日和アートセンターで出会った「20歳の時間」

iRyota25

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川開き祭りの翌日、日和アートセンターで展覧会が始まった。展覧会の名称は、

「5人の時間展 意識のながれ」。

仙台市の宮城野高校美術科出身の現役美大生5人が、20歳を迎えるのを機会に石巻に集まり、過ごしてきた時間と変化していく意識をテーマに制作した作品を展示するグループ展。

オープンの朝、そのうち石巻出身の3人のアーティストに会うことができた。

カンバスの上方に吊るされたものまで含めての作品。(写真は部分)
カンバスの上方に吊るされたものまで含めての作品。(写真は部分)

○樋口花蓮「夢想未来」
「わたし、やりたい夢がいっぱいあるんです。イラストレーターになりたいとか、現代美術作家になりたいとか。画面に描いているのは、過去から現在、未来へ続く時間の流れ。過去には沼のように暗い思いもありますが、でもその中にも蓮の花のような記憶もあります。そこからいろいろな夢が生まれていくのを描きました。」
画面の上に吊るされたしずくのようなオブジェは、ひとつひとつの「夢」なのだとか。樹脂でつくられたしずくは、時間とともに半透明の乳白色に変化していくという。
「ここにひとつ、色が変化しているのがあるでしょう。叶いつつあるなというひとつなんです。」
彼女にとって叶いつつある夢が何なのか。それは会場でのお楽しみ。

ギャラリーの床から湧き上がるようにそびえる一点。
ギャラリーの床から湧き上がるようにそびえる一点。

○窪田春佳「探したあと」
彼女はバイクが好きで、この作品もバイクがモチーフだったらしいのですが――。
と、ほかの2人に教えてもらっているところに窪田さんが登場。
「立体作品をつくっている途中で、補修のために樹脂を吹いたら意外と面白い形になったんです。削って形を整えるのが惜しかったので、他の補修部分にも樹脂を吹いてから考えようと思ってやっていくうちにでき上がったのがこの作品。ピンクの部分はストロベリーアイスで、白いところはマシュマロ、みたいに見てくれる人もいますが、もっとどろどろした、たとえばどんどん増殖していく内臓というふうにも見えるでしょう。」
見上げるような作品からは、「カワイイ」と「グロ」が実は近しいものだと感じさせられる。

2脚のスツールの間をつなぐ無数の記憶。(写真は部分)
2脚のスツールの間をつなぐ無数の記憶。(写真は部分)

○岸さつき「わたしとわたしの繋がり」
過去と現在という2つの椅子と、その間をつなぐさまざまな糸。さまざまな意識が生まれ、いまにつながっていくこと、あるいはつながらないことを表現した作品だという。
やわらかな曲線をえがく美しい糸、直線的なステッチ、ふわふわとした質感の糸。「糸のそれぞれに意味があります」と話してくれる岸さん。
「時間の流れは過去から現在に向かっているかもしれないけど、制作は現在から過去をさかのぼって、記憶を発掘していく作業でした」とも。
過去といま現在を表しているのなら、数年後にはもうひとつ、さらに時間とともに椅子が増えていくのかな?

(写真右から)樋口花蓮さん、窪田春佳さん、岸さつきさん。3人のほか、菅野亜美さん、鈴木愛さんを合わせた5人展です。
(写真右から)樋口花蓮さん、窪田春佳さん、岸さつきさん。3人のほか、菅野亜美さん、鈴木愛さんを合わせた5人展です。
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○アーティストのプロフィール

窪田春佳 多摩美術大学 美術学部彫刻学科 2年

菅野亜美 東北芸術工科大学 美術科洋画 2年

岸さつき 東京造形大学 造形学部デザイン学科インダストリアルデザイン専攻 2年

樋口花蓮 京都造形芸術大学 情報デザイン学科先端表現デザインコース 2年

鈴木愛 東京造形大学 造形学部美術学科絵画専攻 2年

期間は8月11日(日曜日)まで。
開催時間は11:00~19:00です。

日和アートセンター
〒986-0822
宮城県石巻市中央2−10−2
Tel & Fax : 0225-24-9780

日和アートセンター

5人の時間展 意識のながれ

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●TEXT+PHOTO:井上良太(ライター)

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