9月1日の防災の日に合わせて、経済産業省が本館1階で意外な展示を始めました。その内容は「トイレットペーパー備蓄の呼びかけ」。
備蓄を呼びかける理由は3つ。
1. 阪神・淡路大震災で、被災者が一番困ったのはトイレ不足
2. 東日本大震災では被災地だけでなく日本中でトイレットペーパー不足
3. トイレットペーパーの約40%は静岡県で生産
大災害の被災地で深刻な問題になるのがトイレの不足。経産省の呼びかけでは阪神・淡路大震災と東日本大震災が挙げられていますが、関東大震災でもトイレ不足、汲み取りできないことによるトイレ使用不能が大問題になったそうです。トイレそのものや水不足も深刻ですが、経産省が指摘しているのがトイレットペーパー。災害時には被災地のみならず、全国的に物不足が深刻化する上に、
トイレットペーパーの約40%を生産しているのが、東海、東南海、南海トラフ地震で大きな被害が懸念されている静岡県であるという事実!
トイレットペーパーの約40%が、巨大地震で大きな被害が懸念されている静岡県で作られているのです!
これは大問題。工場が大きなダメージを受けるようなことがあれば、生産量が激減して全国的にトイレットペーパー不足が続くことになってしまう。
だから、少なくとも1カ月分の備蓄を各家庭で、と訴えているわけです。芯なし・長巻で省スペースでの収納可能な備蓄用トイレットペーパーまで紹介しているほどなので、経産省は本気で心配しています。
他の製品や産品は大丈夫なのだろうか
たしかに、生活に不可欠な品物の生産がとある地方に集中している場合、その場所が災害の直撃を受けると日本中に影響が及ぶことになります。東日本大震災の時にも、ペットボトルの水がコンビニから消えたり、たばこの販売が止まったり、部品工場が被災した影響で自動車の組み立てが世界規模でストップしたり、感熱紙を作っている工場が被災したためにレジのレシートが足りなくなるんじゃないかと心配されたりしました。
では、静岡県が地震などの大災害で被害を受けた時、全国的な影響がある製品や産品には、トイレットペーパーの他にどんなものがあるのでしょう。
カテーテルなどの医療機器
血管造影用カテーテルなど、手術などの医療行為に欠かせない医療機器の生産金額は、静岡県が第1位。全国シェアは約20%で2位の栃木県の約2倍です。さらに医薬品の生産金額でも全国2位。大災害後の医療に影響を及ぼしかねない、ちょっと心配なナンバーワンです。
レトルト食品の出荷額で日本一
避難生活の初期に欠かせないレトルト食品。その出荷額の第1位は静岡県。シェアは全国の17%ですが、他の都道府県のシェアは一桁。静岡に生産が集中していることがわかります。医療機器と同様、災害時の影響を抑える準備が必要ですね。
オートバイ、オートバイのエンジン、自動車部品
オートバイや原付などの二輪車の輸出は静岡県が日本一。輸出金額ではなんと45%を占めています。車両そのものよりもっとシェアが高いのがエンジン。二輪車用エンジンの出荷額は全国の96%と圧倒的。
同様にカーヒーターの出荷額では全国シェアの50%を占める第1位。2位の愛知県が7%に過ぎないことからも、カーヒーターの生産が万一止まってしまったら、日本中の自動車組み立てに深刻な影響を及ぼすことになりそうです。
意外やエアコン! 清掃用品や毛布・ひざ掛けも
エアコンは出荷額も出荷量も静岡県が日本一。出荷額は全国の30%、出荷量は54%を占めています。これだけのシェアだから、静岡になにかあったなら、エアコンの新製品流通は確実に影響を受けることになるでしょう。ただでさえ暑さ・寒さに弱い仮設住宅生活に大ダメージとなるかもしれません。
これまた意外なのが箒や塵取りなどの清掃用品。こちらのシェアは37%。同じく生活関連では毛布やひざ掛けの輸出額の56%を静岡県が占めています。輸出用とはいえ災害発生時には大量の毛布が必要になります。流通が止まらないことを祈るばかりです。
マグロ・カツオ・アジはしばらく食べられないかも
静岡県のホームページによると、「平成23年において、全国主要210漁港のうち、静岡県内漁港の水揚量合計が日本一である品目は、まぐろ(冷凍)、びんなが(冷凍)、きはだ(冷凍)、その他まぐろ類(冷凍)、かつお(冷凍)」とのこと。マグロ類とカツオ類は2位の県にほぼダブルスコアを付けての首位。さらにマアジの養殖では生産額で全国の51%を占めています。
震災等で港湾施設や生産施設が被害を受けると、しばらく市場の混乱が続く恐れがあります。
農産品にも高シェアのものが……
静岡と言えばお茶。生産面積、生産量、生産額などほとんどの分野で約4割のシェアを占める第1位。温州ミカンも20%超で第1位。温室メロンは約40%、ワサビに至っては76%。嗜好食品はなければ死んでしまうというものではありませんが、市場の混乱によって生産者や流通業者には大変な苦労が強いられることになりそうです。
意外なシェアNo.1に驚き
静岡県といえば、もちろんピアノやプラモデルのようにシェアほぼ100%の製品も知られていますが、どちらかというと嗜好品や趣味関係のものが多いような気がしていました。(←勝手な思い込み)
しかし調べてみると、災害時に必要不可欠なもので高いシェアを占めているものがあることが判明。さらに、それがなければ生産がストップするような部品があることもわかりました。
トイレットペーパーの備蓄は家庭でもできる災害対策として有効でしょう。でも、それ以外のものについても日本中の各自治体でチェックして万一に備えてほしいものです。以上、静岡県のホームページ「Myしずおか日本一」を参考にお送りしました。
トイレットペーパー備蓄の話題が、他分野での再確認のきっかけになりますように。
人は「トイレットペーパーのみに生きるに非ず」なのですから。
最終更新:
sKenji
仙台出身の知り合いが、東日本大震災の時に避難所に数日避難していたそうなのですが、彼曰く、トイレペーパーがないことに加えて、水もなかったためにトイレが大変なことになっていたそうです。
極力、お風呂の水を使用直前まではかないなど、水の確保も大切のようです
iRyota25
首都圏に大きな被害が発生する災害が起きた場合、あるいは、駿河から南海、沖縄沖へと続く長大なトラフを震源とする大地震が発生した時、おそらく日本の半分以上が直接的な被害を蒙るわけです。そんな状況で、いつどれくらいの支援が被災地にもたらされるのか――。考えただけで身震いしてしまいます。