放射線の効用
目に見えない、わかりにくい放射線ですが、その特性を生かして社会に大きく貢献しています。
医療の分野では、透過力を生かしてX線、CT検査に用いられ、これをなくして現代医学は考えられないほど診察の基本となっています。高エネルギーを生かした放射線療法により、手術しないでガン治療ができるようになりました。医療器具の殺菌にも欠かせません。
工業の分野ではタイヤ、プラスチック部品に照射して、強度を高めたり、耐熱性を向上させたり、非破壊検査として金属の溶接状態、半導体チップの検査にも利用され、紙、鉄板などの高精度厚さ計測用にも重用されています。
農業の分野では、ジャガイモの発芽防止のほか不妊虫放飼法による害虫駆除に非常に有効で、植物の品種改良にも使われています。
身近なところでは煙感知器(火災報知機)、空港での手荷物検査でも放射線が利用されています。
程度の問題
このように便利な放射線を怖いと感じるのは、原爆被害あるいは原発事故による避難騒ぎがあったためで止むを得ないのですが、何事も程度の問題です。
私たちは、水がなくては生きることができません。しかし水を大量に飲みすぎると水中毒となり非常に危険です。多すぎると危険だとわかっている水を、誰も危険物だとは思いません。程度をわかっているからです。
自動車にぶつけられたら危険なので、自動車をなくそうという人は少ないと思います。なぜなら、ドライバーがルールを守って運転すれば安全だと信じているからです。
包丁、医薬品、工具、家電等、身の回りのほとんどの物が、用法を間違えたら凶器になり得るものばかりです。それを危険だから止めようという人は、ほとんどいないはずです。
同様に、現代社会に深く浸透した放射線を、社会から排除することができない今、もう一度ルールを見直し、安全性を再確認する必要があります。危険性ばかり強調されたら、ダイオキシン騒動の二の舞になってしまいます。放射線をどのように扱うべきか、安全対策をどこまでするのか、十分に議論したうえで今後の方針を決めてほしいと思います。
利便性と危険性は隣り合わせで、利便性を得るためにどこまで危険性を容認できるか、どこまで回避できるかということであり、冷静に、客観的に、そして将来も考えて判断すべきものです。決して一時的な感情で決めるものではありません。
ルールに従い、正しく使えば安全は確保され、便利で快適な生活を送ることができるのですから。
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