青い海と白い砂浜が陸前高田に戻ってきた。
「なつかしいわ〜」
寄せてくる波と戯れるように浜辺を行き来しながら写真の女性はつぶやいた。
「サンダルで来ればよかったわ」
8月6日午前、陸前高田の防潮堤工事現場で開催された住民のための見学会での一こま。
ヘルメット着用のビーチってのも変な話だが、今日は工事現場の見学会。普段は工事車両が行き来して、一般の立ち入りができない特別な場所。約40人の参加者は、ほぼ完成した第二線堤とよばれる高さ12.5mの防潮堤や、砂浜再生の現場、気仙川河口の水門などで、工事の進捗について県の担当者などから説明を受けた。
再生が進められている砂浜は、松原再生のための盛り土が仮置された山の向こう側。工事現場に入らなければ目にすることのできない場所。
巨大な重機が並ぶその先に、長さわずかに200mの砂浜が再生されていた。
再生工事はまだ試験段階。陸前高田の前海である広田湾は非常に波が高い海なので、砂浜再生の成果を検証しながら今後の工事が進められていくのだという。工事を担当する職員(大阪府からの派遣)は、先週の水曜日に完成したばかりの浜辺でカニを見つけたのが嬉しかったと説明の中で話した。
まだ試験段階、わずか200mの砂浜。まだ松林の植栽は始まっていない。それでも地元の人たちは砂浜が戻ってきたことを心から喜んでいる。冒頭の写真の女性は、子どもの頃の松原の思い出を話してくれた。
「うちは高台だったから、松原まで自転車で来てたの。帰りは妹は自転車の後ろに乗せて私が自転車をこぐ。すると弟がずるいって言うのよね。自分も乗りたいって」
松原にはたくさんの人たちのたくさんの思い出がある。
たとえヘルメット着用の砂浜でも、白い砂と青い海が呼び覚ますものがある。
参加者はガラスの小瓶に浜辺の砂を入れて記念に持ち帰った。瓶に詰めて持ち帰ったのは、まだ松も生えていないわずか200mの浜辺の砂だけではないのかもしれない。
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