の移送実績は以下のとおり。
・H6タンクエリア堰内への移送:午前11時10分~午後1時5分
・4000tノッチタンク群への移送:午後0時30分~午後4時50分
★ 堰内水の漏えいについて、写真や地図、図解入りの詳細な情報が報道配布資料として公開されました。タンクエリアの堰がどのような構造なのかも分かる資料です。
1号機(平成24年4月19日廃止)
新規事項の記載なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機(平成24年4月19日廃止)
1号機の4項目に加え、2号機タービン建屋から3号機タービン建屋への高濃度滞留水を移送中。
炉心をシャワーのように水をかけて冷却する炉心スプレイ系から、風呂に水を溜めるように冷却する注水系に移行するための処置で、スプレイ系を0.0m3/hにしたことを新規記載。
※2号機原子炉注水については、今後の作業や工事において、炉心スプレイ系を停止して給水系で全量注水する対応が必要となることから、事前に給水系の全量注水試験を実施し、原子炉冷却状態への影響を確認することとしており、原子炉注水総量(4.5m3/h)を維持しながら、段階的に炉心スプレイ系から給水系に乗せ替える操作を実施中。
2月17日午後2時27分、原子炉注水流量の調整を以下の通り実施。
炉心スプレイ系原子炉注水流量:0.9 m3/hから0.0 m3/h
給水系原子炉注水流量:3.5 m3/hから4.5 m3/h
なお、調整後の原子炉注水流量は安定しており、圧力容器底部温度等に有意な変動は確認されていない。
3号機~6号機
新規事項なし。
◆3号機
1号機の4項目に加えて、
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、同様の構造のタンクの監視、および詳細な調査を継続実施中。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月16日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
なお、堰内溜まり水の堰外への漏えいが発生したH5タンクエリア以外のタンクエリアにおいては、堰からの漏えいが発生していないことを確認している。
◆サンプリング調査では、測定値の「有意な上昇」が報告されました。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
B排水路のB-3の全ベータ(2月16日採取:1,100Bq/L)の値において、これまでの当該箇所における最高値以下ではあるが、前日採取した測定結果と比較して有意な上昇が確認された。
また、2月16日採取のC排水路のC-1-1およびC-2の全ベータの値も、前日採取した測定結果に引き続き、上昇が確認されている。
なお、2月16日採取のB排水路のB-0-1の全ベータは前日採取した測定結果より低下している。測定値が上昇した原因については、降雨により排水路周辺の汚れが流入したものと考えている。
また、H4エリアタンク周辺のE-1の全ベータ(2月16日採取:220,000Bq/L)の値において、これまでの当該箇所における最高値以下ではあるが、前日採取した測定結果と比較して有意な上昇が確認された。
測定値が上昇した原因については、降雨により地下水が上昇し、周辺の汚染が流入しやすくなったものと考えている。
その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
サンプリングについての報道配布資料(地図入り)はこちらです。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項なし。観測孔からの汲み上げを適宜実施ということだが報告なし。
地下貯水槽の状況
新規事項としてサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月17日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: