福島第一原発敷地南側のモニタリングポストで放射能上昇の警報が発生。その後の東京電力の対応は…

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福島第一原子力発電所構内でのモニタリングポスト計測状況
福島第一原子力発電所構内でのモニタリングポスト計測状況

1月13日の日報「放射能を含む塵の警報発生」

※1月13日午後0時39分、福島第一原子力発電所敷地境界付近のモニタリングポストNo.7近傍(敷地南側)に設置しているダストモニタにおいて、ダスト放射能濃度の上昇を示す「高警報(警報設定値:1.0×10-5Bq/cm3)」が発生。その後、同日午後2時6分、当該モニタの「高警報」が復帰しており、警報発生前の値に戻ったことを確認。
当該モニタリングポスト以外の発電所構内のダストモニタおよびモニタリングポストの指示値に有意な変動はない。同日午後0時40分時点の風向および風速は以下の通り。
<風向:南南東、風速:4.3m/s>
なお、風向については、同日午前11時20分から南南東であり、発電所方向に向かって吹いていたものであることを確認。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成28年1月13日

空気中を漂うダストの放射能を測定しているダストモニタで「高」警報が発生。これは由々しき事態だ。警報の設定値である「1.0×10-5Bq/cm3」は、1リットルあたり1.0×10-2Bqになる。安静時に人間は1分間あたり約7.5リットルの空気を吸っているとされるので計算上は、1.0×10-5Bq/cm3の空気を13分20秒ほど呼吸すると、1ベクレル(Bq)の放射性物質を取り込んで内部被曝することになる。1日8時間この場所で過ごせば36ベクレル。1週間5日間過ごせば180ベクレル内部被曝する計算になる。(ベクレルは1秒間に崩壊する原子の数を示す単位で、1ベクレルは1秒間に1つの原子核が崩壊し放射線を出すことを意味している)

この時点でモニタリングポストの故障は報告されていない。東京電力は風向きが「原発の外から内側」だったと構内の外からのダストであるかのように示唆しているが、風向きは非常に変動しやすいものだ。どこから飛来してきたものであれ、ダスト放射能濃度の上昇が起きたのは事実と考えねばならない。

 2016年1月13日 今日の東電プレスリリース
potaru.com

1月14日の日報のお粗末

翌14日の日報で東京電力は次のように指摘した。

当該ダストモニタの「高警報」が発生した原因について、自然条件や構内外の作業状況を確認した結果、今回のダストの上昇は、以下のことから発電所構内の作業に伴うダストの放出ではなく、発電所南側に位置する道路をダンプが通過したことにより路面の砂塵が舞い上がり、MP7近傍のダストが局所的に上昇し、それをダストモニタが検知した可能性が高いと考えている。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成28年1月14日

その根拠として掲げられたのが以下の7項目。この弁明はかなり驚きの内容。強いて言うなら歴史に残すべきほどトンデモな言い分だ。

(1)1号機原子炉建屋カバー解体工事においては工事エリアに設置したダストモニタに有意な上昇がなかった。
(2)2号機、3号機がれき撤去関連の作業においても作業に伴うダストの上昇はなかった。
(3)フランジタンク解体作業についても当該時間にダストの舞い上がる作業はしておらず、かつ作業中にダストの上昇がなかった。
(4)構内に設置した10か所の連続ダストモニタの指示値にも有意な変動はなかった。
(5)MP7を含む8か所のMP指示値及び当該ダストモニタ以外の敷地境界のダストモニタ指示値に有意な変動はなかった。
(6)MP7近傍のダストモニタの指示値が上昇する約1時間前から南東又は南南東の風約5mが吹いている状態であり、発電所敷地外から発電所に向かって風が吹いていた。
(7)MP7近傍をダストが上昇した時刻頃にダンプが3台通過していた。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成28年1月14日

いずれもせいぜい蓋然性を示す程度で、東京電力の主張は根拠が薄弱だ。1号機、2号機、3号機、フランジタンク解体、構内のダストモニタに有意な上昇がなかったからといって、構内起因のダストであることを否定する材料にはならない。まして、「ウチはちゃんと調べても出てこないんだから、よそ誰かの仕業に違いない」と決めつけているようにも見える。まるで小学校低学年の帰りの会のやり取りを見ているようだ。

