7月17日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
※ 情報を追加して更新します
汚染水処理設備のRO膜装置で汚染水が漏洩
※7月17日午前3時27分頃、福島第一原子力発電所構内の汚染水処理設備(淡水化処理RO膜装置3-3)において、漏えい検知器が動作したため、現場を確認したところ、同日午前3時48分に同装置の高圧ポンプと配管の接続部から、水が漏えいしていることを当社社員が確認。同日午前3時50分、同装置を停止。なお、装置内の残圧により鉛筆芯2本程度で漏えいは継続していたが、同日午前4時30分に漏えいが停止したことを確認。
漏えい範囲は、約20m×10m。漏えいした水については、同装置に設置されている堰内に留まっていることから、外部への影響はない。漏えいした水については、吸着材にて漏えい拡大防止措置を実施し、同日午前10時20分から午後2時20分、パワープロベスター(バキューム車)による水の回収を実施。現在、原因については調査を実施している。
また、漏えい水の放射能分析結果は以下の通り。
<漏えい水放射能分析結果>
・セシウム134 8.0×10^2Bq/L
・セシウム137 3.1×10^3Bq/L
・コバルト60 6.6×10^1Bq/L
・全ベータ 6.3×10^4Bq/L
RO膜は、海水の淡水化などに使われるフィルター。水を通す孔は100万分の1ミリレベルで、汚染水をイオン(身近なところではナトリウムやカリウムなど)を多く含む濃縮排水と、ほぼ淡水とに分離する。
漏洩範囲は「約20m×10m」とされるが、参考資料では「漏洩量約2.5m3」と記載されている。
漏れた水の放射能の数値を整数表記に変換する。
・セシウム134: 800Bq/L
・セシウム137:3,100Bq/L
・コバルト60: 66Bq/L
・全ベータ: 64,000Bq/L
東京電力が同日発表した参考資料「ジャバラハウス内における淡水化装置(RO3)からの堰内漏えいについて」(ジャバラハウスはこの設備が設置されている建物のこと)の、雰囲気線量をマイクロシーベルトに置き換えると以下のとおり。
<水の表面>
ガンマ線: 15マイクロシーベルト/h
ガンマ線とベータ線の合計:20マイクロシーベルト/h
<ジャバラハウス>
ガンマ線: 18マイクロシーベルト/h
ガンマ線とベータ線の合計:35マイクロシーベルト/h
※水に放射線を遮蔽する効果があることを考えると、水の表面より空間線量が高い傾向にあるのは、「もとからジャバラハウス内の線量が高い」「漏洩した汚染水のうち水分の蒸発によって析出して露出している放射性核種が存在する」といった可能性が考えられるだろう。
資料では「原因と対策」も記された。
1号機の原子炉建屋カバーの解体で、放射性物質放出を抑えるために設置した「バルーン」がずれた→再設置せずと総合的に判断
・1号機の原子炉建屋カバー(以下、「建屋カバー」という。)解体作業に伴う屋根パネル(計6枚)の取り外し作業については、5月26日頃から開始することとしていたが、原子炉建屋3階機器ハッチ開口部に設置したバルーン※が、所定の位置に設置されていないことが確認され、復旧に時間を要することから、屋根パネルの取り外し作業を延期する。なお、ダストモニタおよびモニタリングポストのダスト濃度等に有意な変動は確認されていない。(既出)
バルーンがずれた原因を調査した結果、バルーンを覆っていた雨カバー上に瓦礫が落ちたことで雨カバーにくぼみが発生し、くぼみ部に飛散防止剤が溜まり、その自重によってバルーンがずれたものと推定。その後、バルーンの再設置等を検討したが、平成26年11月に測定した空気中の放射性物質濃度や現状の原子炉建屋開口部の縮小状態を踏まえると、バルーンを設置しない場合においても、1号機からの放射性物質の飛散による敷地境界での被ばく量の評価値は、2015年6月時点での1~4号機原子炉建屋からの追加的放出による敷地境界での被ばく量に対し影響が小さいことを確認。
また、バルーンを再設置した場合、瓦礫の落下等によりバルーンのずれが再発する恐れがあること、および作業員の過剰被ばく防止の観点から総合的に判断し、バルーンを再設置しないこととした。(2015年7月10日 特定原子力施設に係る実施計画の変更認可済)
なお、バルーンを設置しなくても放射性物質の飛散による被ばく量は十分に低いことを確認しているが、大物搬入建屋からの風の流入を抑制する目的で、屋根パネル取り外し前に大物搬入建屋内に防風カーテンを設置する。また、建屋カバー解体作業にあたっては、飛散防止剤散布等のダスト飛散抑制対策を十分に実施するとともに、ダストモニタおよびモニタリングポストにてダスト濃度等の監視を十分に行いながら慎重に実施する。
建屋カバー屋根パネルからの飛散防止剤の散布については、7月17日午前7時6分より作業を開始。作業にあたっては、ダストモニタおよびモニタリングポストにてダスト濃度等の監視を十分に行いながら慎重に進めていく。
※建屋カバー解体作業に伴う放射性物質放出抑制対策として、開口部の面積を小さくすることで放射性物質の放出量を抑える(少なくする)ことを目的に設置。
※ 再設置をする必要のないようなものを、1年前にはわざわざ作業員の過剰被曝の危険を冒して設置して、うまく行かなければ撤回。再設置しなくても影響はないと言い募る一方で、防風カーテンを設置する……。
必要だからバルーンを設置したのではなかったのか。1年後に「なくても大丈夫」と言い出すくらいなら、最初から暴風カーテンではダメだったのか。あるいはバルーンや暴風カーテンを設置する必然性はあったのか。
行き当たりばったり丸出しの方針変更と言わざるをえない。
1号機
◆1号機(上記の建屋カバー解体に関するバルーン問題以外、新規事項なし)
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
※ タービン建屋地下滞留水の移送は停止中
2号機 ~タービン建屋地下の高濃度滞留水の移送を切り替え(移送先はプロセス主建屋)
1号機の冒頭4項目に加え、
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(2015年7月7日午後3時2分~7月17日午前10時43分)
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年7月17日午前10時43分~)
※ タービン建屋地下滞留水の移送は稼働中
3号機 ~タービン建屋地下の高濃度滞留水の移送を再開(移送先はプロセス主建屋)
1号機の冒頭3項目に加え、
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
(6月30日には、6月29日午後1時46分SFP代替冷却系を起動と報告されている)
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年7月17日午前11時26分~)
※ タービン建屋地下滞留水の移送は稼働中
4~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・RO濃縮水処理設備停止中
地下水バイパス ~通算73回目の海洋排水を終了。排出量は1,239トン
7月16日午前10時17分より海洋への排水を開始。同日午前10時28分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
同日午後3時24分に排水を停止。排水停止状態に異常のないことを確認。排水量は1,239m3。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
7月16日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、堰床部に溜まっている雨水の影響により、一部実施出来ない箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
H4エリア ~K排水路の堰を越えて、汚染水が海に流れ出した問題に関連して、切替C排水路や構内側溝排水放射線モニタでセシウム137、全ベータが上昇したのは、7月16日の強い降雨の影響と推測
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、切替C排水路35m盤出口(C-2-1)のセシウム137の値が、7月15日に採取した検出限界値(2.1Bq/L)未満から23 Bq/Lに上昇していることを確認。
また、構内側溝排水放射線モニタ近傍のセシウム137についても7月15日に採取した検出限界値(3.3Bq/L)から17 Bq/Lに上昇していること、および全ベータの値についても検出限界値(4.6 Bq/L)から51 Bq/Lに上昇していることを確認したが、7月16日の強い降雨の影響により上昇したものと考えている。
なお、7月16日午前8時24分頃に確認されたK排水路内の水が堰から外洋側にも一部排水された事象に鑑み、環境への影響について確認するため、同日午前9時50分に採取した、南放水口付近海水(排水路出口付近)(T-2)のセシウム134、セシウム137および全ベータの値については、堰から外洋側に一部排水される前の午前7時15分に採取した値と比較し有意な変動は確認されていない。
その他の採取した測定結果は前回と比較して大きな変動は確認されていない。
<H4エリア周辺地下水 E-1/E-9の全ベータ濃度>
採取日 7/7 7/8 7/9 7/10 7/11 7/12 7/13 7/14 7/15
E-1 1,700 2,000 2,000 1,800 1,900 2,000 2,100 2,100 2,200
E-9 ー 4,000 ー 3,100 ー ー 3,500 ー 5,100
※ 単位はBq/L。(ーはデータの発表なし)
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側 ~地下水観測孔No.2-6、3,4号機取水口間の海水、4号機スクリーンの海水で過去最高値。1,2号機海側の地下水観測孔7カ所で「悪天候により採取中止」
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<過去最高値>地下水観測孔No.2-6
トリチウム(H3):1,500Bq/L(2015年7月14日採取)
これまでの最高値:1,200Bq/L(2013年11月24日・11月27日 2014年7月2日・7月7日・7月9日)
7月16日採取予定の地下水観測孔No.1・No.1-6・No.1-11・No.1-12・No.1-14・No.1-16・No.1-17は悪天候により採取中止
<過去最高値>3,4号機取水口間
ストロンチウム90:1,500Bq/L(2015年6月1日採取)
これまでの最高値:1,000Bq/L(2015年5月4日採取)
<過去最高値>4号機スクリーン
ストロンチウム90:1,500Bq/L(2015年6月1日採取)
これまでの最高値:1,000Bq/L(2015年5月4日採取)
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~3号機放水路
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して有意な変動は確認されていない。
K排水路の状況 ~セシウム134,137,全ベータの上昇は強い降雨の影響と推測
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、7月16日採取した水の分析結果(セシウム134、セシウム137、全ベータ値)が前日の分析結果よりも上昇しているが、強い降雨の影響により一時的に上昇したものであると判断している。
また、港湾口連続モニタの値については、有意な変動は確認されていない。
引き続き、監視を継続していく。
なお、K排水路の排水については、同排水路内に堰を設けて、移送ポンプを設置し港湾内に繋がるC排水路へ移送しているが、7月16日午前8時24分頃、移送ポンプは全台正常に稼働しているものの、移送ポンプの移送量を超える強い降雨の影響により、K排水路に設置した堰から外洋側にも一部排水されていることを確認。7月16日午後8時10分頃、稼働していた8台(全台数)の移送ポンプが6台に切り替わったことから、この時間に一部排水が停止し、通常の排水状態に戻ったものと考えている。
7月17日の「K排水路排水口放射能分析結果」は発表されていない。
※ これまでも、それ以降も毎日発表されているのだが、ページが存在しない
関連データ(東京電力以外のサイト)
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