息子へ。被災地からのメール(2012年11月26日)

iRyota25

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◆ 11月26日・気仙沼の再会

40メートルを超える津波遡上高を記録した大船渡市三陸町綾里(おおふなとし・さんりくちょう・りょうり)の漁港や小学校、そして海水浴場を見て回った後、気仙沼に戻って一泊。夜やることがあったので以前お会いした人を訪ねて、気仙沼南町界隈を走った。

第一目標は以前来た時に「今日は作業着だから写真はパス」と言われて、「次回に」と約束していた復興横丁の小野寺さん。事務所にいるかどうか不安だったけど、電気が点いていて安心した。仮設事務所の引き戸を開いて「こんばんは!」と声をかけると、「お久しぶり!」と返事。「今日もいまいちなんだけど・・」と言いながらも写真撮影に応じてもらったよ。

お次は同じ横丁にある大漁丸さん。気仙沼のおいしい魚料理を中心に、ここでしか食べられないようなメニューが並ぶ名店。ただし今夜は忙しいのでご挨拶だけ。さいわい?お店は予約貸切だったので、のれんをくぐってご挨拶。

ご主人の笑顔の横から奥さんが飛び出して、「あら、残念ね。でも娘のやってるお店に行ってよ」と笑顔でご案内。ほぼ満員のお店の中で、カウンターに無理して席をひとつ作ってもらう。ご挨拶だけの予定が、「一杯だけ」になってしまった。

店の名は「Buggy」。由来を尋ねると娘さんが説明してくれた。「ワンピースのバギーなのよ。バギーって体がばらばらになっても元に戻るでしょ。私たち家族も津波の後、ばらばらになったけど、お互いに探し合って再会できて、そしてお店をやる時には家族みんなで同じ場所でやれることになった。だから、バギーなの」。

大漁丸さんを前回訪問した時、お母さんから聞いていた。津波でばらばらになった家族を捜し歩いていた時間の不安と、再開した時に感じた「奇跡みたいにうれしかった」という思い。

娘さんの説明を途中まで聞いたところで、お母さんが話してくれてたことを思い出して、体中に鳥肌が立ったよ。にんげんって“思い”で生きている。

お店で食したカツオの刺身(もちろんトロカツオ。切り方が絶妙でうまさ倍増なんだ)も最高だったけど、いちばんの美味は娘さんの淡々とした店名由来説明だった。 

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