ダンプのせいだと言うのであれば、ダンプが巻き上げていた砂塵をサンプル採取でもしないかぎり、東京電力の説が空想の域を脱することは不可能だ。

少々意地悪な気もするが、東京電力が(1)から(7)まで列挙した文章の末尾に、それぞれ「もん」という間投助詞をつけるてみると、東京電力の思いが伝わってくるように感じられるのだが、いかがだろうか。

「モニタに有意な上昇がなかったもん」
「ダストの上昇はなかったもん」
「有意な変動はなかったもん」
「敷地外から発電所に向かって風が吹いていたもん」(風向はしばしば変わる)
「ダストが上昇した時刻頃にダンプが3台通過していたもん」

ああ、要するに東京電力は言い訳をしていたのである(以下妄想)。だってこんなことで作業を中断したりしたくないんだもん。漁協や地元が態度を硬化させて海への排水ができなくなったらお手上げになっちゃうんだもん。ダスト飛散を防ぐための大規模な施設なんて作りたくないんだもん。……なんだもん。……なんだもん。……なんだもん。

放射能ダストの出処がどこであれ、モニタが検知し警報が発生したのは事実だ。しかし東京電力がとった対応は、原発構内に由来するものではないという言い訳。何ともお粗末な対応としか言いようがない。

それに、仮に、東京電力の主張どおり、ダンプが巻き上げた砂塵が放射能のオリジンだったとして、その砂塵の放射能汚染はいったい何に由来するのか。間違いなく東京電力福島第一原子力発電所の爆発等の事故によるものだ。とすれば、敷地の内側外側で線を引いて、敷地内での作業から発生したものではないのだからと強調することに何の意味があるのか。

むしろ、ダンプが走るだけで警報が発生するほどの汚染が、原発敷地の近くに今もあることこそが問題なのではないか。風が吹けば放射能の塵が飛びかねない状況は、現に存在するのである。東京電力は言い訳に力を入れる前に、放射能汚染の発生元としてやるべきことがあるはずだ。

お粗末で愚かしい言い訳のせいで明示的に示されたフォールアウト(降下物・死の灰)の存在。2020年のオリンピックにも、海外からの観光客誘致にも大きな影響を及ぼす問題なのは間違いない。二次汚染、三次汚染を防ぎつつ的確な方法で除染が行われなければならないだろう。まさかこの期に及んで、フォールアウトは「無主物」などと主張するような当事者企業があれば、間違いなく人類の良心が許さないであろう。

 2016年1月14日 今日の東電プレスリリース
potaru.com

1月17日。敷地外の土埃・土砂の分析結果(続報)

1月17日の日報で、続報として敷地外の土埃・土砂の分析結果が知らされた。

MP7近傍の道路等の砂塵(土埃)について分析したところ、セシウム134およびセシウム137が検出された(それ以外の核種は検出限界値未満)。
<分析結果>
(1)発電所構外MP7近傍道路路面砂塵(土埃)
 ・セシウム134:4.7×10^5Bq/kg
 ・セシウム137:2.1×10^6Bq/kg
(2)発電所構外MP7近傍道路法面土砂
 ・セシウム134:1.9×10^4Bq/kg
 ・セシウム137:8.9×10^4Bq/kg

上記の調査結果から、当該ダストモニタ「高警報」が発生した原因は、発電所構内の作業に伴うものではなく、発電所構外(南側)に位置する道路をダンプが通過した際に砂塵が舞い上がり、局所的に上昇したダストをMP7近傍のダストモニタが検知したものと推定。なお、当該道路の砂塵(土埃)の除去等について、今後検討していく。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成28年1月17日

発電所構内の作業に伴うものかどうかにこだわる姿勢は変わらない。モニタリングポスト近傍の土埃・土砂の分析結果を整数で表記すると、

(1)発電所構外MP7近傍道路路面砂塵(土埃)
 ・セシウム134:470,000Bq/kg
 ・セシウム137:2,100,000Bq/kg
(2)発電所構外MP7近傍道路法面土砂
 ・セシウム134:19,000Bq/kg
 ・セシウム137:89,000Bq/kg

かなりの高濃度であることが分かる。構内での作業であるかどうかには関わらず、原発敷地周辺からは同様の汚染物質が拡散する危険がまだ残されているということだ。東京電力が日報で「当該道路の砂塵(土埃)の除去等について、今後検討」としたところには希望が感じられた。

 福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成28年1月17日
www.tepco.co.jp  

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