ロンドンオリンピック開催日に先立ち、男子サッカーの試合が始まりました。今回は8月4日に行われた関塚ジャパンの決勝トーナメント第一戦。日本VSエジプトの試合を振り返ってみたいと思います!
メキシコ大会以来、44年ぶりのベスト4を狙う日本
勝てば1968年のメキシコ大会以来、44年ぶりのベスト4進出となる日本。大会前の下馬評では低い評価を与えられていた日本が、ここまで躍進することは誰もが予想しなかった意外なものです。関東地区におけるTV中継の瞬間最高視聴率は38.5%を記録するなど、この一戦に対する国民の関心度の高さが伺えます。
この試合、日本はスペイン戦で負傷した酒井宏樹が右サイドバックとして3試合ぶりに先発に戻っています。いつも通りの4-2-3-1というフォーメーションを組み、ベストメンバーで挑みました。対するエジプトはA代表で活躍するFWのモテアブなど、攻撃的なプレーヤーをオーバーエイジで補強してこの大会に挑んでいます。4-2-3-1のシステムを採用し、右サイドハーフのサラ―と右サイドバックのファティを中心に強烈なサイドアタックを武器にする非常に攻撃的なチームです。予選リーグではブラジルを相手に2得点を奪うなど、3試合で6得点を記録するという安定した攻撃力を見せています。
序盤から日本のカウンターアタックが機能する
ゲーム序盤、エジプトはディフェンスラインを押し上げ、両サイドバックが積極的にオーバーラップを見せるなど、攻撃的なサッカーを展開します。一方、日本はこれまで築き上げてきた戦術を忠実に守り、組織的な守備でボールを奪った後、速攻をしかけるカウンターサッカーに徹します。ワントップの永井が前線からボールを追い回してプレッシャーをかけると、2列目がその動きに連動して相手選手を囲い込み、ボールを奪って速攻に転じます。永井はディフェンスラインの裏に走りこみ、一本の縦パスを受けるとゴール前まで一気にドリブル。エジプトのDFは永井のスピードに全く対応できず、サイドから何度も突破を許してピンチを迎えます。
前半14分、前線にプレスをかけにいった清武がDFとの競り合いに勝ってボールを奪取。そのまま前を向いてボールを持つと、ファーサイドからペナルティエリアに飛び込んできた永井に向けて、鋭いカーブをかけたピンポイントのラストパスを送ります。ワントラップした永井はDFとキーパーをスピードで振り切ると、無人のゴールにボールを流し込んで先制点をゲット。
エジプトの強烈な右サイドアタックを防ぎ、3-0の完全勝利!
この後、永井が負傷退場したことをきっかけに、一時的にエジプトがペースをつかみます。右サイドのサラ―とファティの強烈なドリブル突破に左サイドバックの徳永が振り切られて再三ピンチを迎えますが、中央の吉田と鈴木が身体を張ったディフェンスを見せてゴールマウスに鍵をかけます。前半41分、途中出場した齋藤がペナルティエリア付近でドリブルをしかけると、サミルが後ろから齋藤を倒してしまいレッドカードで退場処分。10人になったエジプトは徐々にポゼッションを失い、後半は日本にボールを支配されます。
素早いパスワークと切れ味鋭いドリブルでサイドアタックをしかける日本。エジプトのDFはファールでしか動きを止めることができず、バイタルエリアで何度もフリーキックを与えてしまいます。後半33分、清武のフリーキックを吉田がダイビングヘッドでゴール左隅に流し込んで2点目をゲット。後半39分にもセットプレーから扇原のピンポイントクロスを中央の大津が頭で合わせて3点目。エジプトの息の根を止めます。このまま試合は終了し、日本は44年ぶりのオリンピックベスト4進出を決めました。
90分間走り続ける日本、ブレない戦術でゲームをリード
この試合を通じて日本のカウンターサッカーは完成されつつあるという印象を持ちました。相手がスペインだろうとエジプトだろうと対戦相手に関係なく、90分間を通してプレースタイルを変えない信念を感じます。4試合連続無失点という大記録を叩き出したことで、選手の自信はより深まったことでしょう。「守り切ればいつかは勝てる」「少ないチャンスを確実に決める」という意識がチーム全体に浸透しています。
トップから最終ラインまでが組織的に連動し、90分間集中力を切らすことなく走り続ける日本の全員守備。世界的に見てもこれほど運動量の多いチームは珍しく、どの対戦国も驚きを隠せない様子です。特にボランチでコンビを組む扇原と山口の動きが素晴らしく、ゴール前で守備のブロックを築いて危険なスペースをことごとく消し去り、カウンターを食らっても敵陣から長距離を走って戻り、体を張ったタックルで決定的なピンチを防ぎます。また、好機にはゴール前まで飛び出してミドルシュートを放つなど、驚異的な運動量で攻守に渡ってチームをサポートしています。
永井は誰にも止めらない、しかし永井の代わりは誰もいない
この試合で大会2ゴール目を決めた絶好調の永井ですが、彼のスピードを止められるチームは出てこないでしょう。「永井アタック」とも評される日本カウンター攻撃は、今や世界の脅威になっています。心配なのが怪我による次戦への影響です。今ところ出場は微妙な状態らしく、どの程度のパフォーマンスを発揮してくれるのか心配されるところです。ワントップとして攻守の要になっている永井ですが、彼の代役となる選手がいないのが日本の弱点です。永井がいなくなったとき、日本のカウンターサッカーをどう機能させるのか、今後の試合の行方を決める大きなポイントになるでしょう。
2アシストの清武、1アシストの扇原のセットプレーは武器
抜群の攻撃センスと精度の高いキックで攻撃の軸になっている清武ですが、彼は完全にこのチームのゲームメーカーだと言っていいでしょう。この試合も精度の高いパスを連発してディフェンスラインを切り裂き、2アシストの大活躍を見せました。ボランチの扇原の左足も絶好調で、高精度のクロスボールからビックチャンスを何度も作り出しています。優れたドリブラーの多い日本は、バイタルエリアでファールを貰ってフリーキックを得る機会が多いチームです。吉田や大津などセットプレーから高い得点力を発揮するプレーヤーがいるので、フリーキックは大きな見せ場となるでしょう。右足なら清武、左足なら扇原のセットプレーに期待したいと思います。
総括
まさかのベスト4に進出した日本。準決勝は44年前に銅メダルをかけて戦ったメキシコが相手です。これが偶然なのか神様のイタズラか・・・日本とメキシコは舞台をロンドンに変えて再びメダルを争うことになりました。勝てばメダル確定、負ければ3位決定戦となる究極のデスマッチが始まろうとしています。「堅守速攻」をキーワードにした日本がどこまで世界を驚かせてくれるのか?楽しみしています!
関連リンク
・【U-23日本代表・対戦レポート】 《ロンドン五輪》 全試合・リンク集
・【U-23日本代表・選手名鑑】 《プレースタイル》 全選手・リンク集
最終更新: