なんとえびす様に出会ってしまった。
えびす様が鎮座されているのは国道45号線の沿線。ほぼ直線の道路が少しカーブした先に赤いガソリンスタンドの看板が見えるくらいだから、ここは引きちぎられた道路案内表示のポールから東に1kmちょい走った場所。
そしてこの場所は、コンクリート殻が積み上げられた工事現場。
写真では分かりにくいかもしれないが、それぞれが1辺1m以上もある巨大なコンクリート殻の山の前に、えびす様は鎮座されている。
そしてこの道は、大型ダンプが走り回る道。
こんな写真を見ると、「えびす様、危ない!」と思わず叫びそうになったりもする。
そしてこの場所は、津波で浸水した地域のちょうど真ん中あたり。
そんな場所で、震災から6年になろうかといういまも、コンクリート殻を粉砕撤去するという作業が行われている。4年くらい前にはこの手の作業をよく見かけたものだ。被災した市役所旧庁舎近くでは、コンクリートを破砕して鉄筋とコンクリートを分別する作業が延々と行われていた。しかしそれは、かさ上げ工事がまだ本格化する前のこと。震災6年のいまも、同じ種類の作業が続けられていることに驚きを覚えた。被災した建物や道路設備の撤去は、かくもとてつもない作業だったわけだ。
何台もの重機が寄ってたかって、コンクリート殻やアスファルト殻の処理を行っている。車体が傾いている重機は、車重を掛けながらブレイカーでコンクリートを割る作業を行っている最中だ。
損傷しながらも笑顔を絶やさぬえびす様
工事が休みの日曜日、えびす様に近づくことができた。
バリケードが設置されていない、安全な場所から現場に近づく。コンクリートの破片は、近くで見ると想像以上に大きかった。
そして、作業の過程で仕分けられたのだろうか、コンクリートやアスファルト以外の素材の残骸が集められた一角には、名前を判読できる水彩絵の具のパレットも落ちていた。復興工事の進捗によって、被災した物、被災物を目にすることは少なくなったが、6年前の出来事を物語るたいせつな遺物はいまもなお残されている。
えびす様はモルタル製のようだった。もしも石造ならたいへんな逸品ということになるだろう。左脇にはちょっとひょうきんな表情の鯛を抱えている。竿を持っていたはずの右手は割れている。ところどころ顔にも損傷がある。それでもえびす様は笑っている。
えびす様は国道45号線、そして大きな第二線堤、堤防に隠されてはいるものの海の方を向けて置かれていた。
コンクリート殻に紛れてこの場所に運ばれてきたのを見つけた作業員が、がれきの山の中から引き出して、この場所に置いたのは間違いない。これだけの大きさだから重量も相当だ。大切に大切に動かした様子が目に浮かぶ。
復興工事の進展のために、被災した都市の残骸を破砕する作業の中から救い出し、道路から見える場所に、あるいはえびす様から海の方が見えるように、たいせつに設置するような、そんな作業員たちがいまこのまちの現場を担っていることがシンプルにうれしかった。
漁業の神様であり、商売繁盛の神様である福の神、えびす様。
えびす様の笑顔の意味が少し分かるような気がする。
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