10月に右股関節の難手術を受けた杉内は、90％ダウンの5,000万円で来季の契約を結びました。来季の5,000万円という数字は、今シーズンの5億円から実に4億5,000万円減。4億5,000万円減はプロ野球史上最大の減俸額になりました。

野球協約92条には減額制限の記述があります。
1億円以上の選手の減額は40％までと決められています。
ただし、『選手の同意があればこの限りではない。』という記述もあるのです。
今回の場合は杉内が同意したのではなく、杉内自ら球団に減額を申し出たのです。

まだダイエー時代の入団3年目の2004年6月1日のロッテ戦。2回を7失点と大乱調の杉内はベンチに戻ると悔しさを抑えきれず、帽子とグローブを投げ捨てました。そして左拳、右拳でベンチを殴打。捕手城島の『利き手はやめろ！』という声もカッとなった杉内の耳には入らず両手の指を骨折。全治3ヶ月と診断されました。

球団は杉内に対して罰金100万円と謹慎10日の処分を課し、さらに球団とは別に現場サイドも杉内に500万円の罰金を課しました。

「こういうことはあってはならない。何のために選手をやっているんだ。絶対にやってはならない」王監督も厳しいコメントを残しています。
悔しい気持ちはわからなくもないですが、何よりも大切な左手を自ら痛めつける行為は野球選手として絶対にいけません。

シーズンを棒に振ってしまった杉内は翌年奮起、昨年の分までと意気込み18勝4敗、防御率2.11の好成績で最多勝と防御率のタイトルを獲得しました。

初めて杉内を見たのはまだ高校生。鹿児島実業時代のエースとして甲子園に出場した杉内はまだ2年生でした。背も小さく童顔で子どもがマウンドにいる感じでした。

3年夏に再び甲子園で見た杉内は見た目は1年前と変わりはありませんでしたが、ピッチングが圧巻でした。甲子園ではノーヒットノーランを達成するなど、抜群の存在感を示しました。

松坂大輔の横浜高校が劇的な優勝で締めくくった80回大会で、杉内は横浜高校と2回戦で対戦、松坂にホームランを打たれてチームは敗退しました。
2回戦敗退ながら、大会後に行われたアジア大会の日本代表に選ばれました。

背番号18がエースナンバーと言われるようになったのは、タイガースの若林忠志投手が背番号18をつけて活躍していたのが始まりという説と、同じ頃ジャイアンツで中尾碩志投手が背番号18をつけて活躍していたからという説があります。
同時期に同じ背番号の選手がエースとして活躍していたからが正解かもしれませんね。

そのころからのジャイアンツの歴代背番号18を見てみると、

真田裕貴や久保裕也、澤村拓一らが入団時に背番号18を希望しましたが、与えられることはありませんでした。
あの、藤田元司や堀内恒夫も1年目は別の番号から始まり、活躍することでエース番号を獲得しました。

由緒ある背番号18は桑田真澄が引退してから空き番号でしたが、杉内がFAで移籍の際にジャイアンツは杉内に背番号18を用意しました。
今まで生え抜き選手しかつけることがなかった『18』を杉内がつけることになったときはさすがに驚きましたが、それほどまで期待が高かったということですね。

過去背番号18をつけたすべての選手が引退するまで18をつけ続けています。

今回の手術は長期リハビリが必要で、杉内は来シーズンの登板も間に合うかどうかと言われています。
球団としては、1人でも多く支配下登録選手を増やしたいのが本音。杉内を1度育成選手登録扱いにするという選択肢もありました。
しかし育成選手登録にしてしまうと、背番号は18から3ケタの番号になってしまいます。

支配下登録選手として復帰を待つという球団の対応に、杉内は意気に感じ今回の大減俸契約にも応じたと言われています。

大減俸があったときにプロ野球選手が一番大変なのが税金なのかもしれません。
昨年の年俸5億円にかかる税金は最高で3億強。来年の年俸5,000万円を大きく上回ります。自ら大減俸を申し出た杉内に、お金の問題ではない男意気を感じました。

責任感が強い熱い男だからこその決断なのでしょうね。

高橋由伸監督からは『焦るな』と言われたそうですが、『ゆっくりしている時間もないので』と語った杉内。杉内の目標は来季からソフトバンクに復帰する同い年の和田毅投手と日本シリーズで投げ合うことだそうです。

目標を達成するために1日も早い復帰を目指し、杉内がリハビリに臨みます。

■ プロ野球
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