現在、サッカー日本代表は2014年ブラジルワールドカップの出場に向けて、アジア最終予選でし烈な戦いを繰り広げています。9月11日、アジア最終予選の第4戦、日本VSイラクが埼玉スタジアムで行われました。素人サッカーファンである筆者の独断と偏見による対戦レポートをお届けします!
ジーコ率いるイラク代表、予想外のスタメンで日本の動揺を誘う
日本のシステムは4-2-3-1。出場停止の今野、内田に代わってセンターバックに伊野波、右サイドバックに駒野を起用したザッケローニ。MF香川真司は腰痛を理由にベンチ外となり、左MFには清武弘嗣が入ります。トップ下に本田、右MFに岡崎、ボランチは遠藤と長谷部、1トップに前田遼一という布陣。対するイラクの監督は2006年ドイツワールドカップで日本の指揮をとったジーコ氏。この日はエースのマフムードを始めとした主力を先発から外します。レギュラーメンバーを大幅に代えて情報の少ない選手を起用することで、日本のベンチワークを混乱させる意図がありました。
ゲーム序盤、日本はディフェンスラインを上げて中盤でコンパクトな陣形を保ち、巧みなパスワークでボールポゼッションをリードします。これに対してイラクは中央のMF本田、遠藤、長谷部をマンツーマンで抑えてパスの出所を消し去ります。中盤から最終ラインにかけて、人のマークとスペースのマークを徹底して付け入る隙を与えません。
イラクは中盤で激しいチェックを繰り返し、1対1ではファール覚悟の厳しいコンタクトプレーでボールを奪い、スピード溢れるカウンターでゴールを脅かします。先に決定機を得たのもイラク。前半4分、右CKからニアサイドに飛び込んだイブラハムがダイビングヘッド!川島のファインセーブに防がれますが、この後もセットプレーから決定機を何度も作り、序盤はイラクがペースを握ります。
一瞬の隙を見逃さず、サインプレーで日本が先制!
ゲームが動いたのは前半25分、右サイドで岡崎がカディムのマークを巧みに外してDFの裏に走ります。駒野のスローインを受けた岡崎は左足アウトサイドで中央に絶妙クロス!そこに走り込んだ前田遼一がヘッドで合わせてゴール!練習していたと言うサインプレーでしたたかに先取点を奪います。ゴール前に人数をかけて守備を固めるイラクに対し、サイドから揺さぶりをかける日本。清武と長友のコンビネーションで左サイドを崩し、中央でシュートを狙いますがイラクのDFにことごとく跳ね返されます。
決定的なチャンスは15分の清武、後半24分と35分の本田のヘッドのみ。いずれもサイドからの崩しで決定機を作りました。後半から勝負に出たイラクはエースFWのマフムードを投入。固い守備から一発のカウンターでゴールを狙いますが、決定機には至りません。試合終盤、日本は守備的MFの細貝、FWのハーフナーマイクを入れて逃げ切りを図り、試合はこのままタイムアップ。少ないチャンスをものにした日本が1-0の勝利で勝ち点を10に伸ばしました。
インパクトのあるプレーヤーを攻撃のオプションに!
日本は開始からイラクのプレッシャーをまともに受ける形となり、やってはいけないフィジカル戦に持ち込まれました。パスワークでプレッシャーをいなし、バイタルエリアからスピードを上げてワンツーやダイレクトプレーで崩していく本来の形が見られませんでした。前線から中盤にかけてあれだけスペースを消されては無理もないと言えますが、第3の選手がオフザボールの質に工夫を入れてコンビネーションを高めるべきでした。この試合は僅かに空いたサイドスペースの攻略が勝利の鍵を握っていました。ゲームの流れを変える為にベンチにインパクトのあるプレーヤーが欲しいところです。宮市亮や永井謙祐など、サイドアタックのスペシャリストを召集する必要があると思います。
勝ち点10でワールドカップ出場が有利になったが・・・
勝ち点10の日本は、勝ち点4のヨルダンを大きく突き放して首位を独走する展開。今後も無難な戦いを見せればワールドカップ出場も容易く勝ち取れる状況です。アジアの中で日本の実力が抜け出してきたこともあり、最近のワールドカップ予選は以前と比べて緊張感に欠ける印象です。最終予選をAグループとBグループに分けたことにより、強豪国との対戦が極端に減りました。宿敵である韓国や中東の強豪イランとの対戦が見られないことが非常に残念です。予選の戦いに苦しんでこそ、新たな戦術や選手の発見が生まれてチーム力がアップする訳で、安易に予選を突破してしまうことに疑念を覚えます。4.5枠というアジアの出場枠を減らして、より高いレベルで予選を行うべきだと思います。
日本代表時代とは別人のジーコ監督に脱帽
久しぶりに日本代表の前に顔を表したジーコですが、ドイツワールドカップで日本を指揮していた頃とは別人のような采配に驚きました。日本代表時代のジーコは、選手に大きな自由を与えて個人の発想を尊重したチーム作りを進めていました。ディフェンス面での約束事すらなく、自由に考えさせることでチーム力を伸ばすという信念がありました。しかし、イラク代表での采配はどうでしょう。中盤で徹底的に日本のエースをマークさせ、ディフェンスラインには細かい約束事を設けて規律を徹底させていました。
選手に自由を与えて個性を伸ばすというよりは、日本のよさを徹底的に消し去って優位にゲームを運ぼうとする巧みな戦術がありました。ジーコの采配によってドイツワールドカップで惨敗を喫した日本ですが、この日は皮肉にも進化したジーコの采配に苦しめられた格好になりました。個人的な感想ですが、歴代の日本代表でジーコは最弱の監督だと思います。当時のJFAはジーコを過大評価していたことがよく分かりました。
総括
大人の試合で手堅く勝ち点3を得た日本代表。難しい試合展開のなか、無理をせず確実に勝利に導いたザッケローニの采配は高く評価できます。攻撃面の物足りなさはこれからの戦いで改善する余地があるでしょう。今の力ではワールドカップで勝ち進むことは不可能です。世界レベルで戦うチームを作る為に、足りないプレーと足りない選手を加えて更なるレベルアップを期待します!
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