(全録)チリ沖M8.2地震について気象庁が会見
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気象庁が発表した内容
地震の規模等について気象庁の発表は以下の通りです。
発生日時4月2日08時46分頃(日本時間)
マグニチュード8.2
場所チリ北部沿岸(南緯19.8度、西経70.8度)
(震源は太平洋津波警報センター(PTWC)による)
マグニチュードは米国地質調査所(USGS)の数値を、発生場所については太平洋津波警報センターの公表値を採用したかたちになっています。
震源に近いチリなどの沿岸部では、10時15分現在すでに津波が到達していました。
○ 海外の津波の観測状況(10時15分現在)
<国・地域名> <検潮所名> <津波の高さ>
チリ イキケ 2.11m
チリ ピサグア 1.73m
チリ パタッシュ 1.51m
チリ アリカ 0.93m
ペルー マタラニ 0.53m
現地の状況
地震が発生したのは現地時間で20時46分、夜のことでした。安全に避難することができたか現地の状況が心配です。
CNNによると、チリの当局者がツィッターを通して情報収集を呼びかけているそうです。300km離れた町の映像では、人々は落ち着いた様子だとか。
PTWCは「震源付近の沿岸部で大きな被害が出た恐れがあり、遠隔地にも津波が及ぶ可能性がある」と警戒を呼び掛けた。
チリの災害対策当局はツイッターを通し、沿岸部の被害状況に関する報告を求めている。現地のCNNは、イキケから南へ約300キロ離れた港湾都市アントファガスタの映像を伝えた。一部で道路が混雑しているものの、住民は落ち着いた様子を見せている。
チリ内務省の高官は同日夜、この地震で小規模な地滑りが発生したものの、死者や家屋への大きな被害は報告されていないと述べた。
地震発生が真夜中で、震源が東北地方太平洋沖地震よりもさらに沿岸に近いため、津波による被害が懸念されます。
太平洋の広域に津波発生の可能性
再び気象庁の会見内容に戻ります。
気象庁は「防災上の留意事項」として次の2点をあげています。
太平洋の広域に津波発生の可能性があります。
日本への津波の有無については現在調査中です。今後発表される情報に注意して下さい。
地震規模(マグニチュード)や現在観測されている津波高さで予断を持ってはならないという注意喚起です。
「太平洋の広域に津波発生の可能性がある」という言葉には、チリ津波で津波高が高くなる恐れがあるのは東北地方だけではない。太平洋沿岸各地で津波を警戒してほしいとのメッセージが込められているように思います。
発表では過去の津波についても参考として紹介しています。
○ 今回の地震の震央付近で過去に発生した地震による津波
1960年 5月23日 Mw9.5 太平洋沿岸で1mから4m程度
1985年 3月 4日 Mw7.9 18cm(八丈島)
1995年 7月30日 Mw8.0 29cm(八戸)
2001年 6月24日 Mw8.4 28cm(根室市花咲)
2007年 8月16日 Mw8.0 15cm(根室市花咲、八戸、宮古、石垣島石垣港)
2010年 2月27日 Mw8.8 1.2m(久慈港、須崎港)
1960年5月23日のチリ地震津波について追記すると、
函館市 2.2m
むつ市 6.3m
三陸海岸 6.4m
大船渡市 4.9m
女川町 4.2m
銚子市 2.1m
下田市 1.8m
浜松市 1.1m
串本町 2.2m
土佐清水市 2.7m
日本の広い範囲でメートルを超える津波が発生した記録が残されています。よく言われるように、30cmの津波で人間は流されることがあります。十分な警戒が必要です。
津波の到達時間
気象庁は会見で、津波の日本沿岸への到達は4月3日午前6時前後と見込まれると説明しています。
チリ沿岸部を震源にして太平洋に広がっていく津波は、発生から20時間後には南鳥島付近に、21時間後には北海道から東北沖、22時間後には紀伊半島、23時間後には九州南端と移動していくというシミュレーションが示されています。
地震発生が日本時間の午前8時46分ですから、午前6時前に北海道から東北沖、7時前に中部日本太平洋側、8時前に九州に到達するという計算データです。
津波の高さや到達時間は計算では正確につかめないところがありますので、このデータはあくまでも参考として、明朝は海岸沿いに近づかないようにすることが肝要です。
AFPなど海外の通信社へのニュースリンク
囚人の脱走、停電や電話の不通、そして5名の死者が確認されたこと…など現地の様子を伝えています。
現地が朝を迎えるにつれ、情報が増えて行くことと思います。
NTWCとPTWCの見解
今回の津波について観測を行っているアメリカの津波警報センター2つの対応が、とても対照的です。
NTWC(国家津波警報センター)は11時35分に発表したステートメント-4で、アラスカ、ブリティッシュコロンビア、ワシントン、オレゴン、カリフォルニアの北米東海岸の沿岸部について、
*津波の脅威はなくなった
*場所によってはダメージを伴わない海面の変化はあるかもしれない
と津波について評価を行い、何らかの追加がない限り、これが最後のメッセージになるとしました。
一方、PTWC(太平洋津波警報センター)は、ハワイの民間防衛隊に向けた「津波メッセージ No.9」で次のように指摘しています。
得られるすべてのデータに基づくと、Aメジャークラスの津波がハワイを直撃することは予想できない。
しかしながら……
ビーチで泳ぐ人やボートに乗る人、あるいは海岸沿いや港やマリーナにいる人たちのいるさまざまな海岸に危険にさらすような強い流れは起こりうる。
最初の波が到達してから数時間は、脅威は継続すると警戒が必要だ。
第一波到達時間と見込まれているのは、ハワイ時間の4月2日午前3時24分。(日本時間では4月2日22時24分)
次のメッセージは毎時ごと。あるいはハワイへの脅威が去るまで必要に応じて配信するとしました。
実際の脅威の度合いが違うこともあるでしょうが、多くの観光客を迎える土地であり、これまでにも幾度も津波被害を蒙ってきたハワイだからこその配慮を感じます。
もうひとつハワイへのメッセージで特筆すべきは「強い流れ」という表現です。Aクラスの脅威になるような大津波は来ないかもしれないが、海岸線のほとんどの場所で起こりうる強い流れに警戒せよ、と言っているのです。
この表現に1983年に起きた日本海中部地震の津波被害を思い出しました。海岸に遠足に来た小学生たちが津波に巻きこまれるという悲劇を引き起こした津波です。この時、別の場所で撮影された動画では、ほんの30cmほどの波に足を取られた大人の人が津波に引き込まれる様子が撮影されたといいます。
もうすぐチリ沿岸沖で発生した津波の日本への影響について、気象庁による会見が行われることでしょう。
さて、私たちは津波情報にどんな心構えでのぞみますか?
文●井上良太
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