2号機でも宇宙線「ミュオン」による燃料デブリ検知へ

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東京電力が福島第一原発の事故からおよそ5年が経過した先月末、炉心溶融(メルトダウン)の判断基準を定めたマニュアルの存在を公表したのは記憶に新しいが、事故原発の炉心がどのような状況なのかは未だにほとんど分かっていない。

そんな状況の中、東京電力は宇宙線の一種であるミュオンを利用して原子炉内部を検知する試みを2号機でも実施すると発表した。宇宙から大量に降り注いで拡散しているミュオンには高い物質透過性がある。原子炉建屋を透過したミュオンの濃度を調べることで、原子炉内部の物質の密度の差を検知する。ウランはコンクリートや鋼鉄などより密度が高いので、存在すればその場所は建屋構造材とは異なるくっきりした白い像を結ぶことになる。いわば宇宙線を使ったレントゲン装置ともいうべきこの技術は、2015年2月~3月にかけての測定で、1号機の炉心部に燃料と考えられる物質がほぼ存在しないことを明らかにした。

融け落ちた燃料デブリがどこにあるのか、格納容器の底なのか、もっと低い場所、たとえば地中にまで到達しているのかまでは明らかになっていないが、燃料のほとんどが本来あるべき炉心から融け落ちたことは確実となった。2号機を対象とした今回の検知でも、測定が行われるのは地上から見上げる方向にある炉心部が中心で、水平方向や格納容器の底に向けての俯角方向での検知は行われない模様だ。

福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日
福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日
福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日
福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日
福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日
福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日

東京電力が発表した写真を見ると、今回のミュオン測定装置は小さい。東京電力自身が小型装置と呼ぶだけのこともある。まるで工事現場のプレハブハウスのようだった昨年の装置に比べると、技術の進歩が伺える。

しかし今回の測定については疑問も多い。昨年の1号機では2基の装置で立体的に測定を行ったのに、どうして今回は1基だけなのか。装置を小型化する技術開発を進めるくらいなら、水平方向や俯角方向からの検知能力を高める研究を優先すべきではないか。1号機での測定から1年も経ってようやく2号機の測定とは、あまりに悠長すぎないか。3号機での測定はいつ行う予定なのか……

ミュオン測定装置設置状況(小型装置)(撮影日)2016年3月16日 | 東京電力株式会社
ミュオン測定装置設置状況(小型装置)(撮影日)2016年3月16日 | 東京電力株式会社

photo.tepco.co.jp

人間が立ち入れないのみならず、リモコンの観測ロボットすら故障してしまうほど線量が高い炉心部の状況が可視化されていくことは大きな前進に違いない。

公開された小型装置の写真の脚部にペイントが施されているのを見ると、すでに装置は細かな位置決めも行い、すぐにでも測定に入れる状況のようだ。せっかく工事の邪魔になりにくいように小型化に成功したのだから、複数の観測点からより多くの情報をスピーディに収集して、廃炉に向けての基本方針策定に役立ててほしい。

 福島第一原子力発電所2号機・ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について|東京電力 平成28年3月17日
www.tepco.co.jp  
 【参考ページ】宇宙線を利用した原子炉透視調査で、核燃料のメルトスルーが確認される
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【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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