2014年2月15日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。本日分は「午後3時30分現在」の情報とのことです。
冒頭特記事項
◆「高台にある原子炉注水用バッファタンクエリアの堰内に溜まった雨水をタンクに移送する仮設水中ポンプの配管接続部分から水漏れ(2月15日午後0時45分頃)」の件
※2月15日午後0時45分頃、福島第一原子力発電所高台にある原子炉注水用バッファタンクエリア堰内に、溜まった雨水を仮設水中ポンプにてバッファタンク内に移送していたところ、移送配管の接続部より漏水していることを、当社社員が監視用カメラ映像で発見。漏えいした水は、コンクリート面に土のうを積んだエリアに溜まっている。
同日午後0時59分に仮設水中ポンプを停止し、漏えいは停止。
今回の水の漏えいに伴う原子炉注水への影響はない。
バッファタンク水位を確認したところ、有意な変化が無かったことから、タンクの水が当該堰内に漏れた可能性は無いと考えている。
また、本日採取したバッファタンクエリア堰内水(漏えい水)の分析結果について、2月11日に採取した当該堰内水分析結果と有意な変化が無かったことから、当該堰内水(漏えい水)は雨水であると判断。
【バッファタンクエリア堰内水分析結果(2月15日採取)】
・セシウム134:23Bq/L
・セシウム137:77Bq/L
・ストロンチウム90:11Bq/L(簡易測定法により計測)
【バッファタンクエリア堰内水分析結果(2月11日採取)】
・セシウム134:20Bq/L
・セシウム137:46Bq/L
・ストロンチウム90:19Bq/L(簡易測定法により計測)
漏えい量は、仮設水中ポンプ移送流量(約1.1m3/h)と移送時間(約1.5時間)より、約1.7m3と推定。
「バッファタンクエリア堰内に溜まった雨水を、バッファタンク内に移送」と理解していいのか、表記にあいまいさがあります。また「コンクリート面に土のうを積んだエリア」がどこなのか、この記載だけではわかりません。
バッファタンクは、原子炉冷却用ポンプの手前に設置されているので、注水用の水を溜めておくタンクだと思われます。東京電力の資料には「水処理設備で浄化され、貯蔵タンクに蓄えられた水を、再び原子炉への注水に利用するため、移してためておく原子炉への注水用タンク」と紹介されています。
ポイント
タンクエリア堰内の雨水などの移送には、仮設の水中ポンプ(ポンプ本体を水中に入れてホースやパイプに水を送るポンプ。主にモーターでケーシング内のフィンを回して水を配管に送り込む)が使われていることは、昨年タンクエリア堰から水があふれて問題になった頃と同様と考えられます。ポンプの機材や配管の資材が何だったのか記載されていませんが、「仮設」ということですから、土木工事で使われるものと同様のものと考えられます。となると、機材・資材のスペック上、漏れないことが厳密に求められていないことから、同様の漏洩は今後も起こりうると考えられます。
★測定値のストロンチウム90について
今回初めて測定値のストロンチウム90に「簡易測定法」という言葉が記されました。
簡易測定法がどのようなものなのか、今後の東京電力の発表を期待して待ちたいと思います。
1号機~6号機
新規事項の記載なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機の4項目に加えて、
・2号機タービン建屋→3号機タービン建屋へ高濃度滞留水を移送中(平成26年2月10日午前10時~)
◆3号機
1号機の4項目に加えて、
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
最新のパトロールとサンプリングについて新規事項を記載。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月14日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。なお、積雪による影響のため一部測定を実施していない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。目視点検により漏えい等がないこと(降雪や凍結により漏えい確認ができない箇所を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
最新のサンプリング実績について新規事項として報告。地下水観測孔No.1-6のサンプリングについて、ガンマ核種について初めて測定し報告。
<地下水観測孔No.1-6の測定結果:2月13日採取分>
・セシウム134:2,400Bq/L
・セシウム137:5,900Bq/L
・マンガン54:320Bq/L
・コバルト60:770Bq/L
・全ベータ:640,000Bq/L
その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
新規事項はサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月15日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: