1月14日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
【これでいいのか?】福島第一原発敷地南側のモニタリングポストでダスト放射能濃度上昇を示す高警報の続報。東京電力は発電所構内の作業に伴うダスト放出を強く否定。発電所の外を走ったダンプが巻き上げた土埃によるものと強弁
※1月13日午後0時39分、福島第一原子力発電所敷地境界付近のモニタリングポストNo.7(以下MP7)近傍(敷地南側)に設置しているダストモニタにおいて、ダスト放射能濃度の上昇を示す「高警報(警報設定値:1.0×10-5Bq/cm3)」が発生。その後、同日午後2時6分、当該モニタの「高警報」が復帰しており、警報発生前の値に戻ったことを確認。
当該モニタリングポスト以外の発電所構内のダストモニタおよびモニタリングポストの指示値に有意な変動はない。同日午後0時40分時点の風向および風速は以下の通り。
<風向:南南東、風速:4.3m/s>
なお、風向については、同日午前11時20分から南南東であり、発電所方向に向かって吹いていたものであることを確認。(既出)
当該ダストモニタの「高警報」が発生した原因について、自然条件や構内外の作業状況を確認した結果、今回のダストの上昇は、以下のことから発電所構内の作業に伴うダストの放出ではなく、発電所南側に位置する道路をダンプが通過したことにより路面の砂塵が舞い上がり、MP7近傍のダストが局所的に上昇し、それをダストモニタが検知した可能性が高いと考えている。
(1)1号機原子炉建屋カバー解体工事においては工事エリアに設置したダストモニタに有意な上昇がなかった。
(2)2号機、3号機がれき撤去関連の作業においても作業に伴うダストの上昇はなかった。
(3)フランジタンク解体作業についても当該時間にダストの舞い上がる作業はしておらず、かつ作業中にダストの上昇がなかった。
(4)構内に設置した10か所の連続ダストモニタの指示値にも有意な変動はなかった。
(5)MP7を含む8か所のMP指示値及び当該ダストモニタ以外の敷地境界のダストモニタ指示値に有意な変動はなかった。
(6)MP7近傍のダストモニタの指示値が上昇する約1時間前から南東又は南南東の風約5mが吹いている状態であり、発電所敷地外から発電所に向かって風が吹いていた。
(7)MP7近傍をダストが上昇した時刻頃にダンプが3台通過していた。
その後、当該モニタの「高警報」が発生した際に使用していたろ紙を回収して分析の結果、セシウム134およびセシウム137(天然核種以外の核種)が検出されたが、それ以外の核種は検出限界値未満を確認。
〈回収したろ紙の分析結果(速報値)〉
・セシウム134:2.0×10^-6Bq/cm3
・セシウム137:8.9×10^-6Bq/cm3
【注目点】東京電力は、原発構内作業で汚染されたダストが発したという事態にはしたくないらしい。モニタリングポストNo.7近くのダストモニタで警報が発生した件について、敷地内由来のダストではないと考えられる要件を列挙しているが、いずれもせいぜい蓋然性を示す程度で、東京電力の主張は根拠が薄弱だ。1号機、2号機、3号機、フランジタンク解体、構内のダストモニタに上昇がなかったからといって、構内起因のダストであることを否定する材料にはならない。ダンプが巻き上げていた砂塵をサンプル採取でもしないかぎり、東電の説は空想でしかない。
少々意地悪な気もするが、東京電力が(1)から(7)まで列挙した理由の末尾に、それぞれ「もん」という間投助詞をつけるてみると、東京電力の思いが伝わってくる。
「モニタに有意な上昇がなかったもん」
「ダストの上昇はなかったもん」
「有意な変動はなかったもん」
「敷地外から発電所に向かって風が吹いていたもん」(風向はしばしば変わる)
「ダストが上昇した時刻頃にダンプが3台通過していたもん」
1~2号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室、1号機所内ボイラー室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
3号機 使用済み燃料プール冷却を13日に起動後、14日午前5時38分に停止
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
※3号機使用済燃料プール(以下SFP)代替冷却系について、電源切替盤点検を行うため、1月13日午前5時34分に停止。冷却停止時のSFP水温度は19.4℃。
3号機SFP代替冷却系停止時のSFP水の温度上昇率は0.098℃/hであり、停止中のSFP水温度上昇は最大で約1.2℃と評価しており、運転上の制限値65℃に対して余裕があることから、SFP水温度の管理上は問題ない。同作業が終了したことから、1月13日午後5時35分にSFP代替冷却系を起動。同日午後5時45分運転状態に異常なしを確認。起動時のSFP水温度は19.6℃(停止時19.4℃)、運転上の制限値(65℃)に対して余裕があり、SFP水温度の管理上問題ない。
※3号機使用済燃料プール(以下SFP)代替冷却系について、電源切替盤点検を行うため、1月14日午前5時38分に停止。冷却停止時のSFP水温度は19.8℃。
その他の項目に新規事項の記載なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
4~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◎日報に新規事項の記載なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)運転中
・増設多核種除去設備停止中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクEから海洋排水を開始
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクEの分析結果[採取日2016年1月3日]については、運用目標値を満足していることを確認。(既出)
2016年1月14日午前10時6分より海洋への排水を開始。なお、排水状況については、午前10時19分に漏えい等の異常がないことを確認。
地下水バイパス
◎日報に新規事項の記載なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
1月13日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
H4エリア周辺地下水【E-1】全ベータ濃度(単位:Bq/L)
採取日 1/5 1/6 1/7 1/8 1/9 1/10 1/11 1/12
E-1 8,700 7,700 8,100 8,600 9,100 9,100 9,300 9,900
浪江雨量(mm)0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
H6エリア周辺地下水【G-1】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 1/5 1/6 1/7 1/8 1/9 1/10 1/11 1/12
G-1 130 ND(110)170 140 200 180 170 160
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
H6エリア周辺地下水【G-2】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 1/5 1/6 1/7 1/8 1/9 1/10 1/11 1/12
G-2 300 250 250 350 290 240 300 260
浪江雨量(mm)0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
H6エリア周辺地下水【G-3】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 1/5 1/6 1/7 1/8 1/9 1/10 1/11 1/12
G-3 920 990 960 890 960 960 970 960
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
*NDは検出限界値未満を表し、( )内に検出限界値を示す。
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