山田町の45号線のコンビニに入ったら、そこはまさに新しい街並みが生まれようとしている場所。仮設とか本設という言葉の代わりに、最近ではコンテンポラリーとパーマネントという言葉を聞くことがよくあるが、この商店街はまさにパーマネントな施設として誕生したものだった。
テンポラリーな商店街を見慣れてしまった目に、おしゃれな歩道の敷石や植え込みが眩しく感じられる。大きな石のベンチも好ましい。
まだ建設途中のお店もあったが、新しい街が生まれるワクワクした気持ちが看板から伝わってくるようだ。
コンビニから続く敷石の街並みの北側には、さらに別の商店街も生まれつつある。パーマネントな店舗建設だから、工事や設備関連の業者さんの車がひっきりなしに出入りする。商店街のグランドオープンに向けて大忙しなのだろう。
この五篤丸水産さんの窓ガラスの貼り紙が猛烈な吸引力で目を引いた。
「い・か・の・し・ま・す」
お隣の宮古市のお祭りで、町の老舗の魚屋さんが店の軒先でのしてくれたイカを食べたあの味がよみがえってきた。のしイカというのは炙ったスルメを鉄製のローラーで薄く伸ばしたもの。イカの香りがほんわか口の中に広がる。しかも薄く伸して柔らかいからお子様、お年寄りにも食べやすい。干したスルメの食べ方としては最上級に違いない。
その美味しいイカをどーんと宣伝しているわけだ。
さらに店頭には「いかのします」の幟旗。なんと「イカの持ち込みOK」とまで!
さすが山田町、さすが水産の町!
ちなみに五篤丸水産は、山田町で被災した5軒の水産加工業者が共同で立ち上げた店。イカはもちろん、活きたホタテが泳ぐ姿が見られるなど、地元はもちろん観光客にも大人気だ。この一帯の集客のコアとなることは間違いないだろう。
そしてこの商店街のオープンは、きっと海好きな町の人たちをいっそう元気づけることだろう。
とはいえ、この場所、津波浸水区域である。国道45号線沿いの浸水区間の中ではほぼ真ん中あたり。つまり、道沿いに逃げても逃げきれない。(もちろん山に向かって逃げてください)
そんな場所ではあるが、商店街は西に御蔵山に面している。さらに役場近くの高台までは5分もかからない。
山田町は海と水産業の町。だから海辺の暮らしを止めてしまうことはできない。津波被災地の住宅などが移転する高台は造成工事が進んでいるが、海に近いエリアにも集いの空間は不可欠だ。
海岸線から100メートルほどの場所に生まれた、山田町の新しい商店街。笑顔と賑わいがあふれる場所になってほしい。そしてそんな場所だからこそ、おそらく防災の意識が次世代へと引き継がれていく拠点になってくれることを祈る。
山田町中央町の商店街
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