5月まで処理期間を延長しても約4万トンの汚染水処理が残されるという記事をまとめていてようやく気がついた。うかつだった。
東京電力が3月16日に発表した「汚染水浄化処理について」には「ストロンチウム処理水」という単語が出てくる。この言葉は1月19日に発表された「セシウム吸着装置/第二セシウム吸着装置におけるストロンチウム除去について」にも登場している。後の方の資料をよく見てみると次の記載がある。
Srの除去状況
入口Sr濃度:10^4Bq/cm3オーダ、出口Sr濃度:10^2Bq/cm3オーダであり,Srの濃度が低減されていることを確認済。
Sr処理水の貯蔵について
セシウム吸着装置,第二セシウム吸着装置による処理済水は,本日(1/19)11:00頃~,Sr処理水として貯蔵を開始した。
つまり、セシウムを吸着する装置でもストロンチウム濃度が低減されていることは分かっていた。そこで1月19日からセシウム吸着装置・第二セシウム吸着装置での処理水を「ストロンチウム処理水」と呼んで別途貯蔵することにした。
要するに呼び名を変えただけ。
従来のプロセスでは、セシウム吸着装置・第二セシウム吸着装置で処理されたものは、2倍程度に濃縮した上で、H4エリアやH6エリアのタンク(これまで何度か漏洩事故が発生している)に貯蔵した後に、多核種除去設備で処理されてきた。
ストロンチウム処理水とは、このプロセスの後工程をすっ飛ばして、セシウム吸着装置・第二セシウム吸着装置を通しただけの状態のものを「処理水」として扱うものだったのだ。
正確には、同じ資料に
セシウム吸着装置・第二セシウム吸着装置でのSr除去、RO濃縮水処理設備およびモバイル型Sr除去装置の処理済水を総称したもの。
とあるので、セシウム吸着装置・第二セシウム吸着装置での処理水に、モバイル型ストロンチウム除去装置(フィルターとゼオライトによる吸着塔で構成されるセシウム吸着系の装置とよく似た装置)の処理水と、RO濃縮で発生するほぼ淡水を混ぜたものということである。
「ストロンチウム処理水」は3月16日発表の資料では、ちゃっかり「処理水」として扱われているが、話が違うと考える人はいないのだろうか。
ちなみに「10^2Bq/cm3オーダ」とは1リットルあたりに換算して数十万ベクレル程度という意味である。
裏を返せば、多核種除去設備での処理はそれだけ時間が掛かるということ。そして事故原発の汚染水処理はとてつもなく大変な仕事だということだ。
「多重的なリスク低減策」というキャッチコピーが虚しく響く。
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