日本代表の本田圭佑が移籍問題に苦しんでいる。「俺は今、谷底にいる・・・」この言葉が本人の口から漏れたのは2011年アジア杯を日本代表が制覇した直後のこと。香川真司は2010年7月にドイツ・ブンデスリーグのトップクラブ、ボルシア・ドルトムントに移籍を果たし、2シーズンで21ゴールを挙げる華々しい活躍を見せ、2012年6月にイングランド・プレミアリーグの名門マンチェスターユナイテッドへの完全移籍を決めた。
香川の躍進は本田の心に焦りをもたらしたことだろう。本田圭佑は2010年2月にロシア・プレミアリーグの強豪CSKAモスクワに移籍して以来、世界3大リーグへの移籍を目指してきた。しかし、何度もビッグクラブへの移籍が囁かれながらも実現することはなかった。CSKAモスクワとの契約は2013年12月まで残されており、来年末の契約が切れるまで移籍問題は凍結される可能性もあると報じられている。今回は本田圭佑がビッグクラブへ移籍する為の条件を検証してみたい。
高額の移籍金がネック
今年1月、イタリア・セリエAの名門ラツィオが本田獲得に乗り出したものの、合意寸前で破談となる悲劇があっった。問題だったのは1400万ユーロ(約14億円)といわれる高額の移籍金。CSKAが一括での支払いを要求したのに対し、分割での支払いを望んでいたラツィオと折り合わずに契約は破断となった。CSKAが設定する本田圭佑の移籍金は約15億円であり、この金額が本田の移籍にブレーキをかけている。
スピードに対する懸念
本田の欠点としてよく挙げられるのが足の遅さ。「体の強さと決定力はあるが、スピードに欠けるので使いにくい」という見方が欧州各クラブの本田に対する一致した見解。本田が希望するポジションはトップ下やフォワードなどの攻撃的なポジション。
レアル・マドリードやFCバルセロナなどの超一流クラブはボールポゼッションを優位に保てるので、堅守速攻という戦術の選択肢はない。しかし、世界トップ10に入るクラブでもない限り、カウンターという戦術は近代サッカーの常套手段の1つになっている。攻撃的なプレーヤーはDFの裏に抜け出すスピードを要求されており、この点が本田に欠けているという指摘がある。
本田は鈍足というイメージが定着しているが、実際は俊足というデータも公表されている。W杯南アフリカ大会で最速を記録したのは長友佑都の時速30.13km。同大会のパラグアイ戦で本田圭佑が計測したのは時速29.43kmであり、両チームを通じて最速であった。しかし、日本代表のザッケローニ監督は「本田にフォワードを任せるには少しスピード不足」というコメントを残している。
世界トップ10に入るビッグクラブからのオファーは厳しい
本田圭佑が次の移籍先に定めているのは世界トップ10に入るビッグクラブである。長期滞在の予定がなかったロシアで約3年間のプレーを余儀なくされたことから、本田が確実なステップアップとして位置づけているクラブはハードルが高いと予想される。候補として挙がっているのはイングランドのリヴァプールとアーセナル、イタリアのACミラン、スペインのFCバルセロナとレアル・マドリードだと言われている。これらの超一流クラブが大金を積んで本田獲得に動き出す可能性は低いという見方があり、仮にオファーが出されたとしても契約満了で移籍金がゼロとなる2013年12月以降になると言われている。
本田の移籍先に相応しいベストクラブはどこか?
本田圭佑があくまでもトップ下やフォワードの攻撃的なポジションに固執するならば、おのずと移籍先は限られたものになるだろう。香川真司が躍進を遂げたドルトムントは堅守速攻型のチームであり、前線はスピードのある選手で固められていた。このようなチームスタイルでは本田の居場所はないと思われる。
本田の長所は高いテクニックと強靭なフィジカルを生かしたキープ力。そして、左足から繰り出される創造的なパスと決定力の高いシュートだろう。彼の特徴を生かせるチームは、ボールポゼッション率の高いパスワークを主体としたレアル・マドリードのような王様型の超一流クラブだと思われる。
ビッグクラブへの近道はボランチへのコンバートか?
もう一つ本田の長所を挙げるなら、ユーティリティ性の高さ。本職をトップ下に置きながらも、名古屋グランパス時代やU-23五輪代表ではサイドハーフ、ボランチ、そしてサイドバックでのプレー経験を持つ。しかも、全てのポジションを高い次元でこなす能力があり、どのステージでも遜色ないクオリティを見せている。
本田が自身のポジションへのこだわりを捨てれば、ビッグクラブからのオファーも現実的なものになる。実際に多くのサッカージャーナリストの間では展開力と守備力に長ける本田をボランチに推す声が多く聞かれている。唯一の欠点とされるスピード不足を克服する近道はボランチへのコンバートかもしれない。
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