東京・浜松町駅から南へ徒歩10分。おがさわら丸は竹芝桟橋を出港する。
初めて小笠原諸島を訪れた時は、5人の友人と一緒だった。全員が小笠原へ行くことに対してハイテンションになっている。無理もないなぁ。小笠原諸島・父島へは竹芝桟橋から25時間30分かかる。船も繁忙期を除けば6~7日に1便しかないのだ。
努力と熱意が、出港と同時に弾ける
だからこそ、小笠原へ向かう人々の、その想いはアツい。僕らだってそうだ。9日間の滞在を予定していたが、当時学生の身分だった僕らにしてみれば、旅費が10数万円かかる小笠原は超高級品である。学業をおろそかにしつつ(か、どうかはわからないが)アルバイトに励み、ようやくためた貯蓄をたった9日間の旅費に注ぎ込む。
もちろん、ほかの人々だって同じだ。船に乗る時間、現地での滞在日数を考慮すれば、社会人とてそうやすやす行ける場所ではない。学生は「お金はないが時間はある」と言うが、社会人は「お金があっても時間は・・・」なのだ。後に知る話だが、「会社を辞めて小笠原へ」というパターンは多い。そのほか、小笠原に行きたいがために「まとまった休みが取れる会社へ転職した」、「上司とケンカして強引に有給を消化した」なんていうパターンも。どちらにせよ、そこに涙ぐましい努力があるのは言うまでもない。
そして、そんな努力と熱意が、出港と同時に弾ける。朝10時の出港と同時に(もしくは出港前から)缶ビールを開ける客。10時の出港と同時にすやすや眠りだす客。ソファーのあるラウンジ(人気ですぐ埋まる)に直行して読書にふける客。携帯ゲームを取り出し、そのまま動かなくなる客。などなど。たとえ、その日が平日だろうとお構いなし!思い思いの時間を過ごすのだ。
それぞれの過ごしかた
一方僕らは、25時間30分をどう過ごすべきか、勝手がわからず、しばらくデッキに出ていた。東京湾を進むと羽田空港が見え、レインボーブリッジの下をくぐる。関西人の僕らはそれだけでテンションが上がったが、東京に馴れた人でも、いつもと違う角度から見る東京の形式はひと味違うのではないか。
そんな光景にきゃーきゃーはしゃぐ僕らを見て、近くにいた常連と思しきおじさんが、ワンカップを片手に「若いねェ」とぽつり。
そのまましばらく風景を眺めていると、外国人の男の人が声を掛けてきた。よくわからないが、「一人じゃ寂しいから喋ろうぜ!」と言っていた(はず)。片言の英語に片言の英語で返す。聞けばアルゼンチンから来たらしい。仲間の一人が「地球の裏側ですやん!」ってつっこむと、「ウラガワデスヤーン!」と返してくれた。お互いどこまで意味が理解できていたのかはわからないが、長旅ゆえのテンションだろうか。どっと盛り上がった。
そんな光景にきゃーきゃーはしゃぐ僕らを見て、近くにいた常連と思しきおじさんが、ワンカップを片手に「若いねェ」とぽつり。
25時間30分の船旅は、出港と同時に弾ける。
竹芝客船ターミナル
おがさわら丸はここから出港する。ここから25時間30分!長い長い船旅の始まりだ。
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