68年ぶりのスーパームーン、全国的には曇りがちでなかなか見えなかったらしいが、三陸沿岸ではけっこうよく見ることができた。
もっとも小さく見えた時よりも面積で3割増の満月ということで、少し前から話題になっていたが、地震との関係を心配する声もあった。
そんな矢先の11月11日、熊本で震度4の地震が発生。その日は陸前高田にいたのだが、「熊本で震度4の地震だって」と、遠い九州の被災地を心配する言葉があちこちで聞かれた。
その翌朝、12日の早朝には岩手県南部から宮城県の沿岸部にかけての広い範囲で震度4の地震。ゴゴゴという地鳴りに続いて、かなり長い時間揺れが続いた。揺れそのものはそれほどではなかったものの、体感で1分ほども続いた揺れの長さに、多くの人が津波は大丈夫かとテレビやスマホで情報を確認したという。
「地鳴りは久しぶりだったので驚いた」
地元のFMラジオのニュースでも住民のそんな声が取り上げられていた。東日本大震災とその後長く続いた余震では、揺れに先立って地鳴りがすることが多かったので、人々の記憶の中で地震の恐怖と地鳴りはつながっているのかもしれない。熊本での震度4の前日に宮城県沖で発生した最大震度2の地震でもかすかに地鳴りを感じたという人がいた。
表立って何かの動きが出ているわけではないが、このところ東北の被災地の人たちの間で地震を心配する意識が広がっているように感じる。熊本で地震が起きる。地鳴りを感じるような地震が自分の足下で起きる。ニュージーランドでは死者がでるような大きな地震もあった。そしてスーパームーン。いつもと違う出来事を、何かの予兆のように感じてしまう意識が働いてしまう。事件や事故まで結びつけてしまいそうになる。
熊本の人たちは大丈夫だろうか。地震の恐怖がよみがえって辛い思いをしているのではないか。そんな思いは、東北の被災地の人たちにとって自分自身のことでもある。ひとごとではない。
スーパームーンが見られた14日、いつもより大きな満月に向かって財布を振っている人もたくさんいた。スーパームーンに財布を振れば金運が良くなるという話をメディアが流していたからだ。自分も振った。友だちも振った。「お金持ちになれたらいいね」「だけど、今夜どれだけの人が月に財布を振っているんだろうね」「あんまり大勢いるとお月さんも対応しきれないかもよ」
月を見上げる友人たちは笑顔だった。ふだんより明るい月が不安と希望を浮き彫りにしていた。
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