紙切れ1枚の資料「Sr処理水の再処理」をできるだけ読み込んでみる

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東京電力が4月15日付で発表した資料「高性能多核種除去設備によるSr処理水の再処理について」。日報を引用紹介するページでは、ペラ1枚で説明もなく、何がなんやら分からないと書いたが、それで済ませるわけにはいかないので、分かる範囲で読んでみた。

「高性能多核種除去設備によるSr処理水の再処理について|東京電力 平成27年4月15日」
「高性能多核種除去設備によるSr処理水の再処理について|東京電力 平成27年4月15日」
 高性能多核種除去設備によるSr処理水の再処理について|東京電力 平成27年4月15日
www.tepco.co.jp  

ストロンチウム処理水は「ストロンチウム汚染水」

まず押さえておきたいのはこのことだ。ストロンチウム処理水とは「処理水」という名前は付けられていても、実際は処理途中の汚染水でしかない。だからこそ「再処理」が必要になる。詳しくは下記。

 【ぽたるページ】ストロンチウム処理水は「処理途中の汚染水」
potaru.com

従来ならセシウムを除去した後、濃縮して多核種除去設備でトリチウム以外の放射性核種を除去するとしていたものを、セシウム吸着装置を通しただけのものを別途タンクに貯蔵していたもの。レッキとした汚染水だ。要するに、平成26年度中に汚染水処理を完了すると言っていた計画の辻褄を合わせるために呼び名を変えただけ。(それでもさらに処理しきれない汚染水が残っている)

昨年途中までの処理方針は、従来通りセシウム吸着装置を通した後の水を濃縮した「RO濃縮水」を、H4エリアやH6エリアと呼ばれるタンクなどで貯蔵しておいて、逐次多核種除去設備で処理していくというものだった。ところが多核種除去設備は故障続きで、処理が追いつかない事態に陥ってしまう。そこでセシウム処理だけ行った汚染水を処理水と呼ぶことにしたようだ。「ストロンチウム処理水」という名称が登場するのは、今年に入ってからのことだった。

生成方法を考えれば一目瞭然だが、ストロンチム処理水は、セシウムをある程度吸着できる装置で処理しただけの水。つまりセシウム濃度は低いがストロンチウムなどのベータ核種の濃度は高い(セシウム吸着装置でもストロンチウムを一部除去することはできるそうだが)。つまり、ストロンチウム処理水は「ストロンチウム汚染水」にほかならない。百歩譲ってもストロンチウム処理「前」水と呼ぶべきだろう。

※蛇足ながら、この記事を作りながら思い当たったことをメモしておきます。
ストロンチウム処理水を濃縮せずに貯めているのは、濃縮した汚染水がもしも漏れてしまうと、一昨年・昨年のタンクからの汚染水漏れのような大事件になって、世間を騒がせてしまうので、低目の濃度で貯めておこうという考えも働いているのかもしれない。
(根拠はありませんが…)

発表された資料から分かること

今回の資料から分かるのは、そのような「ストロンチウム処理水」は、主に高性能多核種除去設備(経産省の肝煎りで建造された施設)で処理するということくらい。たったそれだけだ。処理がすでに始まったのかどうかすら資料からは読み取れない。

その他に引っかかるのは、「水抜きタンク」という名称で示されているグレーのタンクが何者かということだ。H4やH6のタンクは、かつて高濃度の汚染水などを貯蔵してたタンクエリアだが、汚染水漏れを受けてリプレースが進められているらしい。そのため、別のタンクに移したり、既存の多核種除去設備等で処理することで汚染水を空にして(正確には完全に空にすることはできない)、その後、ストロンチウム処理水を貯蔵するという方針なのではないかなぁ、と推察できる。しかし具体的な説明は示されていない。

ただし、この資料にも見るべきところはある。

発表されたのは概略図ではあるが、実際のタンクの位置や移送用のラインの位置関係をある程度反映しているように見える。新設が進むタンクがどの辺りにあるのかの見当をつける上では参考になるかもしれない。

【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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