のどがヒューヒュー鳴動する感覚が痛い。被災地で子供の「ぜんそく」増加のニュース

iRyota25

公開:

2 なるほど
1,252 VIEW
0 コメント

11月4日の読売新聞が東北の被災地でぜんそくの発作に苦しんでいるこども達が増えているとニュースで伝えていました。

 調査は、震災時に3、4歳(調査時5、6歳)だった子供を対象に、2012年9~11月に実施した。被災地を含む全国の保育所を通じ、計約6万人分のデータを集めた。

 それによると、「被災あり」と回答した約850人のうち、6・3%の子供が医師からぜんそくとの診断を受けていた。

 アトピー性皮膚炎と診断された子供も4・8%に上り、「被災なし」でアトピー性皮膚炎の診断を受けた3・4%を上回っていた。

 また、「被災した」子供のうち「家が全半壊」した子供では、「被災なし」の子供に比べ、ぜんそくやアトピーを発症する可能性が、ぜんそくで2・1倍、アトピーで1・6倍高かった。

被災児、ぜんそく発症2倍…仮設生活影響か : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

被災していない地域と比べて2倍近くのこども達がぜんそくの症状に苦しんでいるとのことです。

筆者はこどもの頃ぜんそくを患っていました。太平洋ベルト地帯と呼ばれた工業地帯の西の端に位置する工業都市に生まれ、掛かり付けの医師は「たぶん間違いなくS金属のばい煙のせいだろう。この町にはぜんそくのこどもがたくさんいるからな」と、当時まだ幼稚園通いだった自分に、まるで大人に話すかのように聞かせてくれたのを覚えています。もうひとつ忘れられないのが、呼吸が苦しくて「死にそうなくらい苦しい」と訴えた時に、高笑いしながら「ぜんそくでは人は死なない。死にそうなくらい苦しいのは分からないでもないが、薬で治る」と言われたこと。励ましの言葉だったのだとは思いますが、いま思い出しても、死ぬほど苦しいという言葉に応えてもらえなかったことに対する、言いようのない辛さが蘇ってきます。

被災した東北でこどものぜんそくが増えている原因について、記事は「被災した子供にぜんそくやアトピーの割合が高いのは、避難所や仮設住宅へと住環境が変化する中で、アレルギーの原因となるカビやダニに触れる機会が増えた可能性がある」という東北大災害科学国際研究所の栗山進一教授(疫学)の言葉を引用しています。ただ、その言葉が、記事作成に当たって、インタビューで専門家が語ったことのすべてだったかというと、少々疑ってかかるべきだと思うのです。

今日ではぜんそくの発作を抑える薬も普及しています。かつて、小児ぜんそくは大人になると快癒する場合があると思われていたことの誤りも指摘されるようになり、ぜんそくに対する医療体制は整ってきてはいます。

しかし、ぜんそくの発作のトリガー(引き金)となる要因は多種多様です。それは現に発作に苦しんでいる患者の多くが体験を通して知っていることであり、ぜんそく医療の専門家の間でも広く認知されていることです。

たしかに、結露が多く、そのためにカビが発生しやすい仮設住宅の住環境の問題が大きいことは間違いないかもしれません。しかし、そればかりではないのではないのは間違いないと思うのです。実際の患者の感覚として。

発作に至るトリガーを引く前段階で、ちょっと風邪をひいたとか、生活環境が変化したとか、体力の低下とか、アレルギー反応を引き起こす物質との関わり方の急激な変化とか、そういった想像しやすい要因ばかりでなく、たとえば大笑いするとか、たくさん食べ過ぎるとか、そんな些細な条件までもがぜんそくの発作と関係しているという指摘もあるのです。

避難所の住環境の問題の「物理的側面」だけでなく、もっと見えにくい要因も複雑に絡んでぜんそく発作が引き起こされているのではないか。罹患者としてはそう心配せずにはいられません。

私の主治医が「死ぬことはない」と笑い飛ばしたぜんそくですが、もちろんぜんそくで亡くなる方は毎年たくさんいらっしゃいます。

アレルギー反応によると原因が特定されているように思われながらも、実は発作の誘因となる前段階の状況とか、トリガーとして働く要素との関連がはっきりしていないことが、ぜんそくという病の特色です。そう考えたとき、東北の被災地でぜんそく患者が増えているということが、単に住環境の問題だけで説明できるものなのかと、はなはだ疑問に感じてしまうのです。

いちばん心配なのは生活環境の変化や、これから迎えるであろう変化に対する心理的な抑圧です。

被災地で生活する、とくに児童や高齢者の場合、生活環境の変化やこれから仮設住宅を出て、また新しい生活環境でコミュニティをゼロから作って行かなければならないという、現在直面している状況がストレスに感じられている人も少なくないのではないか。たとえばですが、そういったストレスもまた、小児のぜんそくのトリガーのひとつとなっているのではないかということを、懸念せずにはいられません。

被災地でぜんそくのこども達が増えたことを、仮設住宅の結露やカビと直結して考えてヨシとするのは危険です。

ぜんそく=アレルギー反応だから早く薬で治してね、だけではない、社会の見えない変化に対するSOSかもしれないと、心配しながら見てほしいと、思うのです。

最終更新:

コメント(0

あなたもコメントしてみませんか?

すでにアカウントをお持ちの方はログイン