ロンドンオリンピック開催日に先立ち、男子・女子サッカーの試合が始まりました。今回は8月6日に行われたなでしこジャパンの準決勝。日本VSフランスの試合を振り返ってみたいと思います!
勝てばメダル確定、負ければ3位決定戦という緊張感
なでしこジャパンにとって悲願であるオリンピックでのメダル獲得。この試合に勝てば銀メダル以上が確定することもあって、序盤から両チームとも独特の緊張感を漂わせるゲーム展開となりました。オリンピック開幕直前の壮行試合で、日本はフランスに0-2の完敗を喫しています。「手も足も出なかった」という澤の言葉にあるように、フランスを相手にどこかナーバスになっている選手の様子が気になりました。
フランスのシステムは4-2-3-1、最前線に高さとスピードのあるドゥリを1トップでフォワードに置き、その下に3枚の攻撃的なミッドフィルダーを配置します。左のティネ、右のトミスはフィジカル、テクニック、スピードと全ての能力を備えたサイドアタッカーで、トップ下のネシブは女性版ジダンという異名を持つ天才的なゲームメーカーです。両サイドの破壊力あるドリブル突破を攻撃の起点にして、1トップのドゥリがディフェンスの裏へ抜け出し、中央のネシブが巧みにパスを散らしながらフィニッシュに絡んできます。
少ないチャンスをゴールに結びつけ、勝負強さを見せた日本
ゲーム序盤、フランスは前から積極的にしかける姿勢を見せず、ディフェンスラインを引き気味に保ちながらゴール前に守備のブロックを作ってカウンター狙いの戦術を取ります。日本は敵陣深くまでオフェンス陣が切れ込んで積極的にゴールを狙いにいきますが、高さとフィジカルで上回るフランスのディフェンスを崩し切れません。ゲームが動いたのは前半32分、ペナルティエリア手前でフリーキックのチャンスを得た日本。宮間が無回転に近いブレ球をゴール前に供給、前に出てきたゴールキーパーのブアディが目測を誤ってこのボールをファンブル。
こぼれ球を狙っていたという大儀見が鋭く反応し、体を投げ出しながら泥臭くゴールネットに押し込んで先制点を奪います。後半開始4分。ペナルティエリア近くでフリーキックのチャンスを得た日本は、またしても宮間のフリーキックから得点を奪います。インフロントキックで鋭くカーブのかかったボールが大きな弧を描いてディフェンスの頭を超えていき、ファーポストでフリーになっていた阪口は、体を捻りながら逆サイドに技ありのダイビングヘッド。逆をつかれたゴールキーパーは反応できず、ボールは鮮やかにネットに吸い込まれます。
守備的な戦術が裏目に出たフランス、猛攻を見せるも決定力を欠く
2点を先取されて前に出るしかなくなったフランスは、突破力のあるルソメルとアビリを立て続けに投入して攻撃のリズムを変えていきます。日本は全員が自陣に引いてペナルティエリアに守備のブロックを築きますが、サイドから一対一のドリブルをしかけられると強引に突破されてしまいます。後半31分、フランスは右サイドをドリブルで切り崩すと中央に折り返し、フリーのルソメルが飛び込んでファインゴール。更に後半33分、ルソメルが左サイドでディフェンス2人をかわし、中央に反転してペナルティエリアに飛び込んでくると阪口が足で引っかけてPKを与えてしまいます。このPKをブサグリアがゴール右隅に狙いますが、ボールは無情にも枠からそれて同点のチャンスを失います。運にも助けられた日本はフランスの猛攻を凌ぎ切って2-1の勝利。メダル獲得という史上初の快挙を成し遂げました。
どうして攻めてこなかったのか?フランスの戦術に疑問符
メダルマッチということで慎重になったのかもしれませんが、フランスが最初から攻めに転じていれば結果は違っていたかもしれません。フランスは日本をリスペクトし過ぎていた感があります。計27本のシュートを放った攻撃陣の破壊力は凄まじいものがありました。ディフェンスラインを引くことなく、普段通りの戦いをしていれば日本に2点先取されることもなかったでしょう。先行逃げ切り型の日本のカウンターサッカーを恐れていたのかもしれませんが、あまりにも消極的な戦い方に見えました。
逆に日本はあれだけ長い時間攻め続けられながら、わずか1失点に抑えたことは評価できます。サイドから何度となく突破を許していましたが、中央で自由にボールを持たせませんでした。ボランチの澤と阪口がペナルティエリアの一つ前で壁を作り、危険なスペースを消し去っていたことが要因だと思います。バイタルエリアでシュートコースを消されていたフランスは、シュートを打っていたというよりは打たされていたという印象を受けます。
ここにきて宮間のキックが冴え渡る
予選リーグからここまで、調子を落としていた宮間が存在感を示したこの試合。前に出てくる癖を持つゴールキーパーのミスを誘っていたという1点目のフリーキックは、去年から練習に取り組んでいた『無回転ブレ球』の効果が見事に出ていました。2点目のフリーキックは、ボールウォッチャーになりがちな相手ディフェンスの弱点を突いたことで生まれたゴールです。どんな時でも冷静に戦況を見極める宮間のセットプレーは、こう着したゲーム展開になったときこそ、大きな威力を発揮します。
2試合連続ゴールの大儀見、決勝戦に期待が持てる
ディフェンスの競り合いからしぶとくゴールを押し込んだ大儀見。2試合連続のゴールを奪ったことでストライカーとしての本領を発揮しつつあります。得点以外のプレーも安定しており、屈強なディフェンダーに囲まれても最前線でボールをキープしながらタメを作り、味方の攻撃参加を上手く引き出していました。90分間落ちない運動量とスピードは相手の脅威になっています。ロスタイムにカウンターから長距離をドリブルで一気に独走して放ったシュートは惜しくもポストに嫌われましたが、動きはキレまくっています。
総括
決勝戦は最大の宿敵であるアメリカに決まりました。ドイツワールドカップでは延長PK戦までもつれ込んで勝利を収めましたが、次戦では90分で勝負をつけられるかがポイントになってくると思います。延長戦まで及んだ場合、体力に勝るアメリカが有利になってくるので早い時間に勝負を決めることが必要でしょう。
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