[コラム]2号機格納容器、核燃料が融け落ちた底部の水位は?

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センサ設置のリベンジに成功!

事故原発2号基格納容器内部で、事故後機能しなくなった温度計などの計測装置を新規に設置するリベンジ戦が、6月5日〜6日に実施され機器の設置に成功、測定が実施された。

 福島第一原子力発電所 2号機原子炉格納容器内 監視計器再設置作業結果|東京電力 平成26年6月9日
www.tepco.co.jp  

2号機は建屋外壁が破損に至るほどの大きな爆発はなかったものの、格納容器か圧力抑制室の一部が大きく破損したと考えられている。格納容器内部は極めて汚染度が高く、人間が内部を目視確認することは現時点ではほぼ不可能。温度計などの計器が多数機能しなくなっているため、計器による状況把握も「隔靴掻痒」の常居ウッだった。

そのため、温度計と水位計をセットにしたセンサを8つ、縦列につないだ物を格納容器のフラスコ部分中程に穿孔した穴から格納容器内部に垂らすようにしてセンサを増設する作業が行われたが、格納容器内のグレーチング(足場部分の金網)に引っかかるなどして、前回は投入に失敗していた。

6月5日~6日に実施された今回の作業では、8対のセンサの設置に成功。その後、計測結果が明らかにされた。

測定された温度は、気中33.5°C、水中35.6°Cで、格納容器内の水位は、下から2番目のセンサより低かった(一番下のセンサは水中、2番目は空気中)ことから、30センチほどの水位と推定された。

推定水位、60センチから30センチに変更の意味

これまで2号機格納容器内部の水位は、約60センチと推定されてきた。しかし、今回ほぼ実測のデータから半分の30センチと推定されることになったことが意味することは何だろう。それはメルトスルーした燃料デブリ(燃料と周辺の物質が溶け落ちて混ざった屑)が格納容器のどこにあるのかという、重要な意味を持っている可能性がある。

格納容器の下部には、ドーナツ型の圧力抑制室に蒸気を送るベント管などの配管が多数設置されている。一方、1号機から3号機の炉心があった圧力容器などには、注水とスプレー(シャワー)の二通りの方法で1日あたり100トン以上の水が注がれ、どこにあるのか分からない燃料デブリの冷却が続けられてきた。

内部の様子を窺い知ることができない条件の中で、これまで東京電力が2号機格納容器の水位を60センチと推定してきたのは、その位置に圧力抑制室など、より低い場所に通じる配管の開口があり、それ以上に水位が高い可能性が考えにくいとしてきたからだと考えられる。

残念ながら、格納容器のどのような場所にどんな配管があるか、細かいところまでは東京電力か設置メーカーにしか分からない。ただ、東京電力がこれまで60センチと水位を推定してきたことから、その高さが格納容器内で最も低い配管開口部だろうと推定することができるだけだ。

だが今回の実測に近いデータでは、それより水位は低かった。このことが意味しているのは、2号機に1日あたり注がれ続けている冷却水が、どのようなルートで流れているのか、これまでの推定を覆すことになる。

つまり、「圧力容器への注水→格納容器→圧力抑制室→そのまわりのトーラス室→タービン建屋に流れ出てたまる」ではなく、
「圧力容器への注水→格納容器→格納容器下部の破損部分→タービン建屋に流れ出てたまる」である推定が成り立つことになる。

フラスコ型の格納容器の下にドーナツのように設置された圧力抑制室は鋼鉄製で、鉄筋コンクリートのトーラス室という空間に設置されている。一方格納容器はその外側を鉄筋コンクリートで囲われている。損傷が圧力容器にあるのなら、その外側(トーラス室の側)から補修することも可能かもしれない。しかし、外郭をコンクリートで覆われた格納容器が破損していた場合には、その修復は格納容器内部から行うしか手がないかもしれない。

今回のセンサ投入成功で推定された格納容器内部の「水位」は、今後の廃炉に向けてどのような工程(作戦)がとりうるか、今後を大きく左右するものになるかもしれない。

とはいえ、廃炉に向けての工程はまだ入り口のさらに手前にあるということを忘れてはならない。極めて高い放射線科でなしえた今回の成果は大きい。しかし、融け落ちた可能性が高い核燃料がどこにあるのか、その手がかりになる格納容器内の水位がようやく実測できたに過ぎず、溶融した燃料の一部すらまだ発見されていない。限られたセンサの数値から内部状況を推測するよりほかない状況は、いまだ事故直後とそれほど大きくは変わっていないのだ。

文●井上良太

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