7月17日付「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」に、またも理解困難な報告が掲載されている。
現在建屋がすっぽり覆われている1号機だが、燃料の取り出しなどの作業を行うためにカバーの解体が予定され、準備的な工事が続けられてきた。その中で、建屋からの放射性物質が大気中に放出されるのを抑えるため、建屋内部に吹き抜けのように設けられている部分の「3階機器ハッチ開口部」という部分をバルーンで閉塞する作業が実施された。ところが、建屋外側のカバー解体作業を再開する前に、バルーンがずれていることが発覚。その経緯と今後の方針が7月17日の日報で示されたのだが・・・
これが1号機建屋内部のバルーンだ!
そもそも設置当時の写真からも、バルーンというよりシートといった雰囲気だったが。
発表内容と経過、そして「設置せず」の判断
・1号機の原子炉建屋カバー(以下、「建屋カバー」という。)解体作業に伴う屋根パネル(計6枚)の取り外し作業については、5月26日頃から開始することとしていたが、原子炉建屋3階機器ハッチ開口部に設置したバルーン※が、所定の位置に設置されていないことが確認され、復旧に時間を要することから、屋根パネルの取り外し作業を延期する。なお、ダストモニタおよびモニタリングポストのダスト濃度等に有意な変動は確認されていない。(既出)
バルーンがずれた原因を調査した結果、バルーンを覆っていた雨カバー上に瓦礫が落ちたことで雨カバーにくぼみが発生し、くぼみ部に飛散防止剤が溜まり、その自重によってバルーンがずれたものと推定。その後、バルーンの再設置等を検討したが、平成26年11月に測定した空気中の放射性物質濃度や現状の原子炉建屋開口部の縮小状態を踏まえると、バルーンを設置しない場合においても、1号機からの放射性物質の飛散による敷地境界での被ばく量の評価値は、2015年6月時点での1~4号機原子炉建屋からの追加的放出による敷地境界での被ばく量に対し影響が小さいことを確認。
また、バルーンを再設置した場合、瓦礫の落下等によりバルーンのずれが再発する恐れがあること、および作業員の過剰被ばく防止の観点から総合的に判断し、バルーンを再設置しないこととした。(2015年7月10日 特定原子力施設に係る実施計画の変更認可済)
なお、バルーンを設置しなくても放射性物質の飛散による被ばく量は十分に低いことを確認しているが、大物搬入建屋からの風の流入を抑制する目的で、屋根パネル取り外し前に大物搬入建屋内に防風カーテンを設置する。また、建屋カバー解体作業にあたっては、飛散防止剤散布等のダスト飛散抑制対策を十分に実施するとともに、ダストモニタおよびモニタリングポストにてダスト濃度等の監視を十分に行いながら慎重に実施する。
建屋カバー屋根パネルからの飛散防止剤の散布については、7月17日午前7時6分より作業を開始。作業にあたっては、ダストモニタおよびモニタリングポストにてダスト濃度等の監視を十分に行いながら慎重に進めていく。
※建屋カバー解体作業に伴う放射性物質放出抑制対策として、開口部の面積を小さくすることで放射性物質の放出量を抑える(少なくする)ことを目的に設置。
バルーン設置から、再設置せずの判断までの経緯は、
・2014年6月4日
1号機建屋1階からオペレーションフロアまで貫通する吹き抜け状の開口部を塞ぐために、3階機器ハッチ開口部にバルーンを設置
・2015年5月21日
バルーンがずれていることを確認
・2015年7月10日
バルーンを再設置しない旨、特定原子力施設に係る実施計画の変更認可済
・2015年7月17日
バルーンがずれた原因の推定と、バルーンを設置しない方針を発表
<バルーンを再設置しない理由>
(1)バルーンを設置しなくても、敷地境界(原発の敷地とその外側との境界)での被ばく量への影響は小さい(根拠は2014年6月と11月の測定結果の比較か)
(2)再設置しても、またズレが発生するかもしれない
(3)作業員の過剰被ばく防止
(4)風の通り道の地上側にあたる部分に「防風カーテン」を設置
再設置をする必要のないようなものを、1年前にはわざわざ作業員の過剰被曝の危険を冒して設置したわけだ。もちろん費用も時間も投じている。その上で、そもそも瓦礫などが落ちかかってくることは予期できただろうに、うまく行かなければ計画を全撤回。再設置しなくても影響はないと言い募る一方で、防風カーテンを設置する……。
必要だからバルーンを設置したのではなかったのか。1年後に「なくても大丈夫」と言い出すくらいなら、最初から暴風カーテンではダメだったのか。あるいはバルーンや暴風カーテンを設置する必然性はあったのか。
行き当たりばったり丸出しの方針変更だ。さらにいうなら、未必の故意による無駄遣い、つまり凍結止水工事と同様に質の悪い計画と計画変更だと考えざるをえない。
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