2014年2月12日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。
各号機やこれまで問題となった場所について記載されるいわゆる「レギュラー」的な内容に加えて、この日も冒頭部分に特記がありました。
★記載された測定結果の一部に非常に重要なポイントがあります。
★3号機の「湯気」についての続報があります。
冒頭特記事項「ストロンチウム90」の検査結果に注目
◆「H4タンクエリア堰内の床コンクリート部に、目視で確認できる範囲で長さ1.5m程度の亀裂を発見(2月11日午後0時20分頃)」の件
汚染水タンクのベース部分の床面に亀裂が発見された、との内容。
※2月11日午後0時20分頃、汚染水タンクパトロールにおいてH4タンクエリア堰内の床コンクリート部に、目視で確認できる範囲で長さ1.5m程度の亀裂を協力企業作業員が発見。
2月8日(降雪前)の当該堰内水位は0cmであることを確認しているが、堰内には積雪があり、亀裂箇所から水がはけることを確認したことから、念のため当該堰内水の分析を実施。
また、同日午後3時35分頃、H4東タンクエリアの堰内床コンクリート部に8m程度の亀裂があることを協力企業作業員が確認。亀裂部付近に水はなく、亀裂部への水の流入は確認されていない。堰内の水の分析結果については、以下のとおり。
<H4タンクエリア:午後3時28分採水>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:12 Bq/L)
・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17 Bq/L)
・ストロンチウム90:17 Bq/L
<H4東タンクエリア:午後4時27分採水>
・セシウム134:13 Bq/L
・セシウム137:45 Bq/L
・ストロンチウム90:2,100 Bq/L
同日、H4およびH4東タンクエリア堰内床コンクリート部の亀裂について、エポキシ系塗料による補修が終了。H4およびH4東タンクエリア堰内の当該亀裂部付近に水はなく、亀裂への水の流入は確認されなかった。また、H4タンクエリアの亀裂について亀裂周辺の雪を取り除いて確認したところ、亀裂の長さは約12mであることを確認。
また、H4およびH4東タンクエリアの各タンクの目視点検において漏えい等は確認できず、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常はなかった。
この記載のポイント
●「目視で確認できる範囲で長さ1.5m程度の亀裂」→ 雪を取り除いて確認したら「亀裂の長さは約12m」
発見時に雪を取り除いて確認できない理由を考えてみたいと思います。
・それだけ雪が深かったのか
・臨機応変な対応が難しいほど線量が高かったのか
★★★ 念のため行われた堰内水の分析でストロンチウム90の数値が示されています。これは極めて重要です。
ストロンチウム90はベータ線は出しますがガンマ線を出さないため、化学的に分離した上で線量を特定する必要があります。通常2週間から1カ月もかかると言われています。測定に時間がかかるため、これまで「全ベータ」として、ストロンチウム90を含むすべてのベータ線量を測定・公表してきたわけです。
ここでにわかに、11日に取ったサンプルでストロンチウム90の値が示されていることについての説明がありません。
ただし、昨年9月18日付で、福島大学から3時間ほどで分析できる「放射性物質ストロンチウム90 の迅速分析法の開発」がプレス発表されている。
1号機(平成24年4月19日廃止)
新規事項(東電のリリースではアンダーライン表示)なし。
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機(平成24年4月19日廃止)
1号機と同様の4項目に加えて、「2号機タービン建屋→3号機タービン建屋へ高濃度滞留水を移送中(平成26年2月10日午前10時~)」と記載。
今後の作業や工事の関係で、冷却水の入れ方を炉心をシャワーで冷やす方式から、全量を注水(お風呂に水を貯めるイメージか)に切り替える必要があり、その影響を調べる処置を行っている旨、記載されている。
※2号機原子炉注水については、今後の作業や工事において、炉心スプレイ系を停止して給水系で全量注水する対応が必要となることから、事前に給水系の全量注水試験を実施し、原子炉冷却状態への影響を確認することとしており、原子炉注水総量(4.5m3/h)を維持しながら、段階的に炉心スプレイ系から給水系に乗せ替える操作を実施中。
2月12日午前10時23分、原子炉注水流量の調整を以下の通り実施。
炉心スプレイ系原子炉注水流量:1.5 m3/hから1.0 m3/h
給水系原子炉注水流量:2.9 m3/hから3.5 m3/h
なお、調整後の原子炉注水流量は安定しており、圧力容器底部温度等に有意な変動は確認されていない。
上からシャワーで冷やさなくても、水を貯めることで冷やせるのだとしたら、燃料は下の方に落ちて行っているということになるのでしょうか。
3号機(平成24年4月19日廃止)
1号機と同様の4項目に加え、タービン建屋の滞留水の移送について記載。
★2月9日に発見された「湯気」について続報。
※平成26年2月9日午前8時15分頃、3号機原子炉建屋5階中央部近傍より、湯気が発生していることをカメラにて確認。同日午前8時24分時点のプラント状況、モニタリングポストの指示値等に異常は確認されていない(午前8時20分時点の気象データは、気温1.9℃、湿度94.0%)。その後、2月12日午前8時15分頃には、湯気が確認されなくなった。なお、同日午前8時22分時点におけるプラント状況、モニタリングポスト指示値に異常は確認されていない。(午前8時20分時点の気象データは、気温2.6℃、湿度62.7%)。
この記載のポイント
●何か起こっても簡単には行って確認できない場所があるということを示した。
●2月9日8:15頃から12日8:15頃まで湯気が発生し続けたとすると、気象の影響は考えにくい。
※湯気を見つけた時間と見られなくなった時間が記載されているだけで、その間の推移がどうだったのかが知りたいところ。
2号機と同様に、スプレイ系の注水量を減らす操作を行っているとの新規事項。
※汚染水処理の負荷低減等を踏まえた原子炉注水量の低減操作として、3号機の原子炉注水について、2月12日午前10時37分、炉心スプレイ系からの注水量を約3.0m3/hから約2.5m3/hへ変更(給水系からの注水量は約2.0m3/hで継続中)。
なお、調整後の原子炉注水流量は安定しており、圧力容器底部温度等に有意な変動は確認されていない。
4号機(平成24年4月19日廃止)
新規事項なし。「原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)」「使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中」「使用済燃料プール循環冷却系運転中」との記載。
★使用済み燃料プールからの燃料移動の詳細についての情報はない。
5号機,6号機
新規事項なし。
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項の記載なし。
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
最新のパトロール結果とサンプリングのみ新規事項としてアンダーライン表記。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月11日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。なお、積雪による影響のため一部測定を実施していない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。目視点検により漏えい等がないこと(降雪や凍結により漏えい確認ができない箇所を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
冒頭に記載された「H4タンクエリア堰内の床コンクリート部の亀裂」についての報告では、目視で1.5mだった亀裂の長さが雪を取り除いてみたら12mという例がありました。
かつて一部で伝えられたように、線量が高いために長時間の作業が困難な状況が続いているのかもしれません。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項はサンプリング実績についてのみ。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
新規事項はサンプリング実績についてのみ。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月12日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: