伊豆諸島名物「くさや」を考察!

tanoshimasan

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伊豆諸島名物「くさや」

 くさや

 関東圏にお住まいのお父さんならご存知かも知れませんね。伊豆諸島の名産、くさーい魚の干物です。関西出身であまりくさやに馴染みのなかった僕でも、 「くさやを焼いて1日経っても部屋がくさかった。」

 「換気扇を回したら近所中にニオイが拡がって通報された。」という“くさや伝説”なら聞いたことがありました。

 幼少のころに見た『クレヨンしんちゃん』では、お父さん・野原ヒロシが「このくささが良いんだよー!」みたいなことを言って笑顔で食べていたエピソードがあり、その話はなぜか妙に覚えています。

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 大人になればわかる味なのか。いやしかし僕の父や周りの大人が食べているところなんて見たことも無い。くさやって何なんだろう。そんなことを考えながら(しかし、それほど深く考えることもなく)、時は流れました。関東方面に住むようになり、伊豆諸島に関わっていくうち、ようやくくさやに出くわします。 先日、とある伊豆諸島の島々の食事を楽しむ会に参加すると、やはりくさやが登場しました。伊豆諸島の中でも元祖にして最もキョーレツと言われる新島産。部屋にくさやが運ばれる瞬間、空気が一変するのがわかります。くさいのは間違いないのですが、どんなニオイか気になると思います。しかしあえてここでは触れません。ご自身でご確認を(笑)。

くさやの起源

 しかしまぁ、なぜここまでくさいのか。なぜくさいのに名品(珍品)として親しまれているのか。それには伊豆諸島の歴史が深くかかわってくるのです。

 古くから漁業が盛んだった伊豆諸島の島々。しかし、魚が捕れたとしても冷蔵技術が無かったころは、どうにかしてそれらを保存しなければなりませんでした。そこで塩分が活躍します。例えば、ナメクジに塩を掛けると干からびてしまうという話はご存知でしょうか。塩は周りから水分を奪う働きがあるのです。 これが食品の保存に塩分が活躍する理由。「イカの塩辛」などもそうですが、塩分は食品の保存に適しているんですね。食物内に含まれる水分が奪われることで、腐敗の原因になる微生物が活動できなくなってしまいます。

 そして、それを応用したのがくさや。当初は、伊豆諸島でよく捕れるトビウオやムロアジといった魚を塩水に漬けて干し、保存性を高めたのが起源と言われています。

ニオイの秘密

 ところが、くさやが誕生したと考えられている江戸時代の当時、稲作ができない伊豆諸島では塩を年貢として納める決まりがありました。いわゆる塩年貢です。そのため、ただでさえ年貢というノルマがあるのに、わざわざ魚の保存のために塩をたくさん使うことなんてできません。塩水はやむなく使いまわすことになったそうです。 想像してみてください。生魚の開きを何度も何度も同じ塩水に漬けるのです。やはり塩水は次第に変色していき、徐々に独特のニオイを放つようになりました。飽食の時代に生きる我々なら、見た目の悪い塩水は取り替えるでしょう。しかし、やはり貴重だったんですね。見た目の悪さは覚悟の上で、塩水に漬けた干物を作ると、ついには干物までキョーレツなニオイを放ちました。

 ところが、勇猛果敢な島民が居たんでしょう。くさいのは覚悟の上で干物を口にしたところ、味は意外にも旨い。名前の由来も諸説ありますが、やはりニオイがくさいことから「くさいや=くさやと呼ばれるようになった」という説が有力視されています。ちなみに見た目の悪くなった塩水、今では「くさや液」と呼ばれるようになり、歴史の長いものでは200~300年使われているのだとか。

実は身体にすごくイイ

 「使い回しにして、汚くないの?」誰もがそう思いたくなります。くさや液はどうしても見た目が悪く、元々は塩水だったと言えど、塩分濃度もそれほど高くありません。そのため微生物も活発です。 しかし、調べたところによると、くさや液は微生物は豊富ながら、乳酸菌の一種であるコリネバクテリウム・クサヤ菌など身体に良いものが多く、大腸菌やブドウ球菌といった食品衛生上好ましくない細菌は検出されなかったという研究結果がありました。(くさや液では死滅するようです)

 ビタミンやアミノ酸なども豊富で、今ではその栄養価の豊富さが注目されているほど。さらには微生物の活動に応じて「くさや液を休ませる」など工夫もされているそう。(クサヤ菌の回復を待つため)意外と奥も深いんです!見た目が悪いのは、身体によい微生物が活躍している証拠!実はなんとも身体によいくさや液なのでした。ニオイを除けば・・・。

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 そう、「ニオイを除けば」。僕は恐る恐るくさやを口に運びました。 おお!思った以上にあっさり風味!

 添えられたマヨネーズ(島唐辛子入り)がなんとも合う!くさみはマヨネーズの風味でマイルドになるし、島唐辛子がピリッと良いアクセント。なんや、意外とイケるやん。 とは言え、くさやをくさやと知らずに渡されても絶対食べないだろうし、身体によいなんて絶対思わない。ところが伊豆諸島では、科学的に成分を分析できない時代から、身体によいと認識して食べられていたそう。ほぇー、先人の知恵は凄いなぁ。

 ちなみに伊豆諸島は9島ありますが、島によっても微妙に成分が違うとか。ツウなら島めぐりをしながら味比べなんてのも良さそうですね!

 日刊楽島コラム
potaru.com

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