3月17日(月曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
6号機残留熱除去系安全弁の点検実施
3月13日から17日かけて当該安全弁(F-005)の点検を実施。リークテストの結果、異常のないことを確認。
異常なしという記載は良い話に読み取れるが、そもそもこの安全弁を点検したのは、次のような流れによるものです。
▼2月24日、6号機残留熱除去系A系(非常時熱負荷運転中)の系統水の一部が圧力抑制室に流れていることを発見
▼漏えい箇所を調査したところ、残留熱除去系ポンプ吸込ライン(A系、B系共通ライン)に設置されている安全弁から系統水が流れ込んでいる可能性が高いことを確認
▼「あやしい」と思われた安全弁(F-005)を点検したが、漏れはなかった。
◇ つまり、残留熱除去系A系(非常時熱負荷運転中)の系統水の一部が圧力抑制室に流れている原因が分からなくなった。
残留熱除去系とは、停止した原子炉を冷やすための冷却システム。使用済み燃料プールの冷却浄化系にも接続されており、2月24日の事故発見時には燃料プールの冷却に使う予定でした。A系、B系の二系統の共通ラインにある安全弁の不具合が疑われたことから、停止していた補機冷却海水系の復旧を急いだという経緯もあります。
6号機は、現在燃料の取り出しが進められている4号機と同様、すべての燃料がプールに移されていますが、その冷却(命綱ともいうべき重要タスク)が綱渡りであることがよくわかります。
今後については、「6号機」の項に記載がありました。(下記)
ちなみに、燃料への課税の関係から各号機の燃料貯蔵量を管理している福島県のホームページには次の記載があります。
現在、5~6号機の原子炉及び使用済燃料プールの冷却は、予備系も含め、正常に稼働しています。
1号機~5号機
新規事項なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3月14日午前6時48分、1号機使用済燃料プール代替冷却系について、1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等を実施するため、冷却を停止(停止時プール水温度:12.0℃)。なお、停止期間は3月24日までを予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.066℃/hで停止中のプール水温上昇は約16.5℃と評価されることから、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題なし。
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月8日午前10時5分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)。
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
2月24日時点で実施する手はずだった「補機冷却海水系の運転停止」を実施し、その間は原子炉の冷却を行う「残留熱除去系」で燃料プール冷却を行うとの内容を新規記載。
※残留熱除去系ポンプ吸込ライン(A系、B系共通ライン)に設置されている安全弁(F-005)の点検が終了したことを受け、
タービン補機冷却水系熱交換器(C)海水出入口弁他の点検を行うため、補機冷却海水系を3月18日から24日にかけて停止する。
当該期間においては、燃料プール冷却浄化系(FPC系)が使用できなくなるため、残留熱除去系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を行い、使用済燃料プール冷却を実施する。
3月17日午後1時50分、FPC系を停止し、同日午後2時26分残留熱除去系(RHR系)による非常時熱負荷運転を開始。なお、使用済燃料プール水温度は17.5℃と変化なし。
▼FPC系(燃料プール冷却浄化系)は、使用済み燃料プールの冷却のために、元々設置されていた冷却システムで、補機冷却海水系と接続して運転されていた。
▼点検のために補機冷却海水系を停めるので、その間は、残留熱除去系(停止した原子炉内で燃料が発生する崩壊熱や残留熱を冷却するためのシステム。ただし6号機の原子炉には燃料はない)による冷却を行う。
◇ しかし、残留熱除去系からは系統水の一部が圧力抑制室に流れている可能性があって、安全弁の点検が行われたところ。(前述)
系統水が圧力抑制室に流れた原因が分からないまま、残留熱除去系がプール冷却に使われるとも読み取れる内容です。
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
◆共用プール
新規事項なし。
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
加えて、水処理施設等が設置されている集中廃棄物処理施設内での溜まり水移送について記載されています。
・3月17日午前11時15分、集中廃棄物処理施設において、サイトバンカ建屋からプロセス主建屋への溜まり水の移送を開始。
集中廃棄物処理施設とは、4号機の南側の太い排気塔付近にある施設で、プロセス主建屋、サイトバンカ建屋、焼却工作室建屋、雑固体廃棄物減容処理建屋などの建屋があります。
少し古い資料ですが、それぞれの位置関係を示す資料を紹介します。
2011年6月7日付の水処理装置の系統概要図(高レベル滞留水処理)という資料も紹介します。
タービン建屋等に溜まった汚染水が「プロセス主建屋」に送り込まれ、油分分離装置で前処理した上で「焼却工作室建屋」へ。そこでセシウム吸着装置に通されて、ふたたび「プロセス主建屋」に移送され薬液で汚染物質を凝集沈殿(除染装置とも呼ばれています)。「サイトバンカ建屋」を経由して、集中廃棄物処理施設よりも山側にある淡水化装置で処理された上で、1号機近くにある炉注水ポンプから1~3号機の炉心に注水が行われる。炉心の冷却後、漏れて溜まった汚染水はプロセス主建屋へ移送されて……。
というのが事故原発で行われている汚染水処理の概要(2011年6月27日時点)です。
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
最新のパトロールとサンプリングを記載。
<最新のパトロール結果>
3月16日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
汚染された地下水の海洋への流出が心配されている、タービン建屋東側(海側)エリアの状況については、「最新のサンプリング実績」を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
「最新のサンプリング実績」を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月17日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: