ロンドンオリンピック開催日に先立ち、男子・女子サッカーの試合が始まりました。今回は8月9日に行われたなでしこジャパンの決勝戦。日本VSアメリカの試合を振り返ってみたいと思います!
決勝戦は宿敵アメリカ、お互いに金メダルは譲れない
決勝戦は日本VSアメリカ。去年のドイツワールドカップを再現するかのような組み合わせでした。最高の舞台に最高の相手を迎えての大一番。なでしこジャパンが金メダルを持ちかえれば、去年のワールドカップに続いて2回目の王者獲得です。女子サッカーの世界では、オリンピックで獲得した金メダルこそ最も価値の高い物とされています。試合前、キャプテンの宮間は「これからの女子サッカーの歴史のために金メダルを勝ち取ろう」と言いました。
金メダル獲得となれば日本の強さを世界にアピールできるだけでなく、日本に女子サッカーを普及させるための大きな布石となるからです。対するアメリカはワールドカップでの雪辱を晴らすために、是が非でも勝ちを収めたいところ。日本に連敗してしまえば、母国に帰れないという気持ちで挑んできたでしょう。
最高の戦いを見せた日本、コンディションを決勝に合わせていた
日本はシステムは4-4-2。レギュラーメンバーを揃えて万全の布陣で臨みます。一方、アメリカのシステムは日本と同じ4-4-2。世界最高のツートップと呼ばれるモーガンとワンバックの二人を前線に置き、正確なミドルシュートとクロスボールを武器にするサイドハーフのラピノー、そしてヒースがサイドから攻撃を組み立てます。世界屈指の高さとパワーを誇るセンターフォワードのワンバックがターゲットになってサイドアタックの起点となり、スピードが武器のモーガンが縦に速いボールを狙ってディフェンスの裏に飛び出します。下馬評では圧倒的に不利と見られていた日本でしたが、ラインを引いて守るのではなく積極的に前からプレスをかけにいきます。
日本は運動量が豊富で攻守の切り替えが速く、中盤でのパスワークも冴え渡り、アメリカに攻撃の的を絞らせませんでした。予選グループリーグでの不調を見る限り、決勝トーナメントでの戦いが心配された日本ですが、勝ち上がる度にコンディションを上げ、この日は最高の仕上がりを見せていました。決勝に標準を合わせてコンディションを上げるという戦い方は、日本のサッカー史を見ても類のない事例です。 目の前の一戦だけに集中するのではなく、大会全体を通して戦略的な戦いを展開していたのです。
ほぼ完璧な守備、しかし3列目の見えない敵をマークできず・・・
守備でも安定感のあるプレーを見せた日本。センターバックの熊谷が完璧なマークでワンバックを抑え、裏へ抜け出そうとするモーガンのスピードも岩清水が巧みなポジショニングで防ぎます。中盤の激しいプレスでアメリカのパスコースを消し去った日本。アメリカは前後半を通じて単調な攻めに終始していた印象を受けます。
全てを予定調和に進めていた日本のゲームプランを崩したのはボランチのロイドでした。アメリカの攻撃パターであるサイドからのクロスボールと中央の突破力を警戒するあまり、後方からの攻め上がりに注意が及ばず、ボランチのロイドをフリーにしてしまいます。前半8分、左サイドでボールを受けたヒースが中央にグラウンダーで折り返し、トラップで岩清水のマークを外して受けたモーガンが再び中央に入れると、後方から走り込んだロイドがヘッドで押し込んで先制ゴール!
後半9分にもロイドが中央を鋭いドリブルで切り裂き、マークする阪口を振り切って強烈なミドルシュート。これがゴール左隅に突き刺さって2点目を奪います。アメリカの攻撃をほぼシャットアウトしていた日本ですが、3列目の見えない位置から飛び出してくるロイドの動きは想定外でした。DF熊谷は「前線の選手にマークは足りていたが、3列目の飛び出しは見えなかった」と話しています。この試合、唯一フリーになっていた選手が攻撃的ボランチのロイド。そこをケアしきれなかったことだけが悔やまれます。
大儀見のゴールで盛り返すが、運にも恵まれず1-2の惜敗
後半18分、宮間のスルーパスを受けた大野が中央に折り返すと、澤がシュートを放ちます。これはDFランポーンに防がれますが、あきらめずに追った澤がスライディングで寄せると、ボールがこぼれて大儀見の足元へ。それを大儀見が左足で押し込み、日本が1点を返します。前半から何度もチャンスを作り、アメリカよりも遥かに多い決定機を生み出しますが、シュートが何度もゴールポストに嫌われたり、ペナルティエリア内で相手のハンドが認められないなど、この日は運にも見放されます。
あと一歩のところまでアメリカを追い詰めた日本ですが無情にもタイムアップ、1-2の惜敗を喫します。世界最強チームのアメリカに対して、一歩も引くことなく互角以上に渡り合ったなでしこジャパン。試合には負けましたが、試合後の記念撮影では選手一同満面の笑顔。その顔を見ても悔いのない戦いだったことが分かります。日本に足りなかったのは少しの経験と少しの運だったように思えます。
総括
今大会のなでしこジャパンを見て、「よく決勝まで勝ち残れたな」というのが筆者の正直な感想です。予選リーグからチームの運動量が上がらず、得点力不足に悩み、中心選手の澤や宮間も思うような活躍ができない中で、ブラジルやフランスの強豪国を相手に90分で勝ち切れたことは驚愕です。日本はドイツワールドカップでの優勝を境に国際大会での勝ち方を覚えたという印象を受けます。
4年後のワールドカップでは中心選手の年齢が30歳を超えてくることもあり、世代交代がどのような形で図られるのか興味深いところです。女子U-20代表には京川舞、田中陽子、仲田歩夢など、将来のスター候補がズラリと並びます。若手とベテランが融合した新しいなでしこジャパンの今後が楽しみです!
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