東電会長が現地視察。技量が低くて廃炉ができるのか?

iRyota25

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東京電力の數土(すど)文夫会長は、1月29日、安全再点検を実施中の福島第一原発を視察した。東京電力の原発で死亡事故など重大な労働災害を受けてのもの。福島第一原発は21日から廃炉に向けての作業を中止して安全の再確認作業を続けている。(放射能のモニタリングや汚染水移送などの作業は継続)

東京電力は視察の模様を写真・動画集のページで「当社会長による福島第一原子力発電所の現場視察について」として発表した。

視察状況(1)
視察状況(1)

photo.tepco.co.jp

視察状況(2)
視察状況(2)

photo.tepco.co.jp

視察状況(3)
視察状況(3)

photo.tepco.co.jp

協力企業との意見交換
協力企業との意見交換

photo.tepco.co.jp

 当社会長による福島第一原子力発電所の現場視察について | 東京電力株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー 平成27年1月29日
www.tepco.co.jp  

転落死亡事故が発生したタンクと同型のもの(事故が発生したタンクかもしれない)を、会長自らが高所作業車で視察している。実際に事故が発生した時には高所作業車を使ったのだろうか…と、ふと疑問に思ってしまう。高所作業車を持ってくるほどの手間をかけられるのなら、照明器具や懐中電灯を持ってくることもできただろうからだ。
(転落事故は、タンク内を検査する際に内部が暗かったため、天板にある鉄製の蓋を開けようとして発生したとされる)

協力企業との意見交換の写真に写っているのは、ユニフォームから判断して東京電力の人が7名、関連企業の幹部(現地の責任者であることを示す「現場代理人」の腕章らしきものをつけている人が多い)が15名であるように見える。

死亡事故が連続する以前の(しかし病院に搬送される労働災害は頻発していた)1月15日に開催された「安全総決起大会」に参加した元請企業は42社だった。おそらくこの社数の方が実際の元請企業数に近いものと考えられる。

また、元請企業には3次、4次、5次…と何階層もの下請企業があり、現場で実際に作業するのは下請け企業に所属する作業員の方が多いと考えられる。

やはり「スケジュールありき」だったのか

東京電力が発表したのは写真と、同様のリリースだけだったが、視察後報道陣に語った内容がマスコミ各社によって伝えられた。

FNNローカルのニュースでは、數土会長の次の言葉を肉声で紹介。地元紙・福島民友新聞は「工程より安全重視」、毎日新聞は「ずさん作業認める」との見出しを立てた記事を掲載した。

監督者の方の現場のレベルもですね、なかなか人手不足で、全国的に、技量が上がっていくという環境にない

福島第1原発・第2原発死亡事故 東電・数土会長が現場視察(福島15/01/29) | FNNLocal

「今後は無理な工程をつくることはない。誠心誠意、安全に進めたい」と述べ、工程ありきではなく、安全を最優先に廃炉作業を進める考えを示した。

(中略)

作業工程の問題について数土会長は「国や東電の日程で作業スケジュールが決まり、これに追いつくためにやってきた」と述べ、工期内の作業完了のため、作業の安全確保が十分ではなかったと指摘。

「工程より安全重視」 数土東京電力会長が第1原発視察 | 福島民友2015年1月30日(金)10:05

収束作業の現場では元請けの現場監督が人的にも技量的にも不足し、安全手順に違反する作業があっても見過ごされるずさんな実態だったことを明らかにした。その上で「元請けは国や東電のスケジュールを意識するが、安全は急がば回れだ」と述べ、作業工程より安全対策を優先するよう求めた。

(中略)

今後も熟練者が増える見通しがないため、対策として「元請け責任者が5〜6人のチームを組み、自分の持ち場以外もパトロールし、潜在的なリスクを記録して共有する」よう指示したと述べた。

 数土会長は「第1原発の廃炉作業は世界が見ている」と語る一方、作業員の間で賃金など待遇への不満があるとされることについては「(発注者の東電が)下請けのチェックをするのは法的にできない」と述べた。

労災死亡事故:東電会長、ずさん作業認める 第1原発を視察/福島 | 毎日新聞 2015年01月30日 地方版

人手不足、技量が上がらない、待遇も改善できない

報道された内容でポイントとなるのは次の2点だろう。

・「国や東電が決めたスケジュールがまずありき」という状況はあった。
・全国的な人手不足で技量の低い作業員が多く、ずさんな作業にも目をつぶっていた。

毎日新聞はその対策として、元請企業がグループをつくってチェックするという具体策を上げているが、足の引っ張り合いになることを恐れて、チェックがルーズになるようなことになっては意味がない。せっかくやるのなら、厳しい相互チェックを可能にするような発注側としての施策が不可欠だ。

また、人手不足が深刻だから技量が低いが目をつぶっていたというのは、安全を確保する企業責任を果たしていなかったことを認めているに等しい。

さらに、発注側として下請けのチェックができないというのであれば、廃炉に関する資金を出している国が責任を持ってチェックすべきなのではないか。

作業員の死を無駄にしないためにも、安全第一を徹底しなければならない。事故原発の廃炉は世界的にも例がない困難な事業だという。その現場で働く人の技量が足りないというのでは、廃炉など覚束ないだろう。人手不足だから仕方がないと対処療法的な対策を行うのではなく、高い技量を持ったチームを育て上げることにこそ力を注ぐべきではないか。もちろん東電だけではなく国も責任を持って。国民のお金を投入しているのだから。

安全点検を終えた福島第一原発の課題
 安全点検を終えた福島第一原発の課題
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安全教育を徹底して現場の作業環境を整えること、そして待遇を改善することは、現場の安全性を高めるだけでなく、技術や技能を持つ経験者を受け入れていくための第一歩になるのではないか

【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
 【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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