2014年2月14日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。(今日はバレンタインデーですね。東電の原子力発電所で作業している方がたはどんなバレンタインデーを迎えたのでしょうか)
1号機〜6号機、ならびに共用プール、水処理設備関連では昨日からの変更は記載されていません。
今日は、冒頭に特記された情報と、各施設の新規事項(東電のリリースではアンダーラインで表示)を中心にチェックします。
冒頭特記事項
◆「H4タンクエリア堰内の床コンクリート部に、目視で確認できる範囲で長さ1.5m程度の亀裂を発見(2月11日午後0時20分頃)」の件(続報)
まずは、すでに記載済みの内容。
<H4タンクエリア:午後3時28分採取>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:12Bq/L)(お知らせ済み)
・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17Bq/L)(お知らせ済み)
・ストロンチウム90:17Bq/L(お知らせ済み)
<H4東タンクエリア:午後4時27分採取>
・セシウム134:13Bq/L(お知らせ済み)
・セシウム137:45Bq/L(お知らせ済み)
・ストロンチウム90:2,100Bq/L(お知らせ済み)
同日、H4およびH4東タンクエリア堰内床コンクリート部の亀裂について、エポキシ系塗料による補修が終了。H4およびH4東タンクエリア堰内の当該亀裂部付近に水はなく、亀裂への水の流入は確認されなかった。また、H4タンクエリアの亀裂について亀裂周辺の雪を取り除いて確認したところ、亀裂の長さは約12mであることを確認。
★一般的に測定に2週間以上かかるとされるストロンチウムの検査値が翌日公表されていた件についての説明はなく、再度「お知らせ済み」として記載されています。
続いて周辺地下水の分析結果のうちトリチウムの数値を新規事項としてアンダーライン入りで記載しました。
なお、H4エリア周辺地下水(F-1:当該タンクエリア上流部、E-11およびE-12:当該タンクエリア下流部)の分析結果については、以下の通り。
<E-11(当該タンクエリア下流部):2月12日採取>
・トリチウム:1,000Bq/L
・全ベータ:25Bq/L(お知らせ済み)
<E-12(当該タンクエリア下流部):2月12日採取>
・トリチウム:2,900Bq/L
・全ベータ :検出限界値未満(検出限界値:17Bq/L)(お知らせ済み)
<F-1(当該タンクエリア上流部):2月11日採取>
・トリチウム:660Bq/L (お知らせ済み)
・全ベータ:検出限界値未満(検出限界値:17Bq/L)(お知らせ済み)
当該タンクエリア周辺の地下水の下流部については、前回と比較して有意な変動はない。
★ここではセシウム134、セシウム137についての分析結果はなく、新規事項のトリチウムと全ベータについての記載です。2月11日採取分では「ストロンチウム90」を特定しての検査結果が公開されていましたが、12日採取、14日公開のデータでは「全ベータ」となして公開されたままです。
★ストロンチウムは計測に時間と手間と費用がかかるため、福島で放射能測定を行っている民間団体などでも「迅速かつ安価なストロンチム90の測定」に対するニーズは非常に高いものがあります。サンプルから短時間でストロンチム計測を行う技術を実用可能かつ信頼性の置けるものとして東京電力構内で運用しているのであれば、その詳細についてぜひ公開し、放射能汚染と長くたたかってきた地元地域への積極的な技術移転・計測支援の展開が望まれます。
◆「FエリアタンクのC5タンクとC6タンク連絡管継手部より水が約1分に1滴ほど滴下していた(2013年12月18日午後10時20分頃)」の件
これまでの経緯と今回とられた処置について記載されています。
およそ2カ月前に発見されたタンク間を接続する配管の継手(フランジ)部分からの水漏れについて、約1分に1滴ほど滴下した水の分析結果の公表と、発見当日の措置が報告されていました。
当該系統内(C5タンクおよびC6タンクには、5,6号機タービン建屋地下滞留水を貯水)の水の分析結果は以下の通り。
・セシウム134:22Bq/L
・セシウム137:97Bq/L
・コバルト60:18Bq/L
その後、C5タンク内水の移送を12月19日から12月24日まで実施し、当該フランジ部を目視点検した結果、同日午後0時45分、漏えいが停止したことを確認。推定原因および対策は以下の通り。
<推定原因>
・タンク側ゴムリング接続面の発錆(腐食)により僅かな隙間が発生し、微少リークに至ったと判断。
<対策>
・接続面の手入れを行い、コーキング材の塗布を実施し、また、内部ゴムリングの交換を実施。
継ぎ手部分の不具合を修理し、さらにタンク内の水を移送という処置がとられたとの記載でしたが、12月26日に同じ継ぎ手部分で水漏れが発生します。
12月26日、当該継ぎ手部の補修後の漏えい確認を行うためにC5タンクに水張り(5、6号機タービン建屋地下滞留水)をしたところ、午前11時頃にC5タンクの水平フランジ部(下から一枚目の側板と二枚目の側板の間)より3秒に1滴程度、水が漏えいしていることを当社社員が発見。なお、漏えい箇所の下には漏えい確認のためシートにて養生しており、堰内床面には漏えいした水は滴下していない。また、漏えいを確認した際、C5タンクの別の箇所(1箇所)において、水のにじみを確認。その後、C5タンク内の水をC6タンクへ移送し、午後2時15分、当該水平フランジ部からの漏えいおよびにじみが停止していることを確認。C5タンク内の水の分析結果は以下の通り。
・セシウム134:34Bq/L
・セシウム137:93Bq/L
・コバルト60 :26Bq/L
また、当該水平フランジ部の漏えい箇所付近のボルトに損傷があることを確認。
いったんは水を移送したタンクでしたが、再度5,6号機タービン建屋地下滞留水を入れたところ、今度は3秒に1滴程度の水漏れがおきたということです。
漏洩した水の検査結果からは、同じ5,6号機タービン建屋地下滞留水でも数値に多少のばらつきがあることが分かります。タービン建屋地下でも場所などによって放射性物質の濃度が異なっているのか、サンプルが少ないために検査結果にばらつきがでるのかはよく分かりません。
確かなのは、一度修理をしたものの、同じ箇所から水漏れた発生したということです。
この一連のインシデントへの対応が、今回の新規事項として記載さています。
2月14日午前10時44分、漏えい確認を実施し、異常がないことを確認。推定原因および対策は以下の通り。
<推定原因>
・水平フランジボルトの穴開け不良によりボルト穴の芯ずれが生じ、組立時に芯ずれを矯正して挿入した結果、ボルトが変形し、締め付け不良から面圧が低下し、漏えいに至ったものと推定。
<対策>
・漏えいの確認された箇所を含む、フランジ締め付けの面圧不足が懸念される締め付け不良ボルトおよび腐食が確認されたボルトについて交換を実施。
・芯ずれが確認されたフランジ部ボルト穴の拡張加工を実施。
・内面フランジ接続部全てにシール処理を行い、タンク内全面に塗装を実施。
★★★このインシデントのポイント
説明を読む限り、残念ながらきわめて初歩的な問題だったと言わざるを得ません。なぜなら、12月18日に水漏れが発覚した後、継手をいったん分解しフランジの接続面の手入れなどを行った上で再度継手を組み立てているからです。
継手は水を漏らさないように管を接続するものですから、組み立て後の機能確認も十分ではなかったということになってしまいます。
12月26日にボルトの変形が発見されたとのことですが、それから今まで処置が行われなかったことと考え合わせると、初歩的な事象への対処に時間を要してしまうほどに現場環境が極めて困難な状況にあるのか、作業員が不足しているか。いずれにしろ、インシデントそのものの軽重よりも、その背景にあるものの深刻さを浮き彫りにする水漏れインシデントだと考えるべきでしょう。
◆「6号機残留熱除去系海水ポンプDの冷却用配管から、海水が鉛筆の芯1本程度漏えいした(10月3日午前9時53分)」の件
冷温停止状態にある6号機を冷却し続けるためのポンプのひとつを確認運転のために起動したら、鉛筆の芯ほどの水が漏れているのを発見。すぐにポンプは停止、原子炉の冷却はほかのポンプで継続。水漏れの原因の確認と、配管の交換を行ったとの記載です。
