トリチウム濃度が明示されないRO処理された雨水を今後も敷地内へ「適宜」散水
5月22日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
H4タンクエリア堰内の雨水移送でホースから漏えい
またもやタンクエリアの堰内水が漏えい。タンクからの漏えいはないとのことなので、堰内に溜まっていた雨水の可能性が高いが、トラブルを防ぐ手立てはないのだろうか。トラブルは発生するとの前提に立った対応を考える必要があるのではないだろうか。
※5月22日午前10時50分頃、H4タンクエリアの堰内雨水をH2北タンクエリアに設置してある500tタンクに移送中、当該ライン移送ホースから水が漏えいしていることを、協力企業作業員が発見。
その後、午前11時10分に移送ポンプを停止したことにより、漏えいが停止したことを確認。
漏えい場所はH4タンクとH4北タンクの間のエリアで、漏えい範囲ついては、降雨の影響により特定出来ない。
その後、H4タンク周辺のパトロールを行った結果、異常のないこと、また、タンク水位に変動がないことから、H4タンクからの漏えいはないことを確認。
また、漏えい箇所地表面の線量を測定したところ、雰囲気線量と同程度であることを確認。今後、H4タンク堰内雨水の分析を行う予定。
<線量測定結果>
・漏えい箇所地表面(5cm距離)70μm線量当量率(ベータ線)0.00mSv/h
1cm線量当量率(ガンマ線)0.03mSv/h
・H4堰外雰囲気*1 70μm線量当量率(ベータ線)0.00mSv/h
1cm線量当量率(ガンマ線)0.04mSv/h
・H4堰内雰囲気*2 70μm線量当量率(ベータ線)0.00mSv/h
1cm線量当量率(ガンマ線)0.07mSv/h
*1:地面から約150cm離れた位置
*2:堰内雨水表面から約150cm、タンク側面から約150cm離れた位置
上記漏えいトラブルの続報
H4エリアとH4北エリアの間での漏えいについての「報道関係各位一斉メール」による続報を引用。
また、H4タンクエリア堰内雨水を分析した結果は、以下のとおりでした。
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:11 Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17 Bq/L)
全ベータ:16 Bq/L
ストロンチウム90:(現在分析中)
漏えい量については、移送ポンプの稼働時間と漏えい状況から、最大で約4m3と推定しました。
なお、漏えい水は外周堰内に留まっていることから、海への流出はないものと考えております。
当該移送ホースが割れた原因は、ホースの破損状況から、踏み付け等の外荷重によりホースが割れたものと推定しました。
対策として、当該ラインを含めた同様な移送ラインの外観確認を行い、同様な箇所が無いかを確認するとともに、再発防止のため、ホースの踏み付け防止の「注意喚起表示」の取り付けを行います。
福島第一原子力発電所H4タンクエリア堰内水移送ラインからの水漏れについて(続報)|東京電力 平成26年5月22日(新規記載部分のみを引用)
本日(5月22日)お知らせいたしました福島第一原子力発電所H4タンクエリア堰内水移送ラインからの水漏れについての続報です。
H4タンクエリア堰内雨水のストロンチウム90を分析した結果は、以下のとおりであり、堰内雨水の排水基準(10 Bq/L)を下回っておりました。
ストロンチウム90:6 Bq/L(簡易測定)
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:11 Bq/L)【お知らせ済み】
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17 Bq/L)【お知らせ済み】
全ベータ:16 Bq/L【お知らせ済み】
以 上
RO装置で処理した堰内雨水は、適宜、発電所敷地内へ散水
昨日の「日報」記事の続報。比較的高いトリチウム濃度である可能性がある処理水を、発電所敷地内に散水した時間と散水量を記載。今後も適宜、散水すること。また基準以下の雨水はこれまでも散水してきたことも記載。
放射能濃度が運用目標値を満足する処理水について、同日午後1時22分から(ここまで既報)午後4時12分まで、敷地内へ散水を実施。散水量については約73m3。なお、放射能濃度が暫定排水基準を満足している雨水については、適宜、散水を実施している。
また、放射能濃度が暫定排水基準を超えた雨水は、処理装置にて放射性物質を除去し、運用目標値を満足していることを確認した上で、適宜、発電所敷地内へ散水を実施。
トリチウムの濃度が明らかにされない処理水が73トン散水された。散水場所も明らかにされていない。「トリチウムは処理できないから仕方がない」「60,000Bq/Lの告示濃度限度以下なら問題ない」という空気を醸成したいという意思を感じてしまうのは気のせいだろうか。
トリチウム濃度が明らかでない処理水や雨水は、今後も「適宜」散水されるらしい。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月17日午前9時57分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月17日午前11時7分起動(起動後の温度:24.4℃)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
ALPSは3系統すべてが処理運転を停止中だが、ホット試験は実施中との記載
地下水バイパス揚水井の状況
新規事項なし
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では2.5㎝の上昇。引き続き監視を継続。
5月22日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ20.1 cm(4月14日移送停止後と比較し、2.5cm増)
・工作建屋:5月16日午前10時30分、回収作業が完了。
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
5月21日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
ホースからの漏えいがあっても、パトロール結果は異状なし。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
日報には堰内の水のサンプリング結果は記載されていなかった(「報道関係各位一斉メール」の続報で公表された)が、サンプリング実績の記載は昨日と同様の表現。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
4号機建屋山側(N14)の分析結果は、セシウム134が0.75 Bq/L、セシウム137が2.2 Bq/L、全ベータ放射能濃度は検出限界値未満(検出限界値:12 Bq/L)、トリチウム値は13,000 Bq/L。今回の分析結果については、前回の分析結果と比較して大きな変動は確認されていない。今後も引き続き監視を継続する。
4号機原子炉建屋(山側)のサブドレン(N14)のトリチウム分析値
5月17日の日報:11,000Bq/L
5月19日の日報:8,9000Bq/L
5月19日の日報:13,000Bq/L
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月22日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: