10月26日午前2時10分ごろ、福島県沖を震源とする地震が発生。
宮城県、福島県、栃木県、茨城県で震度4の揺れを記録するとともに、
東北地方から千葉県にかけての太平洋沿岸に津波注意報が発令された。
石巻日日新聞は、石巻市中心部にある標高約60mの日和山に避難した人たちの様子を伝えた。
津波注意報発令後の3時15分ごろ、石巻市日和が丘の鹿島御児神社境内には、十数人の住民が車で避難してきた。同市三河町の工場から避難してきた鈴木理さん(29)は「防災無線で海岸に近づかないよう呼び掛けがあったので、万が一のことを考え同僚と一緒にすぐに避難した。注意報が解除されるまでは車で待機しようと思う」と不安そうな表情で話していた。
記事が伝えた日和山への避難は、宮城県地方に津波注意報が発令された2時50分から25分後。実は、発令から約10分後には同じ石巻市の牡鹿半島の町鮎川に、津波の第一波が到来していていた。
今回の地震では、気象庁が当初発表した地震の規模はM6.8だった。
津波注意報は地震発生の4分後の2時14分に発令されたが、対象とされた地域は福島県のみ。
地震の規模が当初の観測よりも大きいM7.1に訂正され、それに伴って津波注意報の対象地域地域が切り替えられた。この時までに30分以上の時間が過ぎていた。
東日本大震災の教訓から、津波警報は今年の3月にリニューアルされたが、「地震規模を低く見積もったために注意喚起が遅れる」という、一昨年と同様の残念な経緯をたどった。
その時、東北の人たちは?
この日の地震は首都圏はもとより、静岡県の一部でも震度3の揺れを記録する広範囲なものだった。
地震の直後から、フェイスブックなどで発信された東北の知人からの情報には、揺れの長さに関する書き込みが少なくなかった。
石巻の知人は、
「長く続くイヤな感じの揺れ。避難も考えなければ」
と地震の直後にFBに書いた。
大船渡に移住して約半年の知人は、
「1分以上揺れた。こんなの初めて」
と書き送ってきた。
亘理町の知り合いは、津波注意報が広範囲に拡大される前から、NHKで情報収集をしながら津波の危険に備えていたそうだ。
津波注意報は0.2~1mの津波を想定して注意喚起する情報だが、たとえ数10cmの津波でも危険があることを考えたうえで行動していた様子が頼もしかった。
大津波の危険をともなうアウターライズ地震
今回の地震で気象庁が観測した津波は、
相馬市と久慈港で40cm、
テレビで最初に津波到達が伝えられた石巻市鮎川で30cmとのこと。
気象庁以外では、女川原発の港で55cmの津波を観測したと伝えられた。
今回の地震は規模の割に観測された津波は「大したことない」ものに思えるかもしれない。しかし、たとえ30cmの津波でも人間は流されてしまうことを、日本海中部地震など、過去の津波災害は教えてくれる。今回の津波は十分すぎるほど危険なものだったといえる。
のみならず、この地震は太平洋プレートが海溝の下に潜り込む場所よりも東の海側で、プレートが引っ張られて割れて発生するアウターライズ地震だったことが明らかになった。
プレートそのものに、大きく湾曲させるようなテンションが掛かっているため、アウターライズ地震でプレートを引っ張り割る「正断層」の地震が発生した場合、割れたプレートが大きく持ち上げられて巨大津波を引き起こす例が知られている。
昭和の三陸沖地震がまさにそれだった。
今回の地震で津波規模が比較的小さかったのは、地震の規模や断層が生じた場所、プレートの割れ方による「たまたま」だったと考えた方がいい。
★気象庁には津波の規模に対応した警報や注意報を、もっと迅速かつ的確に発令してもらうようにお願いしたい。(プレートの割れ方次第では、今回の津波で被害が発生した可能性も否定できない)
★そして、いかに深夜の地震とはいえ、安全な場所へ避難できるような準備を怠ってはならないということだ。夜間の避難となると、課題は山積されている。避難にクルマを使うかどうかとの問題もある。
幸い被害を生じさせることのなかったこの津波注意報を奇貨として、次にやってくる災害への備えを真剣に考えたい。
東日本大震災の余震としてのアウターライズ地震が懸念される東北地方はもちろん、日本中の沿岸部で津波被害の危険があることを忘れてはならない。とくに東海、東南海、南海地震の危険がある地域では地震の揺れから数分で津波が到達すると予想されている場所もある。
生きのびるための物理的な準備と、心の備えは忘れないようにしたいと思う。
●TEXT:井上良太
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