「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心にチェックします。
26日に発生したALPSのA系統の停止と再起動について冒頭で伝えています。
冒頭特記事項
◆多核種除去設備ALPSのA系統、続報です。
※2月26日午後0時21分、多核種除去設備(ALPS)において、インバータ故障警報が発生し、3系統(A系,B系,C系)あるうちの1系統(A系)のブースターポンプ*No.2が停止。これに伴い、A系が循環待機運転に移行。その後、ブースターポンプモータ、インバータおよび付属機器等の調査を行った結果、ブースターポンプ用インバータにて「地絡」が発生したことが判明。このため、インバータ内部に異常がある可能性が高いことから、当該インバータ等の交換を実施。2月27日午後10時47分、当該ブースターポンプを起動し、運転を再開。当該ブースターポンプ起動後の運転状態に異常はない。
*ブースターポンプ:鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ
汚染水から放射性物質を取り除く切り札であるALPSは、いまも試験運転中です。
◆給油用ローリーから油漏れ
※2月28日午前8時9分頃、構内中央五差路付近において、給油用ローリーより油が漏れていることを協力企業作業員が発見したとの連絡があり、同日午前8時14分、消防へ通報。現場を確認したところ、構内中央五差路から海側に延びる道路上に駐車していたタンクローリーの後輪付近に、駆動部の油と思われる直径1.5m程度の油漏れ跡を確認。現在、漏えいは停止。消防による現場確認の結果、「漏れ跡発見事案」と判断された。今後、油の処理を実施予定。
1号機~3号機
新規事項の記載なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加えて、
・2号機タービン建屋→3号機タービン建屋へ高濃度滞留水を移送中(平成26年2月22日午前10時37分~)
◆3号機
1号機と同じ4項目に加えて、
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
加えて、25日に発生したケーブル損傷について続報を新規事項として記載。
※2月28日午前11時9分、4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系の電源について、ケーブル損傷の修理が完了し、プロセス主建屋常用メタクラ(ケーブル損傷発生前の受電元)への切り替え作業を実施するため、使用済燃料プール代替冷却系二次系を停止。同日午後1時20分、作業が終了したことから冷却を再開。なお、冷却停止時および冷却再開時の使用済燃料プール水温度は15.7℃で変化なし。
3号機経由で電気を回していたのを、正規ルートへの切り替えを行ったとのこと。
5号機・6号機
新規事項なし。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
引き続きタンクの監視と、タンク周辺のサンプリングを実施していると記載。新規事項はパトロール結果とサンプリング実績。
<最新のパトロール結果>
2月27日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
もっとも海に近いエリアの、主に地下水の汚染状況についての記載。汚染された地下水の海への流出が懸念されるエリアなので、頻繁にサンプリング調査が行われている。
この日の新規事項も、最新のサンプリング実績について。
2月26日に採取した地下水観測孔No.2-3について、セシウム137が前回値の検出限界値未満(0.53 Bq/L)から5.5 Bq/Lと低い値であるが上昇し、10倍程度の値であることを確認。2月25日に採取した地下水観測孔No.2-6と同様に地下水中の懸濁物の影響と考えている。
また、2月27日に採取した地下水観測孔No.1-14について、セシウム134が、前回値0.96Bq/Lから88Bq/Lに、セシウム137が前回値2.8 Bq/Lから230 Bq/Lに上昇し、100倍程度の値であることが確認された。当該観測孔は海水配管トレンチ等の近傍にあり、全ベータ放射能濃度については350Bq/Lと、前回値(280Bq/L)とほぼ同等であることから、観測孔内の水を採取してから分析するまでの過程において、何らかの放射性物質が混入したものと考えられることから、2月28日に再サンプリングを実施。
2月26日に初採取した、地下水観測孔No.2-8のトリチウムの分析結果は以下のとおり。
<地下水観測孔No.2-8の測定結果:2月26日採取分>
・トリチウム:600 Bq/L
・全ベータ:1,000 Bq/L(お知らせ済み)
その他の測定結果は、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下水なのか、汚染源がなんらかの経路で流れ込んだものなのか。測定値が高い場合のみならず、低い場合も可能性を疑って取り組む必要があると考えます。実際に東京電力もそのような取り組みを行っていますが、早く安定的な計測がルーチンとして確立することを期待します。
地下貯水槽の状況
止水の不備から貯水槽として利用できなくなった地下貯水槽。新規事項としては最新のサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月28日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: