4月4日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
本日の日報には、極めて重大かつ重篤な状況を示す報告が数多くなされています。
チリ北部沿岸で発生した地震津波への対応(続報)
津波注意報解除を受けての動きを報告
4月2日午前8時46分頃、南米西部(南緯19.8度、西経70.8度)でマグニチュード8.2(推定)の地震が発生。これに伴い、4月3日午前3時に気象庁より、福島県沿岸部に『津波注意報』が発令。発電所海側沿岸部の作業については実施していないことを事前に確認しているが、念のため同日午前3時3分に発電所構内一斉放送にて、高台待避を指示。その後、4月3日午後6時、『津波注意報』が解除されたことから、午後6時12分に発電所構内一斉放送にて高台待避指示を解除。なお、津波注意報発令期間における当発電所沿岸の津波は、目視では確認できない程度の高さだった。また、プラントパラメータおよびモニタリングポスト指示値についても有意な変動は確認されていない。
3号機タービン建屋1階西側廊下エリアで建屋内漏えい警報
※4月4日4時15分頃、3号機タービン建屋1階西側廊下エリアに設置した建屋内漏えい警報が発生。
その後、現場状況を確認したところ、3号機廃棄物処理建屋中央操作室の天井部から流れ込んだ雨水(指3本程度の流れ)が3号機タービン建屋1階西側廊下エリア流入して、当該漏えい検出器が動作させていることを確認。
また、本日午前0時から4時までの福島第一原子力構内の降雨量は約36mmであり、降雨量が多い状況であった。(本日午前4時から5時においても約23mmの降雨量。)
このことから、当該漏えい警報の発生は、雨水によるものと判断。漏えい水の放射性物質濃度の分析結果は以下のとおり。
<3号機タービン建屋1階西側廊下エリアの建屋内漏えい水分析結果(4月4日採取)>
・全ベータ:29,000 Bq/L
・全放射能:31,000 Bq/L
・セシウム134:8,100 Bq/L
・セシウム137:22,000 Bq/L
なお、採取水の放射能濃度が高い理由としては、雨水が3号機タービン建屋1階まで流れるまでに、建屋内に付着した放射能が取り込まれたものと推定。また、3号機廃棄物処理建屋中央操作室の天井部から流れ込む雨水の量は指3本程度での流れであり、事象発生時から変更なし。
モニタリングポストNo.8が故障。バックアップ用の無線式代替測定器も故障
さらっと報告されているものの、とても重篤な状況であることが伺われるインシデントといえる。環境中の放射線量をモニタするためのモニタリングポストが故障。機器故障に備えていた代替測定器まで故障。
フェイルセールのために備えていた機器までが、起動後2時間もしないうちに故障するという状況が何を意味するのか。
発電所に何らかの異常が発生した際に、モニタリングポストは周辺地域への影響を測定し安全を担保するための施策を行う基本となるデータを提供する極めて重要な機器である。機器である以上故障は起こりうるものであるが、そのバックアップまでもが短時間でダウンするというのは、原発全体としての安全性に大きな不安があることを物語っていると言わざるをえない。
日報の表記とは異なり、これは極めて重篤な事態。
※4月4日午前4時46分、モニタリングポストNo.8は、本設備の機器故障が発生して、無線式の代替測定器にて監視を継続していたが、
同日午前6時3分に無線式代替測定器の機器故障が発生し、午前6時10分より欠測。
なお、その他のモニタリングポストについては、異常なし。
モニタリングポストNo.8の欠測の対応として、午前7時から人為的な測定を開始。
なお、線量当量率は2.5μSv/hであり、無線式代替測定器が欠測する前の測定値と同じ値であった。また、無線式代替測定器の機器故障から人為的な測定を開始するまでの欠測時間は、午前6時10分から6時50分であり、欠測時間におけるモニタリングポストおよびプラントパラメータに異常なし。
本設備のモニタリングポストNo.8の機器故障については、正常に復旧したことから、午前8時10分から本設備による測定に切り替えを実施。
G5タンクエリア堰内に溜まった雨水が二重堰(外側)工事中の型枠下部から染み出し
※4月4日午前7時頃、福島第一原子力発電所南側にあるG5タンクエリア堰内に溜まった雨水が二重堰(外側)工事中の型枠下部から染み出していることを、パトロール中の当社社員が発見。
本日の強い降雨の影響により当該タンクエリア堰内水位が上昇し、内側仮堰(高さ約25cm)からオーバーフローし、施工中の外側堰(高さ約1m)型枠下部から水が染み出た。水が染み出している型枠部分に土のうを設置。
G5タンクエリア内には多核種除去設備で処理した水を貯蔵しているが、現時点で当該タンクの水位に変動はなく、タンクからの漏えいも確認されていない。なお、現場付近に側溝はない。当該堰内水の放射性物質濃度の分析結果は以下のとおり。
<G5タンクエリア堰内水分析結果(4月4日採取)>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値は12 Bq/L)
・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値は17 Bq/L)
・ストロンチウム90 :検出限界値未満(検出限界値は2.2 Bq/L)※簡易測定結果
分析結果より、当該堰内水は雨水であると判断。なお、G5タンクの水位については有意な変動はなし。
またもタンクエリア堰堤から水漏れ。問題は工事中の型枠からの水漏れであったこと。施行前にタンクに貯水が行われていたということ。
タンクエリアからの水漏れを防止するための堰堤工事を行う前に、そのエリアのタンクに水を入れていたという事実を示す内容です。
昨年来、度重なるタンクからの漏水への対策として、タンク設置エリアに堰堤を設けるとしてきた東電ですが、その防護策が完成する前にタンクに水を入れていた。この事実は重たいです。
汚染水あるいは処理水の貯蔵が、極めて厳しい状況にあることを、ある意味「雄弁に」物語るのが今回のインシデント。
先日の死亡災害から数日間、現場での作業がストップあるいは制限されていた後に、これだけのインシデントが多発するということは、それだけ事故原発が「切羽詰まった」状況にある、あるいはほんの数日の作業停止でも重篤な事態に陥りかねないほど厳しい状況に追いつめられていると考えざるをえません。
なんとか持ちこたえてほしい。
現場の作業員方がた、F1で働いている監督さん方、みなさんのご安全の確保を十全とされた上で、なんとかよろしくお願いします。
No.1ろ過水タンク堰内に雨水が溜まり堰から溢水
※4月4日午前5時30分頃、強い降雨の影響により、No.1ろ過水タンク堰内に雨水が溜まり堰から溢水したことを、当社社員が確認。
当該タンク内には昨年4月25日から29日にかけて、地下貯水槽No.1に貯槽していた濃縮塩水を貯槽しておりますが、
タンク内の水位に変動がないことを確認。溢水時、強い降雨に対応するために当該堰内水をノッチタンク(3基)に移送していたが、降雨量が多く溢水した。
その後、吸引車により4,000 m3ノッチタンクへ移送を開始し、同日午前8時25分、溢水が停止したことを確認。
No.2ノッチタンクの水については排出基準(*)を満足していることから、排水を開始した。No.1,3ノッチタンク水については吸引車により、4,000m3ノッチタンクへの移送を行う。各ノッチタンク内の水の放射性物質濃度の分析結果は以下のとおり。
<No.1>
・セシウム137:39 Bq/L
・セシウム134:25 Bq/L
・ストロンチウム90:10 Bq/L ※簡易測定結果
<No.2>
・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:18 Bq/L)
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:12 Bq/L)
・ストロンチウム90:検出限界値未満(検出限界値:2.2 Bq/L)※簡易測定結果
<No.3>
・セシウム137:30 Bq/L
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:12 Bq/L)
・ストロンチウム90:3 Bq/L ※簡易測定結果
また、No.1ろ過水タンクは溶接式タンクであり、タンク内の水位は現在59.2%で、この数日は変化がないことから、タンク内の水の漏えいはないと判断。なお、当該タンクには地下貯水槽No.1に貯水していた水が貯水されている。
また、当該堰内水およびNo.1,3ノッチタンク水の4,000m3ノッチタンクへの移送実績は以下のとおり。
・No.1ろ過水タンク堰内水の吸引車による4,000m3ノッチタンクへの移送
(午前8時20分~10時10分に実施)
・No.1ノッチタンク水の吸引車による4,000m3ノッチタンクへの移送
(午前10時15分~10時30分に実施)
・No.3ノッチタンク水の吸引車による4,000m3ノッチタンクへの移送
(午前10時15分~10時35分に実施)
なお、No.2ノッチタンク水の排水は午前9時1分~10時5分に実施。また、No.1ろ過水タンク堰内水のオーバーフロー水については、発電所構内A排水路に流れている可能性があることから、当該ろ過水タンク周りの側溝出口(A排水路入口)の水を採取分析したところ、排水基準値未満であることが確認。分析結果は以下のとおり。
<A排水路水分析結果(4月4日採取)>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値は13 Bq/L)(排水基準値:15 Bq/L)
・セシウム137:20 Bq/L(排水基準値:25 Bq/L)
*排出基準:
・セシウム134:15 Bq/L未満
・セシウム137:25 Bq/L未満
・その他のガンマ核種が検出されていないこと(天然核種を除く)
・ストロンチウム90:10 Bq/L未満(簡易測定法により計測)
・タンク内の水質等を参考に、他の核種も含めて告示濃度基準を満たすこと
たしかに春の嵐でした。
しかし、「想定外」の天候だったと言えるのか?
すべての作業とそのスケジュールが、天候条件も含めて標準的な(はっきり言って希望的な)状況を想定して策定されているのではないか。
改めて再確認しておきたいのは、第一原子力発電所で行われている廃炉への措置は、いかなる状況に置かれているか不明確なままの核物質が、下手すれば再臨界する可能性が完全に払拭されていないような状況にあるということ。なぜそう言えるかというと、1号機から3号機までの炉心にあった核物質が現時点でどこにどのような状況にあるのかを正確に説明できる状況でないから。
日本一の権威、世界一の権威という人が仮に存在したとしても、そんな誰も確定的なことが言えない状況であるということ。
降雨の影響で漏れました。なるほどそういうことはあるでしょう。しかし、それが今後も繰り返され続けるおそれが極めて高い(なぜなら、根本的な解決ができないから)ことが不安です。
お笑い芸人のありがちなギャグに、頭から盥が落っこちてくるってのがありますが、いまや日本と世界の人たちの頭の上には、誰のせいかしらないけれど、ひとしく金盥がセットされています。
ギャグとは違うのは、それぞれの金盥には高濃度汚染水とか、燃焼途中の核物質、あるいは像の足とか呼ばれる炉心溶融物質が溜め込まれていることです。
おそらく、状況は政治家が「大丈夫です」とか「コントロールされています」とかいう範疇にないのでしょう。政治的言葉と、現地の現場で実際に起きていることの乖離があまりに大きすぎて、政治家的な人は上滑りするようなことを何でも言えるし、現場に近い株式会社の人も、それに同調して大したことありませんからと言うことに慣れすぎてマヒしているのだと思います。
わたしたち、どうどうすればいいのでしよう?
1号機
常態を伝える4項目に追加されたひとつが、あまりにも重大です。
復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※4月4日午前4時49分から、
1号機原子炉格納容器内温度計(PCV温度計:TE―1625T3)の指示値が、17.2℃(午前4時00分時点)から
-20.0℃に低下し、現在も継続している。
その他の原子炉格納容器内温度計およびプラントパラメータには、有意な変化は確認されていない。
原子炉が鎮まっていることを測定してきた温度計が、
壊れてしまいました。
2号機〜6号機
新規項目なし
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月27日午前9時49分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
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