2013年7月20日から7月28日まで韓国で東アジア杯が開催されています。予選を免除された韓国、日本、北朝鮮と予選を突破した中国の4カ国により行われる総当たり方式のリーグ戦を行います。ベテランと若手を融合した新生なでしこジャパンがどのような戦いを見せるのか？最終戦は優勝をかけて韓国とぶつかりました。

格下の韓国に1-2の惨敗を喫したなでしこジャパン。優勝するには勝利して勝ち点3を奪うしかなく、佐々木監督はスタートから攻撃的な選手を多く起用してリスクを背負いました。日本のスタメンはGK海掘、DFは左から上尾野辺、熊谷、岩清水、中島、MFはボランチに宮間と阪口、FWは大儀見と岩淵という布陣。

特徴的なのは攻撃的MFの上尾野辺と中島を両サイドバックに起用したことです。ビルドアップに優れる両者をDFに起用したのは後方からのロングフィードに期待したのでしょう。日本はショートパスを細かく繋いで崩すのではなく、中盤を省略して2トップに縦パスを入れて速攻を狙いにいきました。

結果的にこの作戦は失敗に終わり、縦パスはトップに入る前に韓国のDFにカットされてカウンターを食らいました。中1日の強行日程の影響から、日本はコンディション不良で運動量が上がらず、最終ラインとトップの距離が間延びして中盤がガラ空きになり、両サイドをドリブルで崩されて再三ピンチを招きました。

韓国の2点は10番を背負うエースのチ・ソヨンによるもの。1点目はペナルティエリア手前で得たフリーキックを直接ゴール。右足から放たれたキックはDFの壁を綺麗に越えてゴール右隅に吸い込まれました。2点目は後半22分、右サイドを突破したクォン・ハンヌルが岩清水を振り切って中央にクロス。フリーのチ・ソヨンは1トラップから技ありの右足ボレーでゴールに突き刺しました。

チ・ソヨンは左サイドからドリブルでDF3人を1人で振り切るなど、個の力で局面を打開するシーンを何度も作りました。日本は縦を早く意識するあまり、ロングボールをFWに放り込んでは跳ね返される単調な攻撃に終始。選手間の距離が離れてショートパスは繋がらず、中盤にスペースが生まれてもドリブルで勝負する選手は皆無。攻撃にリズムを与える危険なプレーは見られませんでした。

コンディション不良で運動量が落ちたとき、選手間の距離が間延びしてショートパスが繋がらず、日本のパスサッカーは上手く機能しません。連戦が続く国際大会では、常にベストコンディションで戦える訳もなく、チーム状態によっては戦術を変える必要もあるでしょう。

この試合ではショートパスを封印し、あえて縦に速いサッカーを選択した実験的な狙いがあったと思います。1発のロングフィードでDFの競り合いに打ち勝つには、ワールドクラスのスピードとパワーを兼ね備えたFWが必要ですが、2トップの大儀見と岩淵にそれを求めるのは酷でした。

それならばパスサッカーに固執することなく、ドリブルを多用してDFを引き剥すプレーも有効です。大野忍や岩淵真奈はドリブルでDF2～3人を振り切る力が十分にあります。中盤に破壊力のあるドリブラーを配置し、両サイドバックに突破力のある鮫島彩や浜田遥を起用するなど、パス以外の選択肢を増やす必要があると思います。