ホストクラブとは男性従業員が女性客の隣に座って接待をする飲食店。主役はあくまでもお客様である女性です。ホストは女性を良い気分にさせて喜ばせるのがお仕事です。「イケメン！色恋トーク！枕営業！自分の持つ武器を駆使して女性を満足させてみろ！」という成果主義の特殊な世界。そんなファンタジーワールドに迷い込んだホスト体験記を告白します。

　「ホストたるもの清潔感は命！」と一念発起し、メンズエステでヒゲ脱毛を決行した翌日。鏡を見てビックリ！脱毛部分の毛穴という毛穴が化膿して、顔面にアリの卵を植え付けられたようにブツブツと黄色い膿の塊が点在しています。医師から処方された肌荒れ防止の美容液は効き目が薄いようでした。

ボコボコになった顔のままホストクラブに出勤すると、店のスタッフにもビックリされました。「大丈夫ですか？メチャクチャ痛そうですよ！」とか「バイオハザードのゾンビみたいな顔立ちですね！」など、色々言われて心配になりました。脱毛は成功だったのか？永久にヒゲは生えてこないのか？

　顔面ボコボコのままタクヤ代表のテーブルにヘルプに着くと、僕はメンズエステの話をネタにしてお客さんから笑いを取る作戦に出ました。

僕　　：「ホストたるもの清潔感が命だと思いまして、脱毛したら顔がボコボコなりました！」
タクヤ：「へぇ、エステとかで脱毛したの？」
僕　　：「はい、ツルツル美肌にしようと思って60万円コースに申し込みました！」
お客　：「たか～～い！メンズエステってそんなにするの？」
僕　　：「顔全体を脱毛するにはそれくらいかかります！」

タクヤ：「お前、金使いすぎだろー」
僕　　：「金かけなきゃ、モテる男になれないかなと・・・」
タクヤ：「イナバくんてA型だよね？A型は考えすぎて自論に溺れるとこがある」
僕　　：「そうですか？」
タクヤ：「ここは薄暗いしヒゲまで見えないからな。自意識過剰だと自滅するぞ」

笑いを取るどころか、逆に説教されてしまった自分・・・
借金を積み重なるに連れ、徐々に病的な思考回路になっている気がしました。

　ようやく肌荒れが収まった1週間後。アゴヒゲの脱毛を受けるため、再びメンズエステに通うことになりました。ヒゲの1本1本に針を刺し、高圧電流を流して毛根を死滅させるのが永久脱毛です。前回は号泣するほどの激痛に苦しみましたが、口元の脱毛に比べるとアゴヒゲの脱毛は幾分痛みがやわらぎました。

しかし、治療が終わると脱毛処理を受けたアゴが真っ赤に腫れあがりました。口元がボコボコに化膿した前回の悪夢がよみがえります。担当の医師に脱毛部分の肌荒れについて相談すると、「敏感肌の可能性があるので、アフターケア用の美容クリームを処方します」と指導されました。

店員：「スペシャル美容クリームを4本お付けしまして、お会計12万5000円になります」

じゅ、じゅ、じゅ、じゅうにマソごせんえ～～～～ん！？
会計金額を聞いて口から泡を吹き出して倒れそうになりました。

僕　：「スペシャル美容クリームっていくらするんですか！？」
店員：「1本1万5000円ですので、4本で6万円になります」

いっぽん・・・いちまんごせんえ～～～ん？？？
どんな金持ちセレブが使う美容液なんだよ！！！
あまりの理不尽な金額にぼったくりに悪寒が走りました。

僕　：「すいません！そのクリームいらないので会計から引いてください！」
店員：「いえいえ、肌荒れ防止に効果的ですのでお使いください！」

受付の店員さんと『いる！いらない！』の押し問答を散々繰り返した後、強引に話を押し切って美容クリームを返しました。会計を済ませると逃げるように店を去り、その日のうちに60万円の脱毛コースを解約しました。違約金が3万円発生し、たった2回の利用代金は14万円にも上りました。

翌日・・・。予想通り、治療した肌が化膿してアゴがボコボコになりました。
あの、スペシャル美容クリームを買っていれば肌荒れを防げたかもしれません。

たった2回の治療では顔全体の永久脱毛には程遠く・・・
借金14万円という結果だけが残って敗北に終わりました。