アルガルベ杯でベールを脱いだ新生なでしこジャパン。2年後のカナダワールドカップ、3年後のブラジル五輪に向けて、若手に経験を積ませるという佐々木監督の狙いが話題を呼びました。澤、宮間らのベテラン組を外し、U-20代表から田中陽子、田中美南など初代表組を多く選出した新生なでしこ。今大会で注目の選手をピックアップしたいと思います!
なでしこのアキレス腱、代えが利かないサイドバック
なでしこジャパンのサイドバックは左に鮫島彩、右に近賀ゆかりという不動の布陣で固定されています。バックアッパーには有吉佐織、川村優理らの台頭がありますが、レギュラーを脅かすほどの存在には至りません。なでしこの戦術を考えた場合、サイドバックとボランチの攻撃参加はチーム戦術の生命線です。
アルガルベ杯ではあえて鮫島彩を控えに回し、若手組を積極的に先発起用した佐々木監督。しかし、鮫島と近賀が不在の日本はサイドアタックが十分に機能せず、サイドから決定機を作り出すシーンが限られました。苦しい台所事情のなか、今大会4試合中3試合に右サイドバックで先発した加戸由佳の存在は光りました。
本来は攻撃的な選手、DFコンバートで開花する
所属クラブの岡山湯郷Belleに入団当初、加戸はスピードを武器にFW、MFで起用される攻撃的な選手でした。なでしこリーグ126試合出場、31得点というデータが攻撃力の高さを示しています。その後、身体能力の高さを買われてDFにコンバート。サイドもセンターもこなすユーティリティプレーヤーとしてレギュラーに定着します。
4バックの安定はサイドバックの加戸がもたらした
アルガルベ杯で右サイドバックのレギュラーを掴んだ加戸由佳。その要因は安定した守備力にあります。162cmとDFとしては大柄ではないものの、身体能力の高さは群を抜いており、スピードとフィジカルコンタクトの強さ、豊富な運動量は近賀ゆかりに匹敵します。ノルウェー戦、デンマーク戦では170cmを超えるサイドアタッカーとマッチアップしても安定したマーキングで右サイドを完封。
高いボディバランスとスプリント能力を持ち、当たられても倒れない振り切られないタイトなマークで欧州のアタッカー陣の突破を防ぎました。センターバックが流れのなかで前に出た場合、サイドから中央に絞ってFWを密着マーク。左サイドバックの鮫島や有吉が上がり目のポジションを取る日本において、加戸はセンターバックと連携して3バックを形成し、ラインディフェンスのバランスを整えるキーパーソンとしての役割を果たしました。
驚異の運動量でオーバーラップ、クロスの精度に課題
最終ラインで中央のカバーリングを請け負いながらも、前方にスペースがあれば敵陣のバイタルエリアまで果敢にオーバーラップを見せてチャンスを作りました。切れ味鋭いドリブルでDFを抜き去るタイプではなく、アタッキングサードでMFとのワンツーからサイドラインに飛び出すフリーランを得意とします。
アルガルベ杯では右サイドハーフの中島依美とのコンビネーションが冴え渡りました。中島の巧みなボールキープから右サイドに生まれたスペースに加戸が走り込み、60m近い距離を何度もオーバーラップする驚異的な運動量でペナルティエリア内に侵入しました。フィニッシュに絡むクロスボールの精度が向上すればサイドアタッカーとして危険な存在になると思います。
総括
アルガルベ杯では近賀ゆかりのバックアッパーとして大きな可能性を見い出しました。左右のサイドバック、センターバックをこなすユーティリティプレーヤーとして期待します。ディフェンス面では鮫島を凌ぐ安定感を持つと評価されました。国際経験を積み、右サイドバックのレギュラーを奪回して欲しい逸材です。
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