放射能に負けないコメ作り 第6回の記事について、東北イノベーターの新妻康晴さんからメールをいただきました。
とてもありがたいご指摘でしたので、紹介させていただきます。
新妻さんのご指摘は、出荷するお米の全袋検査での計測時間について。元の記事の注釈の中で、
統計学的には「意味がない」と判断されかねないところまで、計測時間を延長するというところに、「安心」と「安全」を目指すこのグループの方向性が現れているといえるのではないだろうか。
と記した部分について、「誤解を招きそうな文面がありましたので補足して」くださいました。
ここで計測時間をかけすぎると意味がないという表現がありますが、
実は重要な意味があります。確かに短すぎるのは精度に問題を
生じる可能性があり、長いと確度が高くなりますが、それ以上に
重要なのは検出限界(検出下限値)が下がるということです。
検出限界(検出下限値)とは検出できる限界値のことでこの値が
低いほど精度が高いと言えます。
例えば検査結果がND(不検出)でも検出限界が50Bq/Kgなら
実際は40Bq/Kgあるかもしれません。検出限界が10Bq/Kgでの
ND(不検出)なら、10Bq/Kg未満でより安心できます。
新妻康晴さんのメールより
さらに、検出限界と計測時間の相関についても教えていただきました。
参考までに検出限界値と測定時間の相関についてお知らせします。
ある基準での測定時間をT0、検出限界値をG0として、
測定予定時間をT1、予定検出限界値をG1とすると次の関係式があります。
G1=G0/√(T1/T0)
計算例 ある基準での測定時間を10分、検出限界値を30Bq/Kgとして、
測定予定時間を40分とすると
予定検出限界値はG1=30/√(40/10)=30/√4=15Bq/Kgとなります。
測定時間を何時間もとれば検出限界値をそれなりに下げられます。
新妻康晴さんのメールより
不勉強を恥じ、誤った内容を記載していたことをお詫びします。
そして、お詫びとともに思うのは、新妻さんたちの取り組みへの敬意です。
安心は、安全を確保するための不断の行いによってのみ担保される。だからこそ、手間を惜しまず、より検出限界を下げて、計測精度を高めているのです。
新妻さんはメールをこう締めくくっています。
弊社の実験ではさらに測定時間をとり検出限界を下げて測定し、
さらなる安全な米を目指しています。
新妻康晴さんのメールより
安心して食べられる米づくり。放射能に負けない米作りは、
精度の高い計測があってこそ。
消費者の信頼に応える仕事をこれからも、よろしくお願いします。
最後に、ご指摘をいただく前の記事を自戒のために引用しておきます。
注*)ベクレルは一定時間内に放出された放射線量を平均値として示す単位だから、長い時間をかけて計測した方が正確さが増す。たまたま原子核の崩壊が少なかった時間帯で測定した場合、数値が低く出る可能性がないとはいえない。時間をかければかけるほど、数値の確度は高くなる。考え方としては電子体温計を想像するといいかもしれない。短い時間で検知される体温は一定の確率で算出された想定値。標準的な計測時間をかけてはじめて実測値が出る。このミーティングで示された数値は、さらに標準的な計測時間以上かけて測定しようという念には念を入れた測定のやりかたと言える。統計学的には「意味がない」と判断されかねないところまで、計測時間を延長するというところに、「安心」と「安全」を目指すこのグループの方向性が現れているといえるのではないだろうか。
●TEXT:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)
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