【島へ移住する】移住は歓迎されているか

shimanavi

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島へ移住・国の想い

 2012年06月、離島振興法が改正され、島への移住、定住促進を狙った「離島活性化交付金」が、新たに盛り込まれた。人口減少、過疎化の進む島々の現状をなんとか食い止めようという想いが伺える。 人口の減少が及ぼすであろう問題点は明白だ。国土交通調査室が発表した『離島振興の現況と課題』においては、

「離島地域は、我が国の領域、排他的経済水域の保全、海洋資源の利用、自然環境の保全等について重要な国家的役割を担うとともに、海岸等の自然との触れ合いを通じた癒しの空間の提供等の国家的役割を備えている。」

とし、人口減少が進むことで

「その重要な国家的役割を果たすことが困難となるおそれがある」

との見解を示している。離島は経済活動上の不利な点が多く、人々が生活を営むうえでは色々と不便であるが、だからと言ってこのまま人口減少が進んでしまうことは、国家的にもあってはならないことなのである。 そのため、今後各自治体が「離島活性化交付金」を活かした定住促進活動を進めていくと予想される。島暮らしの魅力を広く訴求し続けることで、移住ムードも高まってくるだろう。観光地として人気の島も多く、沖縄の島々や、世界自然遺産に指定されている屋久島や小笠原諸島は観光客が絶えず、リピーターも多い。こういった島ファンの中には、「条件さえ合致すればすぐにでも移住したい」という人は少なからずいるだろう。 

◇参考ページ◇

 『離島振興の現況と課題』
www.ndl.go.jp  

(国立国会図書館)

 【島へ移住する】記事一覧
potaru.com

島へ移住・石垣市の憂い ~幽霊市民~

 しかし、これから活発化しそうな雰囲気のにおう「移住ムード」とは裏腹に、クールな反応を示す自治体もある。既にその魅力が人々に知られ、移住者も多い石垣市だ。石垣市は、八重山諸島の中心に位置する、ご存知石垣島の自治体である。近くには西表島や竹富島、波照間島といった、個性的で自然的な魅力に満ちた島々があることから、ナイチャー、いわゆる本土の人々から絶大な人気を得ている。一方で石垣市は、島でありながら商店街(右写真)や大型スーパー、チェーン店も備え、空港等インフラ設備も充実していることから、内地と同程度の生活水準を維持できることが魅力である。それでいて、南国情緒たっぷりの風土を兼ね備えているものだから、人気が出ないわけがないのだ。 ところが、石垣市の財政は今一つ芳しくないと言う。国民年金をはじめとした税金の徴収率は低く、一方で公的資金における市の負担は大きい。背景には人口の10%にも及ぶ幽霊市民の存在がある。

 幽霊市民とは、住民票を移さずに石垣市で生活する移住者のことを指す。安宿の長期滞在者なども含めた、その日暮らしのナイチャーたちがそうである。石垣市というより、沖縄県全体に言えることであるが、沖縄では賃金が低いが、生活費もすこぶる安いのが特徴だ。県内のアルバイトなど、時給は安くて650円からだが、それでも仮に8時間働くと5200円稼ぐことが出来る。それに対し、県内には素泊まり専用の安宿、いわゆるドミトリーが過剰にふえており、本当に安いところであれば1泊1000円程度で済む。つまり、どれだけ低賃金であろうと、その日暮らしは十分に可能なのだ。また、女性ならナイトクラブやバーなど、いわゆる「夜の仕事」の求人も多く、内地ほどは稼げないにしても、沖縄であれば時給2000円前後とかなりの高待遇である。そんなナイチャーたちが島暮らしを満喫し、行政のサービスを受け続けていようと、住民票を移さない限り、税金を徴収されることは無い。結果として、税金を納めない移住者、幽霊市民が過剰に増える結果となってしまったのだ。 石垣市の人口の10%が幽霊市民と述べたが、2012年4月時点での人口はおよそ46,400人であるとされている。つまり5000人近くかそれ以上、幽霊市民が存在していると推測できるのだ。

(石垣島での宿泊。安ければ1泊1000円程度で済む。)

島へ移住・石垣市の憂い ~団塊の世代~

 その幽霊市民は一見すると若い世代が多い。事実、筆者が一人旅で八重山諸島を転々としていたころも、ドミトリーなどに長期滞在している移住者には20代~30代をよく見かけた。最近の若い者は・・・という声も聞こえてきそうだ。ところが、石垣市が抱える憂いの矛先は、団塊の世代にも及んでいる。 団塊の世代と言えば、近年になって職場からリタイアし「老後は南の島で・・・」と、やはり石垣島や竹富町の島々にこぞって移住する傾向があるようだ。今までの”稼ぎ”があるものだから、気軽に移住をしてくるのはある意味当然と言えるだろう。ところが、彼らは彼らで自治体にとってはコスト増となる。年々増加するであろう医療費に対する懸念、更には介護も必要になってくる世代なのだから、面倒を見なくてはならない。さらに石垣市として頭が痛いのは、彼らが、悪く言えばわがままであることだ。島には不便が付き物で石垣島も例外ではないが、彼らは事あるごとにインフラの整備を要求してくるのである。快適に過ごしたい気持ちは理解できるが、島と移住者との間で常識のズレがある点は否めない。

 石垣市は、ホームページ上にて移住者に向けた注意を促している。『石垣島で土地売買、住宅等建築を計画されている皆様へ(ご注意)』と題し、移住にまつわる問題点とお願いが掲載されているのだ。色々と書かれていてボリュームがあるが、簡単に言うと、移住者の「あれもこれも」というわがままに対し、ひたすら「できません」「規則は守ってください」と述べているのである。

◇参考ページ◇

 『石垣島で土地売買、住宅等建築を計画されている皆様へ(ご注意)』
www.city.ishigaki.okinawa.jp  

(石垣市公式HP)

移住は歓迎されているか

 述べてきことをまとめると、結果として若者から団塊の世代まで、誰も歓迎されてないようにすら見える。しかし、それは間違いだ。移住者もきちんとモラルを守り、市民としての役割を果たし、自然と共存する意識さえあれば、何も問題が無いのだ。ところが、石垣島のステレオタイプな魅力ばかりが先行し、後先や迷惑を考えない移住者が多い結果、石垣市も頭を悩ませているのである。 冒頭で述べたように、今後、移住、定住の促進活動が島々で活発化していくと予想される。島外者へ島の魅力が伝わり、移住者が増えたとしても、移住者に対してルールを遵守する意識をしっかりと植えつけなければ、第二、第三の石垣市が生まれる恐れもあるだろう。今現在にしても移住を歓迎する島は多い。法改正を見てもわかるように、何より国家として、島の人口減少を食い止めなければならないという使命がある。しかし、わがままな移住者を増やしてしまった場合、石垣市を見てもわかるように、自治体として対処しきれるかは怪しいのも現状だ。今後の舵取りが注目される。

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