手術当日。朝から緊張する
手術当日。朝からドキドキするようなワクワクするような不思議な気持ちに襲われました。(遂に手術するのかー、ちょっと怖い・・・でも面白そう・・・やっぱりこわーい!)
自転車で病院に向かう途中、不安な気持ちが高まり、足が震えてフラフラしていました。
右往左往しながらようやく辿り着いたものの、なかなか中に入る気がしません。(いよいよか・・・)
しばらく玄関の前に立ち尽くした後、覚悟を決めて院内に入ります。
受付を済ませた後、待合室で順番を待っているとき、なぜか無の心境になっていました。実感が湧かないというか、なんというか・・・もはや緊張することさえ面倒になっていたのです。
看護婦「〇〇さん、5番室にどうぞ」
僕「うっ・・・」
しかし、自分の名前が呼ばれると一瞬にして緊張感がよみがえり、頭がクラクラしてきます。もう後には引き返せません。大量の脇汗をかきながら診察室に向かいます。
そして手術台へ
診察室に入ると、担当の医師が笑顔で迎えてくれました。
医師「えーと、切除するのは顎のホクロですね」僕「はい、これです!」
医師「分かりました。それでは頭をこちらに向けて手術台に寝てください」看護婦「心電図をつけるので、服をまくってくださいね」
言われるがままに手術台に寝転ぶと、心電図の電極を手足に付けられて心拍数を測られます。
『ピコン!ピコン!』という規則的な機械音が心臓の脈拍を伝えてきます。TVドラマの手術シーンでしか聞いたことのない音を耳にして、感慨深い気持ちになりました。
(いよいよ、始まるのか・・・)
医師「では、麻酔をうちます。少し痛みますよ」(麻酔きたーーーーーーーー!!)
『手術のときは麻酔が痛い』という言葉をよく耳にしていたので大きなプレッシャーを感じました。
特に場所が顔なだけに、普通の麻酔より絶対痛いに違いない!そんな妄想を抱いていたのです。
プスッ・・・注射針が容赦なく僕の顎に突き刺さります。(あれ?思ったより痛くない・・・ていうか普通・・・)
少しチクッとしただけで、ほとんど痛みを感じません。
プスッ・・・そして別の場所にもう一度、注射針がうたれます。
(え、もう一度?へぇ、麻酔注射って一か所だけじゃないんだなー)ジーンとした痛みが少し残った後、あっという間に顔の感覚が麻痺していきました。
初めての手術に興奮
医師「始めますよ、リラックスしてくださいね」無意識に拳をギュッと握りしめて体に力が入ります。全然リラックスなんかできません(笑
顎の辺りをモゾモゾと触られているのは分かりますが、それ以外は何をされているのか分かりません。
ただ、ホクロのある位置からジワーッ、ジワーッと何かがこみ上げてくる感覚があります。おそらく大量の血が噴き出ているに違いありません。医師は何度も血を拭きとりながら作業を進めています。
医師「あっ!ごめん!」
看護婦「あ・・・!」(えーーーーー!あ、ごめんって言った・・・今・・あ、ごめんて・・・)
突然、看護婦に謝罪する医師。何か焦っている様子・・・何か失敗でもあったのだろうか?
その様子に恐怖を感じつつも表情を崩すことができず、グッと我慢して堪えます。
医師「ふぅっ・・・六針お願いします」看護婦「はい、わかりました」
医師は大きくため息をつきました。その様子からなんとなく峠は越えたようです。
そして今度は皮膚が引っ張られる感覚がします。おそらく傷口を縫っているのでしょう。
医師「後藤さん、色が焼けてないねー。最近は行ってないの?」看護婦「はい、5月くらいから行ってないんですよー」
いきなり世間話を始める医師と看護婦。
(あぁ・・・終わったんだな・・・だから先生もリラックスしてるんだ・・・)
二人のやりとりを聞いて、僕はとても安心しました。
医師「終わりましたよ。〇〇さん、体をゆっくり起こしてください」
鏡を見てビックリ!
手術台を降りると、先生が鏡を出して術後の傷跡を見せてくれました。
医師「どうですか、綺麗になってるでしょ?」
僕「はい、そうですね・・・あっ!」
ホクロがあった位置を見て僕は言葉を失いました。二つあったホクロが完全に無くなっているのです!チャームポイントだった僕のホクロが・・・二つとも完全に・・・
(そういえば、あの麻酔・・・二回うったのは一度に二つ取るためだったんだ!)
手術前の話ではホクロは一つずつしか取れないということでした。しかし終わってみれば完全消去。
大きい方は取るつもりでしたが、小さい方はチャームポイントとして残しておくつもりだったのです。
医師「どうですか?」僕「はい、綺麗になってますね・・・」
(まぁ、いいか・・・ホクロなんてあっても仕方ないもんな・・・)
顎のホクロは食いっぱくれないホクロとも言われているので、少し残念な気持ちもありました。とは言っても放置しておけば癌になる可能性もある危険なホクロ!取っておいて正解かもしれません。
医師「これが、摘出したホクロですよ」
僕「わー、凄いですねー!」
先生は透明の液体にホクロが沈められた小瓶を見せてくれました。大きい方のホクロは正露丸の3倍以上はある巨大な球体をしています。
ホクロは表面だけに付いているのではなく、根元に本体が埋まっているらしいのです。
二つのホクロはまるで地球と月のような形をしていて・・・なんて綺麗なもんじゃありません!ところどころにヒゲが突き刺さっていて、凄くグロテスクで気持ち悪いものでした。
術後の経過
手術から一週間後に抜糸を終えて、跡形もなく消えてしまったホクロですが、メンテナンスを怠ったせいか、傷口にボッコリ大きな穴が開いてしまい、
そこに血が固まって膨らみ、再びホクロのようになってしまいました・・・(笑
傷口にはしっかりしたアフターケアが必要なんですね。これではマズいと思い、病院で貰った塗り薬を使用してるうちに傷口は少しずつ良くなってきました。
今では随分良くなっていますし、もうカミソリでホクロを切ってしまうことはありません。ホクロを取って本当に良かったと思っています!
口元のホクロは『食いっぱくれないホクロ』『おしゃべりホクロ』と言われていますが、
今のところは大きく財産を失ったり、無口になってしまうなどの症状はみられません。
あれは単なる迷信なのでしょうか?それとも徐々に効果が現れるのでしょうか?人相が変われば運命が変わるとも言いますが、これから先の結末を楽しみにしたいと思います!
第二部 完
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