これは酷い。いったいどうやってガレキを取り除くのか。
11月19日、東京電力は1号機のオペレーションフロアの状況写真と解説資料を公開した。撮影日は10月31日と記されている。建屋カバーの屋根パネルの取り除かれたところから、久しぶりに見下ろした1号機建屋オペフロの状況は想像以上に酷かった。
爆発後の1号機
以下の写真2点は、1号機が爆発した当日と直後に撮影された原子炉建屋の外観だ。オペレーションフロアから上部の鉄骨造の部分は、壁と天井が完全に破壊されているのが分かる。(オペレーションフロアから下は頑強な鉄筋コンクリート造)
写真ではスケール感が掴みにくいが、建屋の南北(上下の写真とも右側の面)は全長約42メートル。鉄骨構造のスパンは幅6.78メートルもある。1号機の大きさを頭に置いて、改めて11月19日公開の写真をよく見てみよう。
オペレーションフロアを覆うように落ちている屋根のガレキ
屋根パネルの開口部から見えるオペレーションフロアは、一面何かに覆われているように見えるが、これは屋根ということらしい。爆発によって壁は吹っ飛び、屋根(天井)は建屋内部に設置されていたクレーンや燃料取扱機を下敷きにして、フロア全体を面的に覆っているということだ。
下の写真は今年撮影された1号機の建屋内部。4階の開口部ということなのでオペレーションフロアの1階下に当たるが、ガレキであふれている。オペフロの、崩落した屋根材の下にも、細かく粉砕されたガレキが4階同様に大量に存在する様子が撮影された。
右の写真の緑色は落下した天井クレーンらしい。屋根材の下には、4階部分にも増して大量のガレキが散乱している。
今回の調査内容
今後から行われる調査として、東京電力は2項目を挙げている。
(1)ガレキ撤去方法を検討するため、天井クレーンや燃料取扱機、ガレキの状況、空間線量、ダスト濃度の測定
(2)原子炉ウェル上部に熱源が無いことを赤外線カメラで確認
調査工程は、(1)を11月20日から12月2日、(2)は11月26日に実施が予定されている。
面的な屋根ガレキの下のダスト飛散対策
どのようにガレキを取り除くのか、計画は調査結果を反映して具体化していくのだろうが、かなりの難工事になることが予想される。
問題は、屋根が面状の形態のまま、ガレキの上に落下していることだ。この状態では、いくら飛散防止剤を上から散布しても、屋根材の下にあるガレキに対しての飛散防止効果は薄いと予想される。
飛散防止剤が屋根ガレキの上面だけに施された状態で、屋根ガレキを除去しようと剥がすと、屋根ガレキの下にあるガレキから汚染されたダストが飛散する危険度が高い。
撤去作業中の飛散防止剤の散布の仕方は、大きな課題になるだろう。
巨大な屋根ガレキの切り出し方法
3号機の建屋では爆発の威力が大きかったために、オペレーションフロア上のガレキはかなり破壊された状況で撤去作業が行われたが、1号機は屋根ガレキがほぼ原形に近い形で面的に崩落している。
冒頭で指摘したように、建屋の長辺は40メートル以上ある。この大きな屋根ガレキをどのように切断して撤去するのか。事前の計画では遠隔操作の小型重機をオペフロに上げるという案もあったが、まず重機を入れて稼働するのに必要なスペースをつくる必要がある。
屋根ガレキを細分化するために、どのような工具を使うのだろうか。町なかの通常の解体作業でよく見かけるブレーカー(ノミで打撃する解体機械)やニブラー(ハサミ状の解体機械)は、クレーンから吊り下げた状態で使用するのは困難だ。またガレキを破砕することで大量のダストを発生することになる。しかも、解体工事の現場となるオペフロは地上から約30メートルの高所でもある。重機をオペフロに入れる前段階で、クレーンを使ってガレキを撤去するための新兵器の開発も必要になるかもしれない。
安全と放射性物質の飛散防止は至上命題
どんなに困難だ作業であっても、安全と放射性物質を含むダストの飛散防止は至上命題だ。あらゆる知恵を傾注して、「できるだけ」ではなく、安全と飛散防止を「絶対に」実現する作業が行われるよう見守っていきたい。
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