※10月3日午前9時53分、屋外にある6号機残留熱除去系海水ポンプDを定例の確認運転のため起動したところ、当該ポンプのモータを冷却する配管から海水が鉛筆の芯1本程度漏えいしていることを、同日午前9時57分に当社社員が発見した。当該ポンプを直ちに停止し、漏えいは停止。なお、原子炉の冷却は、残留熱除去系ポンプBおよび残留熱除去系海水ポンプBにて継続中。現場の調査を行ったところ、当該配管に1mm程度のピンホールが確認された。なお、海水の漏えい量は約1Lと判断している。
その後の調査により、当該配管内面に貝等の海生物が付着する等により傷が付き、その部位に海水が停留する等により孔食が発生進展し、漏えいに至ったものと推定。
当該配管の交換を実施し、2月14日午前11時50分、漏えい確認を行い異常がないことを確認。
★ポイント
配管の材質についての記載がありませんが、「孔食」によるピンホールとの推定がされていることから、腐食から金属を保護する不動態の酸化皮膜が金属表面に形成されたステンレスなどの配管だったと考えることができるでしょう。孔食とは、なんらかの原因で酸化皮膜が傷つけられることで、そこからイオン化した金属が溶け出していく現象です。海水中にある塩素イオンは酸化皮膜の再形成を妨げるため、表面が傷ついた部分から孔状に金属の腐食が進みます。
鉄はもちろん、腐食に強いとされるステンレスやアルミでも同じ現象は起こりえます。反応が始まるきっかけとなるキズは、推定にある「貝等の海生物」の付着に限ったことではありません。
無数の配管が走る原子力施設のさまざまな場所で、同様の現象が発生しうると考える必要があります。
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
最新のパトロール結果とサンプリング結果が新規事項として報告されています。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月13日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。なお、積雪による影響のため一部測定を実施していない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。目視点検により漏えい等がないこと(降雪や凍結により漏えい確認ができない箇所を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
★ポイント
漏水が問題となったH4タンクエリアについては、毎日更新して報告されています。このように日々巡回・報告を続けてくれることは極めて重要なことと思います。
1~4号機タービン建屋東側の状況
1~4号機タービン建屋の東側、海に面したエリアの状況についての報告です。新規事項として最新のサンプリング実績が記載されています。
<最新のサンプリング実績>
地下水観測孔No.1-13のサンプリングを実施(初採取)。分析結果は以下のとおり。
<地下水観測孔No.1-13の測定結果:2月12日採取分>
・トリチウム:88,000Bq/L
・セシウム134:22,000Bq/L(お知らせ済み)
・セシウム137:54,000Bq/L(お知らせ済み)
・全ベータ:260,000Bq/L(お知らせ済み)
<地下水観測孔No.1-13の測定結果:2月13日採取分>
・セシウム134:37,000Bq/L
・セシウム137:93,000Bq/L
・全ベータ:260,000Bq/L
2月13日に採取した分析結果については、前回(2月12日)と比較して大きな変動は確認されていない。今後も、監視を継続する。その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
「No.1-13」という同じ地下水観測孔からのサンプルで、2月12日取水分と13日取水分との大きな変動は確認されないとの記載。
ちなみにセシウム134は、
12日
22,000Bq/L(お知らせ済み)
13日
37,000Bq/L
セシウム137は、
12日
54,000Bq/L
13日
93,000Bq/L
いずれもおよそ1.7倍になっているのだが。
★「今後も、監視を継続する」という東京電力の言葉に期待するよりほかない。
地下貯水槽の状況
新規事項はサンプリング実績についてのみ。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月14日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: