11月3日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
2,3号機格納容器のガス管理設備を停止して配管の鋼管化作業を終了。停止期間における関連監視パラメータに異常なし
※2号機および3号機原子炉格納容器ガス管理設備については、信頼性向上を目的に、配管の一部に使用しているフレキシブルチューブおよび樹脂製ホースの鋼管化作業を行う。
当該作業では、必要に応じて設備の停止となるので、設備停止中は特定原子力施設に係る実施計画「III 特定原子炉施設の保安」(以下、「実施計画」という)第1編第24条の表24-1に定める運転上の制限「原子炉格納容器ガス管理設備の放射線検出器が1チャンネル動作可能であること」を満足しない状態となることから、実施計画第1編第32条第1項(保全作業を実施する場合)を適用し、計画的に運転上の制限外に移行して作業を実施する。
2号機原子炉格納容器ガス管理設備については、11月2日午前9時12分から作業を開始。(既出)
午後4時50分に作業が終了。
その後、当該設備の動作確認において異常がないこと、および短半減期核種の指示値に有意な変動がないことから、午後5時54分に実施計画第1編第32条第1項(保全作業を実施する場合)の適用を解除。
なお、当該設備の停止期間における関連監視パラメータに異常はなかった。
高性能多核種除去設備での漏洩の続報。漏れた水は全ベータが23万ベクレル
※11月2日午前11時21分頃、高性能多核種除去設備において、フィルターのラインの切替作業を行っていたところ、当該ラインに設置してあるベント配管(空気抜き配管)より、水が漏れていることを当社社員が発見した。
水溜まりの範囲は、約5m×約10mであり、堰内に留まっており、外部への流出はない。 なお、高性能多核種除去設備の運転を停止したことにより、漏えいは停止した。(既出)
漏えいした水については、午後2時28分から拭き取りを実施し、午後3時24分に回収作業を終了。漏えい量は最大でも約50Lと推定。
また、漏えいした水の分析結果は以下の通り。
・セシウム134:1.0×10^3Bq/L
・セシウム137:4.3×10^3Bq/L
・全ベータ :2.3×10^5Bq/L
漏えい原因については、当該設備の弁等の作業状況の確認を含めて調査していく。
【解説】分析結果を整数表記すると以下の通り。
・セシウム134:1,000Bq/L
・セシウム137:4,300Bq/L
・全ベータ :230,000Bq/L
全ベータが極めて高いことから、処理途中の濃縮された汚染水が漏洩したものと考えられる。「日報」の水処理設備および貯蔵設備の状況には、この設備はH8タンクエリアのストロンチウム処理水の処理を行っていたと説明されている。ストロンチウム処理水とは、セシウム吸着装置を改良した装置で粗処理された半汚染水と言える処理途中の水で、原水に比べてストロンチウム濃度は10〜100分の1程度に下がっているとされる。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に実施中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
◎日報に新規事項の記載なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 高性能多核種除去設備は11月2日の水漏れで処理を停止
※高性能多核種除去設備は、H8タンクエリアのストロンチウム処理水の処理を実施していたが、11月2日の同設備建屋内での水漏れにより処理を停止。
その他の項目に新規事項の記載なし
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・RO淡水化装置RO-2は停止、RO-3は運転中。
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
【注目点1】前日までの記載と大きな齟齬がある。
(前日まで)
※高性能多核種除去設備は、H8タンクエリアのストロンチウム処理水の処理を完了したことから、8月26日午後7時37分、一度同設備による処理を停止。今後H8タンクエリアにストロンチウム処理水がある程度貯水された時点で、処理再開予定。
(本日の発表)
※高性能多核種除去設備は、H8タンクエリアのストロンチウム処理水の処理を実施していたが、11月2日の同設備建屋内での水漏れにより処理を停止。
H8タンクエリアのストロンチウム処理水の処理は完了していたのか、実施されていたのか、まったく意味不明だ。
【注目点2】高性能多核種除去設備は「処理を停止」と発表されたのに、「ホット試験中」とも記載されている。遡れば8月26日午後7時37分に処理が停止された後も、ずっとホット試験中とされてきた。
ホット試験とは、実際の汚染水を使って運転テストをすることで、実質的な運転操作に他ならない。しかしこの発表のように、処理停止でも、「ホット試験中」とされるということは、逆にホット試験中でも処理が行われていない場合もありうる。過去にも、フィルターでの処理は行わずに、処理水を循環させている場合に「ホット試験中」とされたことがあった。ホット試験中とは、具体像が見えにくい、あいまいな状態だと言わざるを得ない。
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクDから海洋排水を開始
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクDの当社および第三者機関による分析結果[採取日10月25日]については同等の値であり、運用目標値を満足していることを確認。(既出)
11月3日午前10時に海洋への排水を開始。なお、排水状況については、午前10時16分に漏えい等の異常がないことを確認。
地下水バイパス
◎日報に新規事項の記載なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
11月2日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
H4エリア周辺地下水【E-1】全ベータ濃度(単位:Bq/L)
採取日 10/26 10/27 10/28 10/29 10/30 10/31 11/1
E-1 3,400 2,800 3,000 3,100 2,300 2,800 2,300
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
H6エリア周辺地下水【G-1】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 10/26 10/27 10/28 10/29 10/30 10/31 11/1
G-1 560 1,000 620 360 610 270 340
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
H6エリア周辺地下水【G-2】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 10/26 10/27 10/28 10/29 10/30 10/31 11/1
G-2 540 600 560 570 650 540 470
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
最終更新: