ミツバチが世界で生産される全作物の3分の1以上で受粉を行い、75%について生産性を高めていると言われています。国際連合環境計画(UNEP)の発表した報告書では「ミツバチをはじめとする花粉媒介昆虫が減少すると、世界的な食糧危機を招く」とも警告されているようです。
地球の生態系の中で重要な役割を担っているミツバチが絶滅危機とはどういうことでしょうか。
蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん)って?
1990年代からヨーロッパ諸国でミツバチの大量死が報告されるようになりました。
2007年春までに、北半球のハチの4分の1がすでに消えたと言われています。日本でも2008年から2009年にかけてミツバチが不足しているという報道がありました。
世界中で起こっている蜂群崩壊症候群(以下、CCD)と呼ばれるこの現象。日本では「いないいない病」と呼ぶこともあるそうです。特徴は、以下の通り。
1. 巣に働きバチがほとんど残っていない
2. 死骸がみつからない
3. 巣には多数の蛹(さなぎ)が残っている
4. 巣には貯蜜や貯花粉が残っている
5. 多くの場合巣に女王バチが残っている
この現象の原因は諸説がありますが、直接的な原因として証拠が見つかっているのが、ネオニコチノイド系農薬です。
ネオニコチノイド系農薬って?
ネオニコチノイド系農薬は、一般に使用されている殺虫剤の一種です。タバコの有害成分ニコチンに似ているのでネオニコチノイド(新しいニコチン様物質)という名前が付いています。
ネオニコチノイドは1990年頃開発され、1回の散布で作物に浸透し残留するため、効率の良さから日本では使用量は年々増加しています。また神経毒性が強いという特徴もあります。
ネオニコチノイド系農薬は稲などの作物、私たちが日常的に口にする野菜、果物等に幅広く散布されています。また私たちの生活の中でも、殺虫剤、ゴキブリ、コバエ、シロアリ、ペットのダニやノミ駆除剤として日常的に使われています。最近の住宅にも断熱材や建材、接着剤、合板にも防虫剤の材料として使用されています。
害虫に効果絶大なネオニコチノイドですが、人間には影響はないのでしょうか。
ネオニコチノイドの人体への影響は?
食品中に残留する農薬などが人の健康に害を及ぼすことのないよう、厚生労働省は全ての農薬について残留基準を設定しています。しかしこの基準値は米国やEUと比較すると大変規制が緩いものとなっています。
ネオニコチノイド系農薬のうち、アセタミプリドを例にすると、作物によってはEUより数百倍も高い数値となっています。また現在海外ではネオニコチノイド系農薬の使用禁止や使用制限、残留基準の引き下げなどの規制強化を進めていますが、日本はなぜか残留基準の緩和という世界と逆行した道を進んでいます。
ネオニコチノイドは浸透性があるため農作物に行き渡り、内部から殺虫効果をもち続けます。植物内部に浸透し、洗っても落とすことはできません。また殺虫剤にも使われることから毒性が強いため、ネオニコチノイドが人の健康に影響を与えているという医師からの報告があるようです。
国有林への有人ヘリコプターによるネオニコチノイド系農薬の空中散布も問題となっています。農薬の空中散布が、登校途中の子どもや保育園児にも被害を及ぼしているというのです。農薬をあびた子どもたちには、頭痛や吐き気、目のかゆみを訴えるだけでなく、激しく動き回ったりする異常行動の報告もあるそうです。
長野県や島根県などでは、これら農薬の空中散布が、住民や子どもたちの健康被害まで引き起こしているとして、中止を求めて行動しています。
子どもへの影響も
2010年、アメリカのハーバード大学などの研究チームが、有機リン系の農薬を低濃度でも摂取した子供はADHDになりやすいことを小児学会誌に発表しました。2012年にはアメリカの小児科学会が、農薬曝露による小児がん、認識機能の低下、行動障害、および発達障害などの危険性について、公式見解を発表しました。
また農薬と発達障害の関係について興味深い統計があります。各国の「単位面積当たりの農薬使用量」と「自閉症などの発達障害の有病率」に強い相関関係が見られるようです。単位当たりの農薬使用量は世界で圧倒的に日本と韓国が高い数値となっています。それに相関して発達障害の有病率も圧倒的に日本と韓国が高い数値となっています(下記リンク参照)。
こちらの統計を見て以前読んだ書籍で発達障害の子供には無農薬の野菜を食べさせるようにしましょう。と書かれていたのを思い出しました。
国は農薬の日本の残留基準の安全性を主張していますが、これらの発表や見解、統計を見ると、どうも不安が拭えません。特に妊娠する可能性のある女性や子供は、できる限り無農薬の野菜や果物を食べる、また家庭での殺虫剤の使用も避けるべきだと個人的には思います。
ネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響
CCDの特徴をもう一度見てみましょう。
1. 巣に働きバチがほとんど残っていない
2. 死骸がみつからない
3. 巣には多数の蛹(さなぎ)が残っている
4. 巣には貯蜜や貯花粉が残っている
5. 多くの場合巣に女王バチが残っている
ネオニコチノイド系農薬は神経毒性が非常に強い農薬です。この農薬で脳に刺激を受けた働きバチは、ネオニコチノイドにより方向感覚と帰巣本能が狂い巣に戻れなくなりCCDに繋がったのではないかと考えられます。
またネオニコチノイドに汚染された貯蜜や貯花粉を食料としたミツバチの幼虫は脳が正常に発達せず、人間でいう発達障害が生じ帰巣本能が働かなくなってしまったためCCDの原因となったと推測できます。
国は下記の通り日本のミツバチ現象はCCDが原因ではなく、欧米とは農薬の散布方法が異なるため、ネオニコチノイドの使用制限の必要はないとの見解を示しています。
A2.
我が国では、2008年、一部の地域で花粉交配に使用する蜜蜂が不足しましたが、これは「蜂群崩壊症候群」(CCD)によるものではありません。
A8.
我が国では、欧米のように農薬の粉塵が広範囲に巻き上がるような方法では播種していないため、種子処理や土壌処理への使用の制限は不要です。
しかし、以前から日本でもネオニコチノイド系農薬がミツバチ減少の要因ではないかと訴える声が上がっているだけでなく、日本各地の蜂蜜やミツバチ、さなぎが、ネオニコチノイド系農薬に広く汚染されているとの調査結果も出ており、国の姿勢にも問題があるように感じてしまいます。
ミツバチを守るために
私たちの大切な食を支えてくれているミツバチを守るために、何か自分たちができることはないでしょうか。
食の安全よりも生産性重視、利益重視の日本では、ネオニコチノイド系農薬の使用を制限するのは難しいかもしれません。
個人で出来ることは「草花との共存」ではないでしょうか。昔は自宅の敷地に当たり前のように生えていた草花も、最近では雑草が生えるのを敬遠して敷地全体にコンクリートを張ったり、防草シートや除草剤で草花がほとんど見られない家がたくさん建っています。どんどんミツバチの居場所が少なくなっています。
自宅の敷地内に多少の雑草が生えていても、それは自然なこと。あまり気にせず雑草花に寄って来るミツバチを感謝の気持ちで見守ってあげることも必要ではないでしょうか?
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