本田、長友を欠くなかで、どう試合を形作るのか?
2013年3月22日、カタールで日本VSカナダの国際親善試合が行われました。26日のヨルダン戦に勝てば5大会連続のW杯出場が決定するだけに、前哨戦として重要な位置づけとなる一戦。日本のシステムは4-2-3-1、DFは左から酒井高徳、伊野波、吉田、内田。MFはボランチに長谷部、遠藤、3枚の攻撃的MFは左に乾、中央に香川、右に岡崎。1トップは前田という布陣を敷きます。本田と長友の代役としてトップ下に香川、左サイドバックの酒井高徳が機能するか注目されました。
2-1で辛勝も香川と憲剛のWトップ下に可能性を見せる
カナダの強烈なプレッシングに手を焼いた日本。ボランチの長谷部と遠藤が徹底マークにあってボールの出所を封じ込まれます。前線でボールが収まらず、トップ下の香川は前を向いてプレーする機会を失いました。前半9分、GKボージャンが前に飛び出したところを岡崎が技ありループシュートで先制点を上げたものの、セカンドボールを拾えない日本の攻撃は連動性を失って怖さがありませんでした。
後半、トップ下に中村憲剛が入り前線の前田に代えてハーフナーマイクを投入するとボールポゼッションが格段に上昇します。中村がトップとボランチの間に入って繋ぎ役になることで、左サイドに回った香川がフリーでボールを持つ機会を得られました。中央の中村を経由することでタメを作り出した日本。
中盤のパスワークに連動性が生まれ、2列目の岡崎、香川、サイドバックの酒井高徳がゴール前に侵入してチャンスを作ります。後半29分、酒井高徳が左サイドを深くえぐり、中央のマイクにクロスを合わせて2点目をゲット!セットプレーからカナダに1点を返されるも2-1で辛くも勝利を得ました。
日本代表メンバー採点(10点満点、平均は6点)
≪スターティングメンバー≫
FW
5.0 【前田遼一】
前線でボールが収まらず、香川との縦関係を上手く作り出せずに消化不良。
MF
6.0 【香川真司】
トップ下でボールに絡む機会が少なかった。後半、左サイドに回ると中村憲剛のサポートを得ることでペナルティエリアをドリブルで崩すプレーに迫力が見られた。今回のテストマッチでトップ下での起用は失格か?ボールの出し手ではなく受け手としてスペシャリティを発揮した。
6.5 【岡崎慎司】
Aマッチ32得点目となる1点目のループシュートは見事。ザックジャパンの攻撃の軸であることをあらためて証明した。右サイドから好クロスを連発してチャンスメーカーとしても機能した。
5.5 【乾貴士】
乾ゾーンと呼ばれる左サイドからドリブルで決定的なチャンスを何度も作る。動き自体はキレていたが、シュートは枠を外してフィニッシュの精度を欠いた。
5.5 【遠藤保仁】
クロスバー直撃のFKで存在感を見せた。本田不在時はトップ下での起用もあるか?
6.5 【長谷部誠】
アンカーとして守備に奔走する時間が長かった。最終ラインに食い込んでバイタルエリアをカバーした。効果的なミドルシュートでリズムを生み出した。
DF
7.0 【酒井高徳】
長友のバックアップとして十分な働きを見せた。前に出るスピードで左サイドを幾度も突破した。2点目をアシストしたクロスは見事。DFを単独で崩してあわやゴールという惜しいシュートも放った。守備でも的確なカバーリングを見せた。
6.0 【内田篤人】
代表復帰戦としては動きがキレていた。抜群のスピードで右サイドから効果的なオーバーラップを見せた。ビルドアップ、1対1のディフェンスも安定。
5.0 【伊野波雅彦】
スピードを生かした1対1の守備は無難だが、空中戦で競り負ける場面が見られた。ラインコントロールも完璧とはいえず、エドウィニボンスに裏を取られるシーンも目立った。
6.0 【吉田麻也】
高さのあるカナダFWに対して空中戦で対抗。的確なポジショニングで強さを発揮。
GK
6.0 【川島永嗣】
セットプレーの失点は責められない。後半33分のファインセーブでチームを救った。
≪サブメンバー≫
FW
6.5 【ハーフナー・マイク】
ロングボールに競り勝ち、セカンドボールから多くのチャンスを作り出した。2点目の左足シュートは冷静に決めた。ポストとしてボールキープに安定感があった。
MF
7.5 【中村憲剛】
後半からゲームの流れを一気に変えた。セントラルMFとして中央でタメを作り周囲の攻撃参加を引き出した。広い視野からワイドにパスを散らし、ボランチに近いポジションで香川との縦関係を築いてサポート役に徹した。
4.0 【大津祐樹】
右サイドでプレーするも見せ場を作れず。強引にシュートを打つ姿勢が欲しい。
DF
5.5 【駒野友一】
安定したポジショニングで無難に守る。攻撃参加に物足りない面が見られた。
6.0 【栗原勇蔵】
負傷退場した伊野波に代わって出場。1対1のマーク、セットプレーでの空中戦の対応は伊野波を上回る安定性を見せた。今野のバックアップに期待できる内容。
---- 【酒井宏樹】
酒井高徳の負傷で途中出場。右サイドバックとして終了間際に投入された。
総括 中央で時間を作り、サイドから前線に進出する
この試合、本田不在時に中盤をどう構成していくのかが1つのテーマでした。中央でタメを作り、サイドから2~3列目の選手がバイタルエリアに進入していくというザッケローニの目指す戦術が明確に見えました。
後半、左サイドに回った香川もポジションに拘らず、ペナルティエリア内で勝負を仕掛けることができました。中村憲剛と遠藤のW司令塔、そして中村憲剛と香川のWトップ下という縦関係を生み出せたことがヨルダン戦への大きな収穫です。
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