映画「朝日のあたる家」、今年も上映劇場の情報が更新されています。愛知県や静岡県の映画館ではアンコール上映もセットされました!
朝日のあたる家のプログラムから
今回はちょっと角度を変えて、劇場で売られているプログラムから「朝日のあたる家」をご紹介します。
プログラムは出演者のインタビューにページの大半が割かれていますが、平田あかね役の平沢いずみさんインタビューの中にとても大切な言葉を見つけました。ごく一部を紹介させていただきます。きっと「朝日のあたる家」がどんな映画なのか、直観的に伝わるのではないかと思います。
前作でも太田監督の映画(「青い青い空」)に出演した平田さん。監督から前とは違う見せ方を考えてほしいと告げられます。
最初は正直「わあ、重いなあ」って思ったんです。その後原発問題を賛成派と反対派両方の立場から書かれた本を読んだり、被災者の方がたの現状を考えていった。そうしたら、重いのはただ単に思いじゃなくて「これが現実だから重いんだ」っていうように私の中で変わっていったんです。私も東日本大震災の時は都内にいたけれど帰宅できない状態になったし、でも、正直なことを言うと、地震の数日後にテレビのニュースで原発事故を見る瞬間まで、この日本に原発がたくさんあること自体も知らなかった。「こんな危ないものが普通にすぐ近くにあるんだ」って思ってすごく怖くなったのを思いだします。
映画「朝日のあたる家」プログラム 平沢いずみインタビュー[平田あかね役](インタビュー・構成 永田よしのり)
原発事故が起こるまで、日本に何基の原発があるのか正確な数を知っている人はそれほど多くなかったと思います。「こんなにたくさんの原発があるんだ」「あの原発が事故を起こしたら、自分が住んでいる町はどうなるんだろう」――。誰もが一度は想像したはず。しかし……。
脚本を読んでいたら、その当時のかなり参っていた精神状態も思い出した。そして自分の中にそうした「恐怖感や焦燥感があったのに、いつから元の生活に戻ったんだろう?」って疑問が湧いてきた。それって実はすごく大事なことなんじゃないかなあ? って。
映画「朝日のあたる家」プログラム 平沢いずみインタビュー[平田あかね役](インタビュー・構成 永田よしのり)
いつの間にか元の生活に戻っていた感覚。でもそれは完全に忘れてしまったわけではなくて、ただ本当にいつの間にか元の生活に戻っている――。
日常生活の中でそのことを忘れていることは、決していけないことではないのかもしれません。仕事や勉強、友だちづきあいや家庭のことなど目の前にあることをやっていくだけで忙しい。大地震とまったく無縁だったわけではなく、彼女自身帰宅難民を経験された平沢さんでも「元の生活に戻っていた」。
ふだんは忘れていてもいいのかもしれない。ただ、大切なのはいつでもすぐにそのことを思い出せること。他人事じゃなくジブンゴトとして感じることができること。つい埋もれてしまいがちな日常の延長線上に、いつまた繰り返されるかもしれないと、忘れないでいること。
「朝日のあたる家」の長い長いエンドロール(たくさんの人たちが個人レベルで映画に協力したのでエンドロールがたいへんな長さになってしまう!)を眺めていると、インタビューで平沢さんが語ったのと同じような疑問が湧いてきます。そして、やはり「これって実はすごく大事なことじゃないのかかあ」って思うのです。なぜなら今日もそこには、あの日から何も変わらない現実(あるいはどんどん悪化していく現実)があるのだから。そして、長いエンドロールに名前を刻まれた1人ひとりの人たちは、それぞれに思うところあってこの映画の制作に協力したのです。きっと多くの人たちは、ふだんは自分の目の前にある日常に真正面から、あるいはいつも通りに取り組む毎日を送りながら。
被災地や原発に苛まれている人たちは、限られた特別な人たちなんかじゃない。日常の先につながっている。平沢いずみさんの「それって実はすごく大事なことなんじゃないかなあ?」は、そんな意味だと思うのです。
自分と地続きでつながっていることを教えられる映画「朝日のあたる家」。上映予定は下記のリンクをご参照ください。
1月15日現在の2014年のスケジュールは下記の通りです。
【北海道地区】
シアターキノ(北海道札幌市)
2月22日(土)~28日(金)
cineとかち(北海道帯広市)
2月28(金)~
【甲信越地区】
テアトル石和(山梨県笛吹市)
時期調整中
【中部(東海)地区】
豊川コロナシネマワールド(愛知県豊川市)
2月15日(土)~ 2月21日(金) ※再上映
ジョイランドシネマ沼津(静岡県沼津市)
1月11日(土)~1月17日(金) ※再上映
【九州地区】
日田リベルテ(大分県日田市)3月頃 時期調整中
紹介●井上良太
最終更新: