気仙沼でラーメンなら、漁火ごだいの「海鮮塩」

iRyota25

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ホタテ、カキ、エビ、イカ、ワカメ、メカブにノリにフノリ。気仙沼の海の幸がふんだんに盛り込まれた海鮮塩ラーメンは、潮風香る豊かな気仙沼の海そのものだ。

気仙沼から太平洋に突き出す唐桑半島はカキ養殖のメッカ。カキのみならず、ホタテやワカメの養殖も盛んな上、暖流と寒流がぶつかり合う海の幸の宝庫。さらに巨釜、半造など圧倒的な海岸美を誇る景勝地にも恵まれている。

唐桑半島の真ん中辺り、太平洋と気仙沼湾の両方を見渡すことが出来る高台に漁火パークがある。震災以前から自然美を生かした公園として整備されてきた場所だ。

県道からギヤをセカンドに入れても息つくほどの急坂を登り詰めると、漁火パークの広い駐車場だ。景色はまさに絶景。しかし駐車場はガランガラン。乗って来た車の他には3台ほどしかいない。絶景とあまりに広々とした駐車場。そのコントラストが、震災後の観光客の減少を物語る。

駐車場にたつレストハウスには「漁火ごだい」との看板が掲げられている。ごだいは気仙沼で有名なラーメン&料理店(とくにみそラーメンやフカヒレ料理が有名)。漁火ごだいはそこから暖簾分けされたお店だと聞いた。レストハウスを入ると、こんな手書きの新聞が目に入ったのだ。

海鮮塩ラーメン(細めん)が出来ました。

ここ唐桑の海で採れた海の幸(カキ、ワカメ、ふのり)をたくさん入れたラーメンです。

海の恵みをどんぶりいっぱいに泳がせたラーメンは塩味ベースで食材の味を引き立たせています。

せっかく唐桑に来たのに食べないで帰るのはもったいない!

唐桑の海の香りがするかもしれません。

今夏、ご賞味下さい。

漁火ごだいの入口に掲載された手書きの「ラーメン新聞」より

小学生の手になると思しき新聞には、可愛らしいイラストもちりばめられている。最初からここでお昼を食べて行くつもりだったが、この新聞を見て注文も決まった。食べずに帰るのはもったいないという「海鮮塩」をぜひ食べてみたい!

漁火ごだいの店内からも海が見渡せる。目の前に広がるのは太平洋と広田湾。三陸地方の夏特有のやませのせいか、空には薄雲が広がっていたが、これがピーカンなら景色だけで満腹になるくらいの絶景に間違いない。

しかし店内にお客の姿はない。駐車場の車は店員さんのものだったのだろうか…などと寂しく考えていたら漁火ごだいおススメの海鮮塩ラーメンが運ばれてきた。

太平洋の絶景と、海の幸が泳ぐラーメン。立ちのぼる湯気とともに確かに潮の香りがしてくる。期待が高まる。

しかし、あらためて丼を見つめて思わずにいられないのはこのボリュームだ。割り箸はごく当たり前のサイズの物。むしろ少し大きめかもしれないのだが、それより丼の直径の方が大きい。顔がすっぽり入ってしまうほどの器から、海の香りのする湯気が勢いよく立ちのぼるのだ。

これが美味しくないワケがない。そしてもちろん美味しかったのだ。しかし残念なのは、食してみてはじめて、この海鮮塩の美味さを表現する言葉を自分が持ち合わせていないことに気づかされてしまったことだ。

ホタテもワカメもフノリも、個々の食材はそれぞれにそれぞれの味わいを醸し出している。しかし、ホタテとフノリ、カキとメカブといった感じで、魚介と海藻を一緒に食べることで独特のハーモニーを奏でてくれることを今日はじめて知った。

それも、組み合わせ次第で味も香りも変化するのだ。出来ることなら、ワカメとメカブとフノリに組み合わせるために魚介はそれぞれ3つずつ入っていてもいい。でもそんなことになったら、ラーメン丼はさらに巨大化し、とてもじゃないが食べきれない量なのは間違いない。

それぞれに収穫期も異なる食材を、いつでもラーメンとして提供できるように下ごしらえしておくことが、常人の想像を超えた困難であることは間違いない。そのことは陸前高田のホタワカ膳で教えられた後だったから、これだけの食材を取り揃える料理人のご苦労は推して知るべしどころの話ではない。それだけの「おもてなしの気持ち」と、料理人の求めに応じて余りある海の豊かさに対峙するだけの胃袋を自分は持ち合わせていない。それが悔しくてならなかったのだ。

美味しいのに泣きたくなるのか、美味しすぎて泣きたくなったのか分からぬままスープまで完食した。美味い。もっと食べたい。それでも立ち向かえぬ無力感。

オーバーな言い方ではなく、食事は人生を教えてくれる。眼下に広がる広大な海に比べて自分がいかにちっぽけな者なのかを教えてくれた「海鮮塩」。東北のベストグルメのひとつであることは間違いない。

半泣きで店を出ると、心臓破りの坂道を何台もの車が続々と登ってくるのが目に入った。時刻は正午をまわっていた。セカンドギアでも息つくほどの急坂が立ちはだかっていようとも、人は美味しいものを愛し求めてやってくるのだ。

悔しさは潮風に少しばかり吹き飛ばされて、美味いものを腹一杯食べた後の満足感が広がっていった。

※ 漁火パークの駐車場の西には早馬神社が鎮座する早馬山がある。かつてはここに坂道を駆け下る遊具もあったが廃れて久しいようだ。山の登り口には仮設住宅が何棟かたてられていた。

漁火ごだい

宮城県気仙沼市唐桑町北中98-18 漁火パーク

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