年次点検を完了し今月から作業を再開した4号機天井クレーンで故障警報。制御回路の内部バッテリーの電圧低下が原因という
9月26日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
操作卓が落下した3号機プール水の分析結果とプラントパラメータ ~9月24日分
使用済燃料プール水の放射能分析の結果(採取日:9月24日)
・セシウム134:3.5×10^2 Bq/cm3
・セシウム137:1.1×10^3 Bq/cm3
・コバルト 60:検出限界値未満(検出限界値:1.2×10^0Bq/cm3)
プラントパラメータ(9月24日午後4時現在)
・モニタリングポスト :有意な変化なし
・原子炉建屋オペフロ雰囲気線量 :有意な変化なし
・使用済燃料プール水位 :有意な変化なし
・スキマーサージタンク水位 :有意な変化なし
リットル当たりの線量に換算
・セシウム134:350,000 Bq/L
・セシウム137:1,100,000 Bq/L
・コバルト 60:検出限界値未満(検出限界値:1,200 Bq/L)
誤操作で停止した第二セシウム吸着装置(サリー)を再起動
※9月24日午前8時36分、第二セシウム吸着装置(サリー)ブースターポンプ*(B)が停止。これにより午前8時50分に処理運転を停止。なお、水漏れは確認されてない。その後、原因はブースターポンプ(B)上流側の高温焼却炉建屋に設置してある水中ポンプ出口弁を誤って閉操作したことにより、ブースターポンプ(B)の吸込み圧力が低下し、停止したことを確認。
*セシウム吸着塔へ水を送るポンプ
(ここまで昨日発表)
その後、当該設備に異常が確認されなかったことから、同日午後4時34分にブースターポンプ(B)を起動。午後4時52分に運転状態に異常がなく、流量も安定していることを確認。
4号機天井クレーンで不具合。対処後、キャスク構内移送作業を再開
上の写真は、東京電力によって平成25年11月21日に撮影された4号機での燃料取出し作業の様子。※写真の一部が修正されているのは、核物質防護などに関わる機微情報を含むことからと説明している。
※9月24日午前10時35分頃、4号機キャスク構内移送作業において、作業前準備として4号機原子炉建屋天井クレーン(以下「天井クレーン」という。)の日常点検を実施するため電源を投入したところ、故障警報が発生。調査の結果、制御回路の内部バッテリーの電圧低下により故障が発生したものと推定。その後、9月25日、当該バッテリーの交換を実施。バッテリー交換後、天井クレーンの動作確認を行い、異常がないことを確認したことから、4号機キャスク構内移送作業を再開。
4号機の使用済み燃料プールで行われている燃料取出し作業手順は以下のとおり。
▼燃料を「燃料取扱機」でキャスクと呼ばれる輸送容器へ移動する(プール内)
▼キャスクを「天井クレーン」を使ってプールから引き揚げる
▼オペレーションフロア上でキャスクの蓋締め、除染等を行う
▼キャスクを「天井クレーン」を使って地上に吊りおろしトレーラーに積み込み
▼トレーラーでキャスクを移送
つまり、移送用の燃料を満載した状態のキャスクを、放射能の遮断効果がある水中から引き揚げ、30メートル以上の高さを地上まで吊り下ろすのが天井クレーンの役割だ。かなりハイリスクなミッションを担っている装置と考えねばならない。(クレーンが設置されているレールの高さは1号機の場合で地上約37メートルといわれる。1号機より大きな4号機ではさらに高い場所に設置されているだろう)
4号機の天井クレーンは3月26日にも停止している。この時は、サイドブレーキがかかったままの状態だったため、走行用のモーターが過負荷となり、保護リレーが作動して停止したとされた。
4号機の燃料プールからの燃料取出し作業は、7月1日に「9月上旬まで中断」とアナウンスされた。その理由は、「天井クレーンと燃料交換機の年次点検」だった。
その後、9月3日に作業再開のアナウンスがあり、燃料取出し作業が進められていた。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年9月3日午前10時47分~)
※滞留水移送は運転中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年9月24日午後1時33分~)
※滞留水移送は運転中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 ~サリーの運転再開
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
キュリオン社の「セシウム吸着装置」と東芝などが開発したとされる「第二セシウム吸着装置(サリー)」は、片方が停止中には他方が運転するという相補的な運転切り替えが行われることがあったが、今回のサリー停止時にはキュリオンの稼働は行われなかった模様だ。
地下水バイパス ~9月23日海洋放出時のサンプリング結果
同日、この際の南放水口付近の海水についてサンプリングを実施し、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※注:同日とは9月23日
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
9月24日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年9月25日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: