黄金の国ジパングは温泉の国
金。原子番号79。元素記号はAu。比重は19.3。あらゆる金属の中で最も溶けにくく(イオン化しにくい。他と反応しにくい)、それゆえに「永遠の輝き」と称されてきた金。これまでに人類が採掘し、精製してきた金をすべて足し合わせても、オリンピックプール3杯分にしかならないという希少な金属です。
しかし、ちょっと意外なことに金は地球の地殻の中に広く分布していて、1トン当たり平均0.003グラムは存在しているのだとか。その辺に転がっている石ころの中にでも、ごくごくわずかな金が存在しているかもしれないのです。もちろん、ビジネスベースで金を採掘するためには、もっと大量に金が含まれる「ヤマ」を掘り当てなければ話になりません。世界の主要金鉱山では、1トン中に含まれる平均金量は3~5グラム。地球全体での平均値より1000倍ほど金が濃縮されたところが金鉱山ということになります(日本の菱刈鉱山は世界的にも高品位で平均金量が約40グラムです)。
地殻の中に広く分布する金が、どうやって濃縮されていくのかというと、多くの場合は熱水鉱床、つまりは温泉の働きです。ほとんど溶けない金ですが、マグマが地殻を貫く時にできる割れ目に流れ込んだ高温の地下水などには、わずかながら溶け込みます。岩盤の割れ目を伝わって地表近くまで上がって来た地下水(金を含む)が冷える時、中に溶けた金が少しずつ固まって、金の鉱脈ができていくのです。つまり温泉は、地中深い場所に眠っていた金を、地上に運んでくれる運搬役として働いているのです。
温泉がある場所のすべてに金鉱脈があるというわけではありませんが、金山があるところに温泉有り、とは言えるようです。有名な佐渡金山にも、戦国時代から金がたくさん採れた伊豆半島にも、それから高品位な金鉱山である菱刈鉱山にも、豊かな温泉が湧き出しています。日本が温泉大国であることは言うまでもありません。かつて黄金の国と呼ばれた理由も、そこれ辺にあるのかも。温泉につかってのんびりリフレッシュしながら、地球の営みに思いをはせてみるのも楽しいですよ。
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